第37話 織田幕府に向けて
幸田広之は食料対策の中で肉をどうするか決めかねていた。この時代の常識として牛や馬の食肉化を普及させるつもりない。
長い間、牛や馬は耕作や運搬に必要不可欠な存在。そのうえ貴重であった。無論、高価なため、それをあえて食べる必要性は薄い。
鶏は農家などで飼って食べられることはある。しかし誰でも普通に食べるというもので無い。また鶏なら何でもいいか、といえば違う。
江戸時代に
なので、まずは鶏卵から入り、いずれは輸入した鶏を掛け合わせ、養鶏を盛んにしていきたい。闘鶏の人気により軍鶏は都市部で食べられる鶏として人気だったという。
ちなみに鶏も夏バテする。汗腺が無く汗で体温調節ができない。そのため夏場は卵の殻が薄くなり割れやすくなる。
夏場は呼吸を盛んに行う。結果、二酸化炭素を過剰に放出。血液中がアルカリ性に傾き、カルシウム濃度が下がる。そのため炭酸カルシウムなどで出来ている殻が薄くなってしまう。鶏卵販売における夏場の輸送体制をどうするかも問題であり、悩ましいところ。
日本が近代化するまで卵を含む鶏と魚で、動物性たんぱく質を補う他ない。唐揚、焼鳥、鶏すき、鶏鍋、鶏ちゃん、松坂かしわ焼肉、海南鶏飯等、いくらでも調理の仕方がある。
最初、違和感あってもうまさには勝てないだろ。織田幕府における江戸時代では魚問屋並に鶏問屋が儲かるかも知れない。
戦国時代や江戸時代、豚も農村部で食べられてたようだが間接的にしか伺い知れない。豚は様子を見る外ないだろう。
戦国武将といえば鷹狩りは権力者のレジャーとしてお馴染み。獲物は縁起物として高貴な人などへの贈答に使われていた。
野生の雉や鹿を食べたくても簡単に食べれるはずもない。獣肉が駄目なら鯨肉というのも発想としては悪くない。しかし本格的な捕鯨が確立されるのは江戸時代に入ってから。廃れた水軍の組織力や網の技術革新などあってこそ。
それまでは主に弱った迷い鯨などを捕獲してたのだろう。これを鯨の専門家でもない現代人が転生したからといって、簡単に捕鯨組織を構築し、莫大な利益をあげるのは難しいはず。
戦国時代転生転移小説ではうろ覚えの知識だろうと専門家に研究させれば大体なんとかなってしまう。それも恐ろしいくらいの短期間で。
主人公ではなく、作中の人物がヒントをもらい次から次に世界史レベルの発明・開発してもチートではない、などといった支離滅裂な理屈は無理ありすぎる。
捕鯨用の銛を使った突き取り法による組織的な捕鯨(鯨組)が確立されたのは江戸時代初期。紀伊国の熊野だったという。
さらに網取り式捕鯨が開発されたのは延宝年間(1677年)。4代将軍家綱の治世。現実には三河で1570年頃、突き取り式の船団捕鯨(鯨記)が行われてから、網取り式までおよそ100年も要した。
何事にも先人の絶え間ない営みや努力の積み重ねがあってこそ。魚や肉ときて酒の問題もある。半分は広之個人の嗜好によるものだが……。この時代、すでに南都
江戸時代になって伊丹で諸白の大量生産が行われ、摂津の諸白は江戸を席巻した(鴻池家が澄んだ清酒の元祖という主張を本作では採用していません)。
清酒は放っておいても需要が増えれば摂津や京で製造規模は勝手に巨大化するだろう。バランスをとる訳では無いが米のあまり採れない地域における酒として焼酎製造を推進させたい。
こちらも大坂で高級品として少量出回っている。原理は難しくない。要は熱した蒸気を上部の水で冷やし、取り出せばいい。これは、すでに陶器製の小さな器具を何度か作り、改良を重ねている。
続いて織田幕府の財政。豊かにするための方法で真っ先に思いつくのは南蛮貿易だが、それ以外にも方法はあるはずだ。今のところ2つ考えた。まず甜菜である。戦国時代転生転移小説では誰もが砂糖きびから砂糖を作り出す。
しかし砂糖は甜菜からも作れる。ならば甜菜(いわゆる砂糖大根はまだありません。中華王朝に文献に出てくる甜菜を念頭に入れてます)を入手し、主に東日本で作ればいい、九州や四国では茶畑でも作ったら良い。
甜菜からは砂糖だけでなく酒も作れる。ウォッカなどもそうだ。織田幕府成立後は北海道の開拓も考えている。そもそも岸和田城で歴史年表地図を見た織田信孝と丹羽長秀は北海道に目が釘付けになっていた。
長秀はこの地図さえあれば秀吉は朝鮮など攻めず北海道、樺太、沿海州、カムチャッカ(そのあたりを指して)へ浪人や農民や漁民送ればよかったのに、と呟いていた。
実は長秀が加賀へ本拠地を移したのは本人たっての希望である。北国での暮らし方を実践するためだ。やがて奥羽の諸大名たちを北方開拓へ駆り出すための準備といえる。
北海道で甜菜栽培(砂糖大根)が成功し、砂糖や酒を生産出来れば大きな利益となるはず。絞りカスは家畜の飼料にもなる。
甜菜(砂糖大根へ改良する前のビート)の入手は高山重友経由でイエズス会に依頼している。いつ手に入るかは分からない。マカオ経由で中国から、もしくは欧州ということになるのだろう。
さらに
師走の夜、鮭とばをかじりながら南都諸白で晩酌しつつ、いろいろと思いを馳せる広之であった。
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