2-4 困ったときはお互い様
「あ、うん……コハルで合ってる、よ……。」
「あ、ああ……。」
驚いてぎこちない反応になってしまったコハルに対し、水色髪の少女も気まずい反応を返し、二人とも一秒ほど沈黙した。
彼女は出席簿のデータから自分の名前を確認したらしい。コハルもちらりと相手のコンソールを見て、彼女の名前が「エリー」であることを知った。
「えっと……その、問題、わからなくて、困ってるん、だよね……。」
「う、うん……。」
「よければ、解き方、教えて、あげ、ようか……?」
「え、いいの!?うあぁ……ありがたいよぉ。」
コハルは少し感激して顔をほころばせる。エリーは謝意を向けられて恥ずかしそうにしながらも、肘掛の操作盤を操って座面の位置をコハルに近づけ、ノートを見せてくる。
二人の肩と肩が触れ合い、エリーは「あ、ごめん……。」と身を引く。
「ううん、良いよ全然。」
「じゃ、じゃあ……。」
二人は肩を並べ、コンソールをリンクさせてノートを共有した。
「ここが、こうで、こっちの問題が……。」などと話している間に、教師の話は先に進んでしまっている。しかしエリーは特に気にしている様子もない。どうやら彼女は、かなり数学が得意なようだ。後でいくらでも追いつけるのだろう。
顔を寄せ合っていると、二人の髪の甘い匂いが混ざり合う。空中のホログラムの上で二本の指が交差し、重なっては離れてを繰り返す。
ああ、すごい……なんか私、ちゃんと人と仲良くできてる気がする!説明もわかりやすいし、なんか楽しい……。
コハルはようやく、普段のペースを取り戻すことができた。次第に反応が大きくなってくるコハルに対し、相手の子は少し面食らっていたようだったが、向こうも向こうで段々慣れてきた。
「ありがとう、ほんとに!すっごくわかりやすかった!」
「ど、どういたしまして……。」
少女は顔を赤くして伏せる。
「別に、たいしたことじゃ、ない、から……困ったときは、お互い様、でしょ?」
「そうだね!友達はいつも助け合うものだもんね!」
「え、友だ、ち……?」
「あ、ごめん。まだ友達は早かった?」
コハルは距離の詰め方を間違えたかと慌てる。
「う、ううん……コハルちゃんが、それでいいなら……。」
エリーは太腿の上に置いた手をそわそわと動かしながら言った。
「じゃあ、エリーちゃんが私の友達第一号だね!よろしく!」
「よ、よろしく……。」
コハルの純度の高い笑顔に対し、エリーもようやく口元を緩めたのが見て取れた。
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