2-2 私らしくいるために

 コハルは物心ついた時からずっと、少しばかり自分に自信が無かった。


 決して何か特別なコンプレックスがあるというのではない。ただなんとなく、特徴に欠けるというか、目立つ欠点もなければ、何か一つ周りに自慢できるような特技や才能があるわけでもない。

 こう言うとぜいたくな悩みのようだが、本人は真剣だ。最近もよく、一人でいるときは虚空に向かって繰り返してしまう。


「私って、ほんとにこのままでいいのかなぁ。」


「なんかパッとしないって言うか……。」


「こんな私でも、みんな仲良くしてくれるかなぁ。」


 コハルは努力家ではあるが、どこか空回りする節があった。美術も作詞もスポーツも色々試してみたが、全て月並みと言う感じで、あと一歩の上達ができない。どの科目の教師AIにあたっても、手ごたえを次第に感じ始めた頃に、突然成績判定が頭打ちになる。単に成績基準との相性ではなく、コハル自身の問題なのだ。

 その大きな原因として、自分のやりたいことがよくわからないと言う気持ちもあるのだろうか。そう、何より彼女は、自分の気持ちを突き詰めるのが苦手だった。


 だからスイレンに対する気持ちも、自分でよくわからない。そして、そんな中途半端な自分が本当に彼女のパートナーになっていいのか、と言う迷いもある。


 でも同時に、あこがれもあった。スイレンのような輝きを持ったドールたち。コハルはその輝きに手を伸ばしたい、と思う。そしてコハル自身も、あんな風に輝いてみたい――


 だから、頑張ってみよう。そう決意した。


 この学園で。


 不器用でもいいから、少しずつ。


 私が、私らしさを手に入れるために。

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