第7話 確信
それからはなぜか二人の間では人魚の話はタブーとなった。
月日は早く十年が過ぎ、涼は火災現場で老人を助ける為に火に巻き込まれ焼死した。三十九歳という若さであった。
舞は変わり果てた涼を見て一緒に逝きたいと叫び、涙が止まらない。月日がいくら経とうが悲しみは尽きない。
いつまでも、いつでも思い出すと涙が零れる。
それからも悲しみに暮れ、七年が過ぎた。
舞が街を歩いているとひと際目立つ赤色に光っている二歳ほどの子供が歩いていた。周りの人は気付いていない様子だ。舞は不思議と涼がいると感じる。
近寄り常に見つめ、成長するのを待った。
少年は大学生となりとても軽そうに成長し、少年が公園で休んでいた所に接触を画策する。
つい見惚れてしまい、少年は「お姉さん何見てるの?」と笑った。
「かっこいいなと思って…」接触を図ると赤い光は消えていった。
やはりこの少年は涼だと確信する。「お姉さんも可愛いよ。名前教えてよ」当たり前だが生まれ変わると性格も変わるようでこの少年は涼より積極的に思える。
「清水舞。君は?」
「三井高。お姉さんいくつ?って失礼か」とまたも笑う。三井は良く笑い、笑顔が似合う。「二十歳…」照れながら顔を隠す。見た目だけ二十歳で止まっている。三井は舞の顔を覗き込んだ。
「明日も逢えるかな。俺また同じ時間にここにいるからさ。舞さんとならまた逢いたいな。またね」と言って三井は手を振って帰宅していった。
胸の高鳴りが治まらない。また涼に逢えた。明日も逢える。
翌日もその翌日も三井と公園で話した。
毎日三井に惹かれてゆく。
いつも通りに夕方から夜に差し掛かる頃「あ、もうそろそろ帰る時間だね」舞が立ち上がると「もう少しだけ一緒にいたい…」と手を引かれベンチに座り直した。
三井は手を離さない。「舞ちゃんの家の近くまで一緒に行ってもいい?」控えめに聞いてくる。実は涼同様に奥手なのかもしれない。
「…うん…でも家にはあげないよ」家には涼の仏壇がある。無理に笑うと「俺、そんな事しないから。こう見えて照れ屋だし」と三井は恥ずかしそうに頭を掻き笑った。
手を繋ぎ、歩きながら色々な話をした。一人暮らしで彼女がいないこと、大学を一年留年してしまったこと、好きな人は出来たことがないこと。
「でも、舞ちゃんと話してると嬉しくて楽しいんだ。その、一目惚れだから…」玄関の前でそう打ち明けてくれた。
舞は返事はせずに笑顔で返し玄関を閉める。
涼の仏壇の前に座り「涼、これでいいんだよね?三井君は涼の生まれ変わりだよね?」と聞いた。勿論返事はない。だが不思議とそれでいい、と涼から背中を押された気持ちになった。
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