第5話 結婚生活と苦悩
結婚し、同居を始め三年が過ぎ二人は更に気持ちが重なり合っていると感じる。
「涼、お弁当」と毎日仕事に行く前の涼に手渡し、キスをし抱擁をする。
涼は図書館を辞め、実試験を受け消防士になり舞は専業主婦となった。
常に涼が帰って来るのが楽しみで仕方がない。
しかし消防士は二十四時間勤務で待てど暮らせど時間が進まない。
そして心配な事もある。実の所、病気が治ってから生理が来ていない。このままでは涼との子供が
出来ないだろう。どうしても二人の子供が欲しい。
涼が帰って来るなり舞は相談した。
「あのね、心臓の関係かもしれないけど、治ってから生理がきてないの」
「じゃあ明日一緒に病院で調べてもらおう」
「ちょっと怖いけど…」という舞を涼は優しく抱きしめた。明日は休みだ。
涼は疲れているのだろう。すぐさま風呂に入り早々に寝てしまった。
舞はもし何か涼に問題があるのならば、全てを受け入れるつもりでいる。
しかし、自分に責任があるのならばどうすればいいのだろう。
夜中の三時近くになり、舞はようやく眠りにつくことができた。
「舞、舞。朝だから用意して」と言う声で起こされる。
時計を見るともう八時が過ぎており布団から飛び降り、準備をして共に産婦人科に向かう。
堅苦しい女医が静かに「ショックを受けないで聞いてくださいね。奥様の子宮は全く機能しておらず不妊状態です。」立ち眩みがする。涼は倒れそうな舞をそっと支えた。
「治るんですか?」震える声で呟く。
「今の医学では無理ですね。お役に立てずにすみません」と女医は帰るように催促をした。
待合室には妊婦が二人待っている。今は正直羨ましいし、逆に憎くもある。
帰宅し、泣き続ける舞の背中を涼は摩った。
「ごめんなさい。こんな身体で。別れてもいいよ…」
「いいんだよ。俺は舞の事を愛してるし、離れたくない」
涼は寝込んでいる舞の身体を後ろから強く抱きしめる。
この人しかいないと思い、振り向き抱きしめ返えす。そのまま二人は深く愛し合った。
一体どうすればいいのだろうか。涼の事を思うならば別れるべきか、このまま二人だけで生きていく方がいいのか。朝になり、静かに涼の弁当を作り手渡した。
「いつもありがとう。舞、考えすぎないようにね」と抱擁をし、髪を撫でて出て行った。
舞はその晩、涼への罪悪感から手首を鋭い剃刀で深く切った。
しばし流れている血液を呆気として見ていると、血が即座に止まり手首の傷がスーッと消えていった。
これは一体何なんだろう?何が起きているのかもわからずに血液を掃除し、風呂に浸かる。風呂から上がり、自身の手首を眺めたがやはり傷はない。
散々本棚から調べたが、そんなものどこにも記載されていない。
代わりに「人魚の肉」というものが見つかったが、このような都市伝説などまさかと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます