本編

逆さ馬

 一つ目は、この辺りに封じられていた【さか】である。由来はこうだ。


 かつて、郷土玩具の赤べこの元となった〝赤い牛〟と病気平癒の神の立場を競って敗れた、馬の姿をした神獣がいた。

 頭のない馬の姿である彼は、豪雪地帯の会津で人々が家に籠る冬になると、人目が少なくなるのをいいことに未だ神を気取って一帯を闊歩する。ただし、病気平癒の力はない。

 彼が通った雪の上には、丸をカッコで挟んだような奇妙な足跡が残るという。頭はないが目は見えており、人に目撃されると口もないのに「べこけた?」と話し掛けてくる。

 これに「うまった」と答えると満足して消えるが、そう言われない限りはどこまでも追ってくるそうだ。

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