第14章 俺、のんびりする
第71話 俺、褒められる
「マーナ・ガルム?」
「ああ、白狼の進化系モンスターの名だよ。岡本くん、君の功績だ。もしかしたら……大臣賞とかもらえちゃうレベルの大活躍だよもう!」
「そう……ですか?」
「そりゃそうだよ。マーナ・ガルムは世界でも始めて発見された種類だからね。海外からも注目されているみたいだよ」
「そうですね……結構知的で厄介なモンスターでしたし」
「あぁ、それにあの能力もとんでもなかったしね」
「まぁでもしっかりここにもどってこれてよかったです。相田さん、ありがとうございます」
「いやいや、全て君の功績だよ!」
相田さんはクラッカーでも鳴らしそうな勢いで俺の肩をバシバシと叩いた。
今日、俺は日本冒険者協会から呼び出されて足を運んだが、なんだか職員さんたちはみんな笑顔で変な雰囲気だ。
マーナ・ガルムと名付けられたモンスターは日本固有の「白狼」が稀に進化するモンスターでその能力は「記憶を見る」「その記憶の生き物に万物を変身させる」だと俺の動画から判明したらしい。
とはいえ、動画だけでは未知数なため不確定情報がかなり多いとのことだ。
「ははは、お役に立てて何よりです」
「ま、今日の本題はこれだよ!」
相田さんはまるで賞状でも渡すように俺に一枚の通知書をよこした。
「おめでとう!」
*** 通知書 ***
貴殿の冒険者階級が昇級したことをここに通知します。この通知書は証明書としても効力を持ちます。
氏名:岡本英介
冒険者階級:L50
以上
*** ***
「L50?!」
「そう、マーナ・ガルムの性質だけでなく本来L10の白狼のダンジョンにテイムモンスターもなしで入れる実力を考慮されたようだよ」
なるほど……。
昇格の基準に関して俺はよくわからないが……全滅したLDSがL 45だったことも参考にされたのだろうか?
「そうですか……」
「そもそも、ソロでダンジョンに入る人は世界でも稀でね。ま、細かいことは気にしなくていいさ」
細かいことを気にするももう難しいダンジョンに挑戦する気持ちはない。あれ……これ盛大なフラグなんじゃ……?
「ありがとうございます」
「僕も、なんだかスッキリしたよ。アイツもきっと喜んでるんじゃないかな。あぁ、おじさんになってから涙腺が」
ハンケチで涙を拭いながら相田さんが笑うもんだから俺までもらい泣きしそうになった。親父は本当にいろんな人に愛されてたんだなぁ。なんか、超えたようで超えられないようで……ったく、冒険者になった俺を見て欲しかったなぁ。
「そうそう、岡本くんにはいらない話かもしれないけどね。L級冒険者でこちらに動画や情報の提供をしてくれた場合、微力ながらお金が出ることになってね」
相田さんは何やら申請書を取り出して俺にペンを差し出した。
「ここに振り込み口座を書いてね。これからL級に上がる子たちは必須になるんだけど、岡本くんはまだだったからねぇ。お国がこんなに早く動くなんてほんと、岡本くんはすごいよ。やや、ほんとに」
「そんなに褒められると恥ずかしいっすよ」
「日本一の男だからねぇ。いやぁ、なんか鼻が高いなぁ」
「はい。じゃあそろそろ」
「また、L級に挑戦するなら是非!」
「はい、失礼します」
相田さんにお礼を言って、俺は日本冒険者協会をあとにした。まさか、国まで出てくるなんて思わなかったけど……ちょっと誇らしい気持ちだ。
なぜなら、文夏にも「海外派遣隊も全滅したダンジョンをソロ攻略した男!」なんて題名で大々的に載せられたり、テレビでも取り上げられたり……インフルエンサーとしてもこの件で俺は結構美味い思いをしている。
「さて、帰ってのんびりしますか!」
ちょっとだけ誇らしい気持ちで車に乗り込んだ。
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