第7話 俺、ギャルと約束する
「よーし、こんな感じで証拠の動画は編集できたねっと。じゃあ、これをコピーして……はい! こっちは岡本くんのね!」
もやし焼きうどんをおかわりした後、
動画編集の様子を見るにこれは凝り出したらキリがない……そんな感じがする。じっくり1人の時間を楽しむキャンパーの俺には向いていそうだと思った。
「俺のってこれをどうすんだ?」
「まずは、こっちの短い動画の方はネットに晒す!」
「え? それやばくね?」
「あたしね〜、週刊誌の記者してる友達がいてさ〜。こーゆー刺激的な動画求められてるんだよねえ」
「どんな人脈だよ!」
「その子とはクラブで出会った」
「週刊誌の記者ってクラブにいんの?」
「うん、芸能人とかインフルエンサーとか追っかけてると大体クラブに行き着くらしいよ。美人記者だし今度あわせたげよっか〜」
音奏はニヤニヤと笑うと俺の肩をつんつんと突いた。この野郎、俺がモテないからって馬鹿にしやがったな……。
「晒したところでどうするんだ?」
「晒されたら勝手に特定されて勝手に人生詰む。まぁ、それはこっちの仕事で……岡本くんはこの証拠を持って弁護士事務所に行ってみて!」
彼女が財布から取り出した名刺には「美浜弁護士事務所」と書かれている。
「おい、まさか……」
「クラブで知り合った」
——クラブってどんなとこなの?!
俺は心の中で盛大にツッコミを入れながら受け取った名刺をまじまじと見る。確かに、警察に行くにしても労基署に行くにしても素人が窓口で申請しても面倒くさがられて対応してくれないとよく聞く。
だが、弁護士同伴でしっかり書類を準備していくと被害届なんかもトントン進むとか……。
「今までのパワハラの慰謝料に、もらってない残業代の申請、それから謝罪だな。これであのクソ親父は社会的にも金銭的にもプライド的にもバッキバキにできそうだな。無論、受付の子たちもただではすまないだろう。こういう時の可愛い子はネットでおもちゃにされて一生デジタルタトゥーが残ることになる」
会社もクビになって、最悪会社から損害賠償訴訟をされた上に顔と名前がネット上にばら撒かれたら2度とまともな職にはつけないだろう。
武藤に関しては俺は全く折れる気はないので刑事訴訟でもなんでもやってやる。
「おっ、いい顔になってきたじゃーん」
彼女がシバを膝の上で眠らせながらニヤニヤと俺をみている。なんか、嫌な予感。
「で、弁護士の前料金費用は私が出してあげるからさ。その代わりに私のお願い聞いてよ」
「え……何?」
「岡本くんさ、ダンジョン配信者……やらない? 本格的に。インフルエンサーになろうよ。私と一緒に」
ダンジョン配信者か。
ダンジョンでのモンスター攻略なんかをエンタメ風に配信したり動画投稿をしたりして広告収入を得る人たちのことだ。
インフルエンサーというのはその人気を利用して商人の紹介なんかを企業から引き受けてCMし生計を建てている人を指す。
「俺が?」
「うん。だって、トレンド1位だよ? これってさ、実質日本1位ってこと。それに、なによりも……その、ダンジョン配信者って最高に楽しいの! 私ね、命の恩人には楽しく生きてほしいからさっ」
えへへ、とふにゃりと笑い音奏は俺をじっと見つめる。暖かくて優しい眼差しに俺はぐっと心を引かれた。
「人生一度……か」
「そうだよ。ね、私がついてるからやろ?」
「とりあえず……音奏に借金返すまでは頑張ってみようかな」
「よっしゃ! じゃあ、きまりね! 明日は私は出版社で岡本くんは弁護士事務所とできれば病院。診断書もらって休んでいる間に色々準備しよ! あ、シャワー借りるね〜」
そっか。
病院にいって診断書をもらうって手もあるよな。会社に行くとしんどいのも事実だし。
よし。ってあれ……なんか今さらっとすごいこと言われたような?
「岡本くん、タオルとこのスウェット借りるね〜」
「は、は、はぁ?!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます