第1章 俺、ギャルを助けてトレンド入りする
第1話 俺、ギャルと友達になる
「え〜、あれSS級のモンスターだったの?!」
彼女は先ほど俺が助けたダンジョン系配信者だ。
ダンジョン系配信者と言うのは、ネット上でダンジョン攻略の生配信をする人たちのことだ。主に若い世代が見るもんだし俺はまったく興味がないので知らなかったが、彼女もそこそこ人気の配信者らしい。
「そう、繁殖期のケンタウロスは階級がグッとあがるんだよ。メスの方は味もぐっと美味くなる」
「へぇ〜、お兄さん物知りなんだね」
冒険者だった親父の受け売りだが、ダンジョン攻略を配信するんならそのくらいは知っておくべきだろう。死ぬところだったんだぞ。
「ははは、サイコロステーキ食べる?」
「食べる〜! お兄さんは何者なの? めちゃ強かったじゃん」
彼女は目をキラキラさせて俺からサイコロステーキを受け取ると白飯の上に豪快に乗っける。このギャル、食いっぷりがいいな。
「あはは〜、俺はしがないキャンパーだよ」
「キャンパー?」
サイコロステーキを頬張りながら首を傾げる伊波音奏はなんというか、さすがは配信者と言うべきか。可愛い。
「そう、見ての通りダンジョンの中でキャンプをするからキャンパー。で、そこで蹄を齧ってるのが俺の相棒のシバ。見た目は柴犬、中身は犬神だ。俺がテイムしてる」
シバが彼女の方を一瞬見るとぱちっと瞬きをした。
これをやると大抵の女子供はメロメロになる。シバはそれを知っているのだ。
「可愛い〜! いいなぁ、私もテイムしたーい」
女子ってのはどうしてこう建設的な会話ができないんだ。はぁ……、でも底抜けに明るい彼女を見ていると会社での嫌な記憶を忘れられるかも。
「ははは、このダンジョンにいるってことは君も強いんだろう? テイムできるモンスターがいるところにいってみるとか?」
彼女はごっくんと飲み込んでから俺に
「
絶対に親もギャルだな。
と思いつつもキラキラした名前でも遜色のない美人だ。そのうえギャル。なんというか、天は二物を与えないなんていうが嘘だな。
目の前にいるこの子は3物は持っている。
可愛い顔、可愛い名前、大きな胸……。
「ははは、食い終わったら出口まで送るよ」
「え〜、私も泊まりたいっ!」
「だーめ。俺はソロキャンプが好きなんだ。それに、君は未成年だろ。俺、会社首になりたくないんだよ」
鉄板でとろとろにしたチーズを持ってきていた焼きそばにトッピングする。スーパーで150円で買ったこの焼きそばがここでは立派な締めになるのである。
当たり前のように半分を音奏に渡し、チーズの上だけをシバにも分けた。
「へぇ〜、こんだけ強くて冒険者や配信者としてもやっていけるのに会社で働くってことはすごく楽しいの? その会社」
「いいや、嫌味な上司に馬鹿にされ、俺をキモがる女たちにヒソヒソされて客先に頭下げに行く毎日だよ」
音奏はずるずるもちもちとチーズ焼きそばを食いながら不思議そうな顔をした。
そうだよな、不思議だよな。
でもさ、大人ってこういうもんなんだよ。嫌なことして金もらって、雀の涙ほどの自由なお金でストレス発散。正社員だからまぁ倒産しない限りは安定してる。
そりゃ確かに親父みたいに冒険者をしたり、音奏みたいに配信者すれば死ぬほど儲かるかもしれないけど……リスクがデカすぎるし。
「そっか、お兄さんはこの辺の人?」
「あ〜、まぁ都内だよ。足立区」
「え、まじ? 私も足立区。もうウチらマブじゃん」
なんか気まずい。スーパーとかで会いたくない。なんか、やっぱりコミュ力の高い人ってすごいな。こうやって友達を増やしていくんだろうな。
「ははは、偶然だね」
「ね? じゃー、私たち友達ね」
「いやいや、流石に未成年とは……」
「あとね、私未成年じゃないよ? 20歳。だからお泊まりしてもいいんだけど……だめ?」
この手の女の子の自称年齢は信じてはいけない。
これは全国の男子共通の知識だ。
「だめ。さ、出口まで送るから家までちゃんと帰るように」
「はーい、じゃあさ。お兄さん、お友達になろうよ。私も1人で配信するの寂しいし、お兄さんがキャンプしに行くとき呼んで? いいでしょ?」
というが早いか、音奏はスマホを取り出して「早く」と促してくる。まぁ、交換だけしておくか、誘うかどうかは別として……。
「はいはい」
「よっしゃ! って……大変! お兄さん、スマホ! みて!」
俺はそう言われてスマホのスリープを切る。
「何?」
音奏は目をまんまるにしてスマホをタップしまくる。
「お兄さん、岡本英介って名前だよね?」
「そうだけど……」
「お兄さん、ツエッターってやってる?」
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