ダンジョンキャンパーの俺、ギャル配信者を助けたらバズった上に毎日ギャルが飯を食いにくる

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プロローグ 



 限界社畜の俺、岡本英介おかもとえいすけにとって唯一の癒しはこの湿っぽくてスリルに溢れるダンジョンの中でするだ。


 ダンジョンが世界中に存在する。

 俺の住む東京都足立区にもだ。ダンジョンにはそれぞれ難易度があってF〜SSSクラスまで。政府は一般の冒険者の立ち入りについて厳しく制限をしていて、冒険者ランクに応じたダンジョンしか入ることは許されない。

 

 普段は社畜、休日はダンジョンキャンパーの俺はSSSクラス。学生時代は友達がいなかったからな、冒険者だった親父と一緒にいろんなダンジョンに潜った結果。大抵のモンスターは倒せるし、なんなら俺にびびって寄ってこない。


——大体のモンスターは狩ってキャンプ飯にしちまうからな!



「あ〜、クソ上司にお花畑女ども、うぜ〜んだよ」


 プシュとビールをあけて、炭火焼きコカトリスLv500の匂いだけでゴクゴクと流し込む。

 親父みたいに冒険者になって生計を立てて死ぬのも馬鹿らしいから、一般社畜に就職したが……


「な〜んでゴミ上司に偉そうにされなきゃなんねぇんだっての」


 コカトリスの焼き鳥を熱々のまま齧って、ビールで流し込む。


「ぷはぁっ……、まぁでも生きていくための給料をもらうために我慢……最終的には俺の方が奴らより強いんだし。最悪、俺が殺せば死ぬんだし」


 焼き鳥だけじゃなくてちょっと別のつまみも欲しくなってきたな。


 このS級ダンジョンにはコカトリスとあと何がいたっけな。あぁ……最高のツマミがいるじゃんか!


 俺は相棒の弓を手に取ると口笛を吹いた。

 すると、テントの中で眠っていたであろう、可愛いもふもふのトースト色が顔を出す。ピンと立った三角耳につぶらな黒い瞳。くるっと巻いたしっぽはふさふさでちょっと表情は生意気だ。


「お、焼けたか?」


「追加のつまみを狩りに行くぞ、


「ったく……」


 こいつはシバ。見た目はトースト色の柴犬だが、親父が俺に残した犬神いぬがみというSSS級ランクの使い魔である。

 くあぁぁとあくびをかますと、シバはクンクンと鼻を鳴らして「こっちだな、ビーフジャーキーは」は唸った。

 俺はシバの丸くて可愛いケツを眺めながら彼のあとを追った。


「お前も好きだろ。ケンタウロスのビーフジャーキー」


「俺は蹄の方が好き」


「犬だな」


「犬だからな、基本は」


 なんて会話しながらダンジョンを歩いていく。S級ダンジョンのモンスターであれば俺とシバに自ら近づいてくることはない。

 だから、あんまりスリルはないけど、休日キャンプにはちょうどいいか。もうたんまり食料は取ったし、無駄な殺生してもしょうがないし。




「きゃーっ!!!」



 俺たちが向かう先から女の悲鳴が響いてきた。

 他の冒険者か? 

 直後にケンタウロスと思われる咆哮。それも複数体。


「シバ!」


「おうよっ」


 シバはくるんと回ると俺が乗っても問題ないくらいの大きさに変化する。俺は彼にまたがってものすごいスピードで悲鳴の方へと向かった。


「ケンタウロスって基本単独行動だよな?」


 シバはちょっと馬鹿にしたように


「繁殖期はそうじゃない。より凶暴になるし、よりうまいぞ」


 じゅるり……とシバが余裕綽々で足を止めて舌なめずりをした。可愛い柴犬のフォルムには似合わない悪い顔である。


 派手な金髪に可愛らしい衣装、手にはキラキラの魔法スティックをもった女の子が足を怪我して倒れ込んでいた。そこに斧を振り上げるケンタウロス。真っ赤に膨れ上がった体、ツノの先がピンク色なところを見るとメスの個体だ。


「い、いや〜〜〜!!!」


 俺は弓に特注の矢をつがえて引き絞った。そのままケンタウロスが斧を振り下ろす直前に矢を放つ。


「ぐっっ?!」


 ケンタウロスは一瞬にして爆発矢の餌食となった。首から上が吹っ飛び、悲鳴も上げられないままドテンと倒れ込んだ。


「英介! 後ろだ!」


 シバの声に合わせて俺は振り返ってもう一発、こちらの至近距離に近づていたオスの個体に高速で矢を放った。オスのツノは高く売れるのでこちらは爆発矢ではなく毒矢を。オスは食ってもしょうがないしな。


「さて、さばくか」


「俺の蹄もな全部保管しろよ」


「はいはい」


 そういうとシバは元の小さい柴犬の姿に戻って少し距離を取ると丸くなった。ほろよいにしては効率良く倒せたな。うまいジャーキーも食えそうだし。



「あ、あの……ありがとう」


「あぁ、気にしないでください。俺は通りすがりで……えっと怪我は大丈夫?」


「はい、なんとか。あの、お名前を聞いても?」


「すんません。岡本英介って言います」


 ギャルっぽいメイクに可愛らしいちょっと露出度の高い衣装。派手な金髪をポニーテールにしている女の子は俺に向かってにっこりと微笑んだ。

 こんな笑顔を向けられるのは久しぶりだな。いや、生まれてこの方女子からにっこりされたことなんかなかったんだがな。


「あっ、やばい。カメラ。あっよかった無事だ」


 女の子は端っこの方に転がっていたビデオカメラを抱き上げるとにっこりと笑った。


「私、伊波音奏いなみめろでぃーっていいます。ダンジョン配信者をしてます」


 


 

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