散
六野みさお
第1話 散
真夏の日光の射線を
折り畳みの小傘で遮っても
傘は強風で飛んでいってしまう
インスタントな僕を笑いながら
ひとりになってしまうんだ
仲間さえも失ってしまうんだ
いつか見上げた空さえも
もう青いと感じられないんだ
魔法をかけられてしまったんだ
無自覚な魔法使いの大人たちに
気づかないうちにやられたんだ
僕らが脅威にならないように
思わず化粧してしまうんだ
紫外線を受けるのが怖いから
自分の可視光線が
狭まっているとは知らずにさ
救おうとしても救えないんだ
いつのまにか遠くに行ってしまうんだ
置いていくだけの言葉では
君に届くわけもないのさ
きっと僕らは通行人だ
たまたま同じ列車に乗り合わせただけだ
最初から出会ってすらいなかったんだ
近いようで隔たっているんだ
飛び跳ねている君を見ても
それが誰かに重なってしまうんだ
素直になることはもうできないんだ
言いたかったことは言い切れないのに
大人になってしまうんだ
君の言葉も忘れてしまうんだ
あのとき誓い合った仲間は
もう僕しか残っていないんだ
夏の草原を歩いていくんだ
僕が答えを見つけられるまで
君がくれた傘を
飛ばないように握りしめて
散 六野みさお @rikunomisao
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