本題へ

「さてさて十分過ぎるほどに証拠を見せたので流石に信じたよね?もう色々と面倒臭くなってきたから本題に入ろう。ボクは海斗かいとを゙奴らの手から回収したいんだよ」


「何を言っているんだ海斗かいとは死んだ。俺はこの目で見たんだぞ。死体は間違いなく海斗かいとだった」


 兄の名に反応して思わず口を挟む。脳裏のうりにはあまり思い出したく無い光景がよみがえる。雨の中、親しい人の死体。作り物かと思ってしまう程に頭部が綺麗に無くなっている。もしかしたら別人かもしれない。しかし、間違いなくその体は…


「だけど頭部は見つかっていないよね」


「まさか…」


「そう、海斗かいとは頭部だけの状態で生かされている。奴等は情報を優先した。奴等にとっては興味の方が勝ったんだろう。何せ今までにも人間の脳をいくつも集めている」


「そいつ等は何が目的何だ。一体何の目的でこんな辺鄙へんぴな町でこんな事をしているんだ」


「一番の目的は資源の回収。奴等にとっては地球の鉱物が貴重なのさ。レアメタルとなる鉱物の価値観は人間と大分違うみたいだけどね。

 これだけなら良かったんだけど。奴等、地球の生命体に興味を持ち始めてね。特に知的生命体である人間の思想に興味を持っちゃたんだ」


「待て、それで人間の頭部だけを回収しているって言うのか?何だよそれ?一周回って馬鹿じゃないか?」


「ははは、そうそう。一番重要な器官を脳だと見抜いてそれだけを生かす科学技術には感服かんぷくするけど。それ以外は無駄だと即断するあたり、科学者としては三流以下だよね。

 まぁ、同じ地球人同士でも分かりあえないんだ。宇宙レベルになると文化や思想が全然違うのかもね。ははは」


 全然、笑えないのだが。ともかく、信じたくは無いが、今はこいつの話を信じるしか無い。少なくとも人外の化物がいる事は本当なのだから。

 しかし、今の話を聞いて新たにいくつか疑問が出てきた。コイツの正体に触れる質問はコイツの機嫌を損ねる可能性があるからできれば避けた方が良いかもしれないが…


「え〜と、ちょっと質問なんですが…」


「なんだい?そんなに恐る恐る手を上げて」


「お前の目的は分かったんだけど、そもそも何でお前は海斗かいとを助けたいんだ?お前は海斗かいとの助手って言っているが何でそんな事をしていたんだ?」


「ちょっとじゃあ無くない!?でも仕方ないか。確かにその辺をしっかりと筋道を通して説明する必要があったの確かだ。ボクとした事が焦り過ぎていた。

 その前にまず、お前呼びはやめてくれないか!星野ほしの美影みかげと名乗ったじゃあないか!美影みかげと呼ぶように!!いいね弟君」


 何なんだコイツは何で化物が人間見ないな名前をそこまでこだわるんだよ。しかし、これは明らかな地雷原だな。こんなどうでもいい事で死にたくないし、ここは要求を飲もう。しかし、星野ほしのどこかで聞き覚えがあるんだよな…


「すみませんでした。分かりました美影みかげさん」


「うむ、よろしい」


 うわぁ~、凄く嬉しそう何だけど。思わず見惚みとれてしまうほどに可愛いなぁ。って落ち着け俺。見た目がどんなにタイプの美少女だとしてもコイツの正体はドロドロの粘液の化物だぞ。


「何か凄い顔しているけど、どうしたの弟君?」


「はっ!いや何でもない。いや、俺も名前で呼んでほしいなーって」


「あーそういう事ね。え〜と確か寛太かんただっけ?」


「えっ!何で俺の名前を?まだ言って無かったと思うんだけど?」


「君の事は海斗かいとから聞いているよ。優秀な弟だと。もし自分が失敗したら頼むとも言われていた。だけどまだ幼いから真相を話すのは君が中学に上がる頃まで待ってくれと言われてしまってね。今までは影で見守る事しか出来なかったのさ」


 あぁ…なるほど実にあの海斗馬鹿が考えそうな事だ。優秀過ぎるせいで周りが見れてない。こっちはお前と違って凡人なんだぞ。お前の基準ではかるなよ。まだこの化物を完全に信用するには至らないが、今ので少しだけ信用に足るとは思えた。


「協力はする。だからこそ聞かせて欲しい。宇宙人である美影みかげさんがどうして海斗かいとと行動していたのかを?」


「あ〜ちょっと勘違いがあるなー。ボクはね宇宙人じゃあないんだ」


「はっ!?だけど…」


 人間では無いだろう。俺は何とかその言葉を飲み込んだ。


「ありがとう。寛太かんたが言いたい事は分かる。ボクは人間では無い。だけど宇宙人ってわけでも無いんだ。ボクはね。海斗かいとが宇宙人の技術、地球では魔術と呼ばれている方法で作られた生命体なんだ」


「なっ!?待ってくれまた混乱してきた。何で地球人の海斗かいとがそんな事ができるんだよ?宇宙人の技術なんて知る由もないじゃあないか」


「昔から宇宙人と極一部の地球人は関係性があったみたいでね。地球人に知恵を与えてた宇宙人もいたらしい。何でも神として語られている者達は実は大半が宇宙人らしいんだ。

 その知恵や技術がのちに魔術と呼ばれる様になったのだけど地球人には合わないモノが多くて科学の進歩の一方ですたれていったみたいだね。まぁ、人間社会では再現性があるモノが信用できたのだろうね」


「なるほど宇宙人の技術が地球にもある理屈は分かった。だけど何故、海斗かいとがそれを使える?いくらあいつが天才だからといってもうちは普通の家系だぞ。そんな知識どこで身につける?」


「それに関しては実はボクも知らないんだ。僕が生まれた時には海斗かいとにはその知識があって、魔導書らしき物も所有していた。

 まぁ、それは危険な物だから自分が死んだ時に燃やしてくれって頼まれていたから、海斗かいとの死後にボクがこっそりと燃やして処分したけど

 そういうのに巡り合う才能も有ったんじゃあない?」


「納得はいかないが、確かに変人でもあったからな。何処どこかかで変な拾い物でもしたのかね。しかし、独学でこんなの作るとはやはり狂人的だな」


「こんなのとは何だい?こんなのとは。めちゃくちゃ美人だろ。あっでもそういえば海斗かいと、僕を見て悲しそうな顔をする時があるんだ何でだろう」


 俺は頭の中身が残念だからじゃあないかという言葉を必死に飲み込んだ。

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