深淵の記憶
記憶が
人里離れた丘の上の家には恐ろしい魔女が住んでいる。ありがちな何の根拠も無いありふれた子供達の噂話の一つ。しかし、皮肉にもその中には真実をとらえたモノもあり…
その家は古ぼけていた感じでいかにもという雰囲気だった。窓などはカーテンで仕切られていて中の様子は外から見る事は出来なかった。さて
コンコン
そう考えている間にも
「おい、
ガチャリ
「何の用だね。って子供?」
止める前にドアが開かれてしまった。中から現れたのはイメージする物語の魔女としては若い十代から二十代の
突然の思いもよらぬ展開に俺は硬直してしまう。一方、主犯である
「貴方が魔女と言うのは本当なんですか?」
と失礼極まりない質問をぶつけていた。
「はぁ、
とりあえず、私は君達が思っている様な面白い存在なんかじゃあ無い。わざわざここまで来て残念だろうけど帰りなさい」
「面白いかどうかは僕が判断する事だし、何か隠していそうな人の言葉は信用できない」
「くっ、最近の子供はこんなにも
う〜ん、このまま帰してもまた来そうだしなー。それで変な噂を流されたり、問題になる方が問題か。
よし、分かった。特別に私の家の中を見せてやろうではないか。何の面白みのない普通の家だと言う事を見せてやろうじゃあないか」
魔女かどうかはともかく、もう
俺は招かれるまま
確かに中は怪しげな呪具や不気味な植物も無く、少しだけ
「どうだ何の面白みも無いだろう。言っとくが私は君達をもてなすつもりは無いからな。お菓子や茶も出さないぞ。さぁ、つまらないだろう。明るいうちに帰りなさい」
確かに家は普通だがもう何かこの人が面白い。
「俺は
「おっ、これは丁寧にどうも。あまり名乗りたくは無いが、ここまできて謎の女では
「
「あれ…何だが
それは黒色の表紙の分厚い本で外国語で書かれているのでタイトルは分からなかった。
俺は少しだけ違和感を感じた。確かに本棚には難しそうな本が並んでいたがここまで不気味で目立つ本があったのだろうか。
「認識が阻害されている中でネクロノミコンの写本。よりによってそれを見つけて選び取るなんて…。そもそも感じ取れるなら逆に避けるのが普通なのに。いや、これは逆に選ばれたのか?」
先程までとは違って空気が重い。明らかに
「この本って何が書いてあるんですか?」
と空気を全く読まずにふてぶてしくその謎の本について質問をした。
「それはね。真っ当な人間が触れてはいけない物だよ」
「それを何で貴方が持っているのですか?やっぱり魔女なんですか?」
「はぁ~そうかもね。気が変わったというよりは事情が変わった。特別に君達に魔術を教えて上げよう」
「本当ですか?」
「
突然の言い出しを変にも感じたが、魔術という夢物語の言葉に子供である俺達は
「そうさ。ほら」
「これは興味深いですね」「何これすごーい」
この時の感動は本当に凄かった。現れた物はどれも不気味で気持ち悪かったが、夢にまで見た世界が本当にあるという喜びが
俺は
「本当は魔術なんて
しかし、
「?」
「あぁ、そうか子供相手だと難しい言葉はダメだな。はぁ~これは骨が折れそうだ。ともかく、君達に知識を授けよう。
だけど約束して欲しい。その知識やここでの出来事を絶対に公言してはいけない。それは周りを危険な世界に巻き込む行為だ。これを破るようだったら私は君達に罰を与えなければならない。守れるかい?」
「分かりました」
「分かった」
正直、あまり理解はしていなかったが俺は
「う〜ん、不安だな〜とはいえちゃんと理解しろと言う方が無理か。その
はぁ~荷が重いよ〜。だけど見過ごすのは流石に気が引けるしな〜。こういう中途半端なところ私のダメなところだよな〜」
その日から俺と
魔術や冒涜的な知識の習得は想像していた夢のような世界とは違って残酷で嫌悪するような世界であった。
俺は早い段階で魔術を学ぶのが嫌になってしまったが、それでも可能な限り
最初から俺は
何故、この様な事を今まで忘れていたのか?
分からない。しかし、思い出した事がもう一つある。
その時の出来事についてはやっぱり
あんなに好きだったのに薄情だな俺。
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