37話 奇襲?

 翌日の朝、早速行動を開始する。


 メンバーは前回と同じで、メインはクオン、俺、アーク、アスナ、タイガさん。


 荷物運びや運搬するために、獣人達を何人か連れて行く。


「それじゃ、行こうか」


「ええ、私も久々に腕がなります」


「クオンはクレスがいかないといけないしね」


「んじゃ、久々に四人で遠足しますか」


「そんなお気楽な……まあ、それくらいの方がいいか」


「運搬や警戒役は俺達に任せるといい」


「うん、タイガさん達を頼りにしてます」


 その後、都市を出て森に到着する。

 もう要領はわかっているので、特に相談もせずに森の中に入って行く。


「アークやアスナは探索出てたよね? 最近はどんな感じ?」


「大分、ランクの低い魔物は減った感じだな」


「そうね。探索中だけど、伐採も順調に進んでいるわ。襲われる回数は、明らかに減ったし」


「ふむふむ、それなら問題はなさそうだね」


 俺がいない間にも森の開拓はやっていたので、スイスイと進んでいく。

 そして前より早く、以前来た付近までやってくる。


「おっ、お昼食べる前にこれたね」


「ええ、以前の倍以上早いかと。どこまで行きますか?」


「今回は、結構奥まで行くつもりだよ。


「ひとまず、お昼にしようか」


 全員が頷いたので、昼食を食べる。

 メニューはオニブタと野菜のサンドイッチだ。

 甘辛の味付けで、体力がつきそう。


「うん、美味い……が、卵のサンドイッチとか食べたい」


「卵は貴重品ですからね。暑さでダメになりやすいですし、値段も高いですから」


「王都でも結構珍しいよなー。そもそも、手に入れる難易度が高い」


「親がいるから、まずはそっちをどうにかしないといけないわね」


 三人のいう通り、卵は貴重品だ。

 前の世界にいた鶏のような便利な生き物はいないし。

 手に入れるなら、巣を見つけ出して獲るとしかない。

 魔獣は強いし、飼育するのは難しい。


「やっぱり、そうだよねー。乳と卵があれば、美味しいモノが作れるんだけど」


「馬ではいけないのですか?」


「いや、馬でもいいんだけど……できれば、モルスだといいかな」


「しかし、彼らは絶滅危惧種ですから。暑くなるにつれて、その数を減らしていったと。今では、見つけるのも大変みたいですね」


 その辺りも、前世と似たような感じらしい。

 暑さに弱く、毎年何万頭が死んだとかニュースになってたし。


「見つけさえすれば、俺の氷魔法でどうにか出来そうな気はするけど」


「確かに主人殿が飼えば、問題はなさそうですね」


「この森にいるかな?」


「大分、人の手が入っていないので可能性はあるかと」


「それじゃ、肉と卵と牛乳を目的として探索しますか。アークもアスナもいい? そしたら、美味しいモノが作れるから」


「ああ、俺としては文句はない」


「私もよ。その美味しいやつに興味あるし」


 その後、タイガさんにも許可を取り……食事を済ませて行動を再開する。

 そして道中で川を発見したり、果実や山菜を採っていく。

 そんな中、時折現れる魔物を倒していると……日が暮れてくる。


「あちゃー、今日は成果なしかぁ。でも、魚は取れたからいっか」


「そうですね。ひとまず、夕飯は食べられそうです」


「ただ、魔物の数が少ないよね? 魔獣とかもいないし」


「何か強い生き物でもいるのかも……待ってください。主人殿、この奥に何かがいます。強い警戒心と、威圧感を感じます」


「えっ? ほんと? みんな、一回止まろう」


 一回止まって、少し様子を見る。

 しかし、俺には全然わからない。


「タイガさんは?」


「俺にも微弱だが敵意を感じる」


「二人が言うなら信用出来そうだね」


「っ!? みな散開! 主人! 失礼します!」


「うひゃ!?」


 クオンに抱かれ、俺はその場を離れる。

 すると、一瞬遅れで……さっきまで俺のいた場所の地面が溶けていた。

 周りを見ると、みんな無事に避けているみたいだ。


「な、なに!?」


「攻撃です! こうなると隠れてる意味はありません! このまま行きます!」


「わ、わかった! アークとアスナだけついてきて! タイガさんを中心に、ここで荷物を守りながら待機!」


 それぞれが頷き、すぐに行動を開始する。

 俺はクオンに抱えられたまま、青い液体を避けていく。

 その液体が当たった箇所は溶けていた。

 数が多く、ひとまず木の陰に避難する。


「これ……毒?」


「ええ、それに近いかと。食らったらまずいですね。解毒薬はいくつか持ってきてますけど……早いところ、近づかないと。これが飛んでくる限り、中々進めませんね」


「クレス! 私が先に行くわ!」


「えっ!? あ、危ないよ!?」


「いえ、ここはアスナ様に任せた方がいいかと。私は主人殿を抱えてますし、アスナ様の速さは私に匹敵します」


「……わ、わかった! 気をつけて!」


「ふふ、任せなさい——早くこないと倒しちゃうからね!」


 そう言い、木の陰から飛び出していく。

 そっちに毒液が行き、俺たちの方に来なくなった。

 アスナはジグザグに動いて、毒液を華麗にかわしていた。


「流石ですね。それでは、私達は慎重にいきましょう」


「ああ、そうだな」


 近づいてきたアークと共に、俺たちは森の中を慎重に進んでいくのだった。







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