22話 ほのぼの探索

 いやぁー、安心して見ていられるね。


 前を行く二人を見ながら、のんびりと森を歩く。


 何故なら、今のところ手助けをする必要が全くないから。


「セァ!」


「ヤァ!」


「ふふ、相変わらずの双剣捌きですね。私には手数が足りないので、かなり羨ましいです」


「そっちこそ、相変わらずの腕ね。私からしたら、その大剣を振り回せる力が羨ましいわよ」


 確かに、二人共それぞれタイプが違う。

 双剣でもって手数と素早さで戦うアスナと、大剣でもって一撃と力で戦うクオン。

 大物はクオン、小物はアスナが仕留めるというバランスで俺達はすることがない。


「うんうん、楽チンだね。それに、二人共仲が良いみたいだし」


「……お前の目は相変わらず節穴だな。いや、仲は良いのは間違ってないんだが」


「えっ? どういうこと?」


「ほら、見てみろよ」


「いえいえ、私はこんな身体ですから。アスナ様みたいに細いのが羨ましいですね」


「私だって、貴女みたいにむっちりした体型が羨ましいわ」


「「……ふふ」」」


 ……なんだろ、少し寒気がする?

 俺の目には見えない何かが、二人の間に迸っているような……。


「ったく、相変わらずだな。しかし、魔法もそうだが俺にまで言わずに行くとは水臭えな」


「ごめんごめん。いや、こっちも割と急だったからさ。護衛をつけるとか面倒なことになってたから、ささっと出てきちゃった。何より、君は……というか、今更だけどきて平気なの? 次男坊だけど、俺とは違って有能だし」


「ん? ああ、そういうことか。実はうちの兄貴の結婚が決まってな、俺は晴れてお役御免だそうだ。ちょっと色々と将来を考えたいってことで、こっちに来る許可を取った」


「そういうことかぁ。うーん、おめでとうで良いかな?」


 アークの家も少し特殊だ。

 俺と同じで母親が違う兄弟だし、アークの母親の方が貴族の格が高い。

 アークは権力争いを避けるために、上手く立ち回っていた。

 そういうところが、俺と気が合ったんだよね。


「ああ、それでいい。俺が家を継いだら、それはそれで問題が起きる。母上や実家は文句を言うが、俺としてはこのまま平和がいいぜ。別に兄貴は普通に優秀だしな」


「うんうん、平和が一番だよねー」


「ふっ、そしてお前も同じ考えだったとは驚きだ。そのために力を隠していたんだろ?」


「はは……どうかなぁ」


「まあ、いいぜ。そこは曖昧にしてた方が正解だし」


 アークは無能の俺とは違い、本当に優秀が故に一歩下がってきた。

 だから同じと言われると少しむず痒い。

 まあ、気持ち的には一緒だからいっか。


「ちょっとあんた達!? か弱い乙女だけを戦わせて何やってんのよ!」


「そうですよ、お二方。喋ってないで手を動かしてくださいね」


「……聞いたかい、アークさん? あれでか弱いですってよ」


「聞きましたぜ、クレスさん。ちゃんちゃらおかしなこと言ってるな」


「「何か言ったかしら(でしょうか)?」」」


「「何も言ってません!!」」


 生命の危険を感じた俺達も戦いの準備をする。

 二人と交代し、アークが槍を構えて前進し、俺が後ろに控える。


「ギャキャ!」


「ブホッ!」


「ちっ、雑魚クラスとはいえ本当に数が多いな。クレス! 隙を作れるか!?」


「はいよっ! アクアショット!」


「「ガァ!?」」


 もしもの時のため、魔力の無駄遣いはできないので下級魔法を放つ。

 俺の放った水の弾は顔面にあたり、奴らの視界を塞いだ。


「ナイスだっ! ハァァァ!!」


「おおっ〜! 相変わらず素早い突きだね」


 いわゆる五月雨突きというやつで、間合いに入った魔物達を一瞬で葬った。

 流石は、士官学校をエリートで卒業した男だ。

 学生時代に槍の大会でも優勝してるしね。


「まっ、こんなもんよ。それにしても、本当に魔法が使えるんだな」


「ほんとよ。それなら、狩りとかにも誘ったのに」


「はは、ごめんね。まあ、今できてるから許してよ」


「それは言えてるな。まさか、こうやって冒険ができるとはなぁ」


「ふふ、そうね。昔は、三人で冒険者になるんだとか言ってたっけ」


「あぁー……そんなこともあったね」


 まだ俺が記憶を取り戻す前で、無邪気に修行してた頃だ。

 自分は何者にでもなれるし、そうすれば父上に兄上や姉上が構ってくれると思っていた。

 結果的にそんなことはなかったし、才能もなかったんだけど。


「では、今からでも遅くありませんね。主人殿は、これから何者にもなれるのですから」


「それもいいかもね。俺は晴れて自由になったし、ひと段落したら冒険者っていうのも悪くないや。その時はクオンも手伝ってね?」


「ええ、もちろんです。私も仲間に入れてくださいね」


「おいおい、楽しい話じゃんか。そいつは、俺も是非参加したいぜ。というか、今からでもよくね別に領主が冒険者なっちゃいけないって決まりはないし」


「確かに、そんな決まりはないね……うん、良いかも」


「待ちなさいよ、あんた達ばかりずるいわ。私だって……というか、最初は私が言い出したんだから」


 こうして、四人で集まるのは久々だ。


 レナちゃんもそうだけど、彼らが俺の寂しさを埋めてくれた。


 このメンバーでダンジョン攻略や旅とかしてみたいね。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る