21話 探索開始

その後、三人にも俺の計画を簡単に伝える。


そして、その日は三人も疲れてるということで、明日の朝に出かけることにした。


夕飯を食べて早めに就寝した彼らを見送った後、自分の部屋に戻る。


「ふぅ……まさか、来ちゃうとはね」


「流石にびっくりしましたね。アスナ様は来るとは思ってましたが、アーク様にレナ様まで来るとは」


「いや、俺からしたらアスナも驚きなんだけど? あれかな、クオンと模擬戦がしたかったのかな?」


「ふふ、どうでしょうね?」


「何やら意味深だなぁ」


しかし、きてしまったものは仕方ない。

それに、嬉しいのは事実だしね。

生活し慣れた王都を出て、わざわざ俺に会いに来てくれたんだ。


「まあまあ、とりあえず助かったのでいいじゃないですか。これで、目的が近づきましたし」


「まあ、それはそうだね……さて、これはどうしよう?」


「その手紙ですか……読まないので?」


「いや、読むけどさぁ……」


あの後、三人からあるものを渡された。

それは、父上からの手紙だった。


「何が書かれてるか怖いと?」


「……うん、そうだね。父上とは、会話らしい会話もしたことないし。何か言われるというより、何が書いてあるかわからないのが一番怖い」


「確かに私が主人殿にお仕えしてから、話してるのは数えるくらいですね」


「しかも、事務的なことだけだよ。ちゃんとした話なんか、少なくとも俺は覚えてないや……ラチがあかないから見るかなぁ」


「私はいない方がいいですか?」


「ううん、そのままでいいよ。というか、勇気が出ないのでいてね」


そして、ある程度の覚悟を持って手紙を開けて中身を見る。

そこには、事務的な文章が書かれていた。

正式に俺を領主と認めることや、改めて注意事項、やるべきことや心構えなど。


「まあ、予想通りだね」


「ですが、もう一枚ありますよ? ほら、小さい紙が入ってます」


「あっ、ほんとだ、見えてなかったや」


封筒を確かめたクオンの手から手紙を受け取る。

それはメモ帳程度の小さな紙だった。

そこには、短い文が書いてある……。


『クレスよ、元気にしているか? 追放した身で何を言ってるかと思われるかもしれないが、私個人としてはお前のことを心配している。お主の母も体が弱かった……どうか体だけには気をつけてくれ。そして、国王である弱い自分を許してくれ』


「……どういう意味?」


「普通に心配をしているのかと」


「いや、確かにそう見えるけど……」


こんなこと、今まで言われたことなかった。

顔を合わせば、父上は目を逸らすか小言ばかり。

厳格な父親って感じで、俺はどう接していいかわからなかった。


「つまり、国王としてと父親としては考えが違うってことかと。ただ、弱い自分っていうのはよくわからないですね」


「うーん、そういうことなのかな? あぁー、仕事とプライベートは別みたいな。確かに弱いっていうのは謎だね……まあ、良いや」


「そうですね。今の時点で考えても仕方ないかと」


「そうそう。とりあえず、明日のことを考えないとね」


今更、身内に期待することなんかない。


前世でも、散々裏切られてきた。


仲直りすると言った両親は別れ、母親も俺を置いて出て行った。


それから一度も、俺は二人から連絡が来たことはない。


もう……期待して傷つくのは嫌だから。






夜が明けて軽く食べたら、早速行動を開始する。


玄関に俺、クオン、アスナ、アークの四人が揃う。


その後ろにはタイガさんと、数名の獣人がいる。


彼らは荷物運びや食材集めに専念してもらう。


「それにしても暑いわね……半袖の騎士服を用意したけど、それでもきついわ」


「確かにあちーわな。まだ日も登ってないってのに」


「そうだよねー。ただ、これが終われば少しはマシになる思う」


「そのために、我々は森に行くというわけです」


「ええ、わかってるわ。とりあえず、強い魔物を倒して立派な魔石を手に入れればいいのね」


「んで、あわよくばダンジョンを見つけると……へっ、久々に腕がなるぜ」


確認をした俺達はマイルさんに後を任せ、森へと出発する。

道中は、守備隊の方々に巡回をお願いしてるので問題なく進んでいく。

そして、予定通りに二時間くらいで森の前に到着する。


「はい、最終確認です。前衛はクオンとアスナ、中衛はアーク、後衛は俺で行きます。獣人の方々はその後をついてきてください」


「わかったわ。ふふ、クオンと共闘なんて久々ね」


「ええ、そうですね。頼りにしてますよ」


「それはこっちのセリフよ。ただ、負けないから。私の方が強いってことを教えてあげるわ」


「いいでしょう、受けて立ちます——私の方が役にたつということを」


……二人の間に火花が見える。

相変わらず、この二人は仲がいいんだが悪いんだがわからない。

すると、アークが肩を組んできた。


「へっ、モテる男は辛いねぇ?」


「どういうこと? それは嫌味かな? アークの方がモテモテじゃん」


「……はぁ、我が親友ながら心配になるぜ。まあ、俺は面白いからいいけど」


「だから、どういう——」


「クレスー! 何をちんたらやってるのー! ほら、 早く行くわよ!」


「はいはーい! わかってるよー!」


先に行ってしまう二人を追って、俺とアークも森の中へ入っていくのだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る