23話 自由な日々を
とまあ、ほのぼの探索してた俺達だけど……。
流石に、この辺りからそうはいかなくなってきたみたいだ。
「クオン! そっち行くわよ!」
「ええ! わかってます!」
クオンとアスナが森の中を縦横無尽に駆け回り、魔物を仕留めていく。
この辺りは魔物が多く、食材である魔獣を食い散らかしているらしい。
何故なら、まだ一体もあっていないからだ。
ヌマコダイルみたいな強い固体や、隠れるのが上手い魔獣は別だけど。
「アークは俺に近づく敵をよろしく!」
「おうよっ、任せろ!」
「タイガさん達は後ろで固まって行動してください! できれば撃ち漏らしを頼みます!」
「うむ! 我々のことは気にせんで良い!」
近づいてる魔物はアークが仕留める。
俺がするのは、前にいる二人のフォローだ。
両手の五本指を広げ、そこから弾丸を出すイメージをして……放つ!
「アイスショットガン!」
「ギャキャ!?」
「ブホッ!?」
「ひゅー、やるじゃん」
「へへ、まあね」
これなら十発同時に放てるし、打ち損じても何れかは当たる。
これまで魔力を温存してきたから、まだまだ余裕はあるし。
「ただ、相当放ったらかしだったみたいだな。こんなに魔物が増えちまって」
「十年以上前から放置されてるしね。むしろ、ギリギリだったかも。こんなに魔獣が見当たらないってことは、この辺りの魔獣は食い尽くされた可能性があるし」
「そういうことか。もしかしたら、そろそろスタンビードが起きてたかもきれないと。餌を求めた魔物達が森から押し寄せるとか……笑えねぇ」
「本当に、良いタイミングで来てくれたよ。さて、だいぶ魔石は稼げてきたね。ただ、小物ばっかりだからそろそろ大物が……」
その時……ズシーン、ズシーンと大きな足音が聞こえてくる。
そして、三体の魔物が姿を現した。
ゴブリンを一回り大きくしたゴブリンジェネラル、同じくオークジェネラル、コボルトナイトまでいる。
いわゆる、中堅と言われる魔物達だ。
「ようやくお出ましだね。さて、振り分けはどうしよう? アーク、強さとかわかる?」
「ゴブリンが一番弱くて、コボルトナイトが一番手強いはず。ちなみに、魔法に弱いのがオークジェネラルだ」
「それじゃあ、俺が担当だね。アークはゴブリンジェネラルをお願い。クオンにはコボルトナイトをやってもらおう」
「それが良いだろう」
俺はタイガさん達に下級魔物を頼み、クオンとアスナの元に駆け寄る。
その間にアークが、二メートルないくらいのゴブリンジェネラルを槍で牽制して引き離していく。
「ゴァァァァ!」
「こっちだよ! てめーの相手は俺だっ!」
棍棒を避けつつも、アークが的確に槍で傷をつけていく。
さすがはアークだ、あれなら任せて平気だね。
そして、ゴブリンジェネラルを引きつけてる間に手短に作戦を伝えた。
「わかりました。同じ大剣持ちですし、私が対応するのが良いですね。あと、あの盾は厄介ですし」
「うん、そのまま倒しちゃっても良いよ」
「では、アーク様と勝負でもしますか」
大剣を構えて、クオンが二メートルくらいあるコボルトナイトに斬りかかる。
クオンの大剣と相手の盾がぶつかり、森の中に轟音が響き渡った。
「ゴァァァァ!」
「はっ、やりますねっ! 久々に戦い甲斐があります!」
その戦闘は凄まじかった。
相手の大剣は邪魔な木ごと斬り、地面に穴を開ける。
コボルトは頭もいいし器用な魔物で有名だ。
冒険者として戦い慣れてるクオンが適任だろう。
「それで、私はなにをすれば良いのよ?」
「俺が魔法を溜める間、オークジェネラルを抑えてほしい」
「ふーん、私が時間稼ぎってわけ」
「嫌かな?」
「ううん、そんなことないわよ。良いじゃない、クレスと共闘するなんて夢みたいだもん」
そう言って笑う姿は、不覚にもとても可愛らしい。
ここが戦場で、アスナはご機嫌なのか剣をブンブンしてるけど……場違い感。
「それじゃ、よろしく。用意できたら声かけるね」
「ふふん、早くしないと私が倒しちゃうからね!」
「おっと、それは大変だね。んじゃ、いっちょやりますか」
「ええ! 行くわよ!」
アスナが双剣を構えて、二メートル以上あるオークジェネラルに斬りかかる!
相手の腹に入るが、その厚い脂肪により血は出ていない。
「ブル?」
「やっぱり、剣だと厳しいかも。でも、任せっきりっていうのは性に合わないのよ!」
「ブルァ!」
斧による攻撃を素早い動きで躱しつつ、相手を翻弄していく。
アスナの武器はその軽快な動きと足捌き、そして双剣により踊るように舞う。
本来は集団戦向きだけど、今回は足止めに徹底してもらう。
「さて、俺も準備をしないとね。中級の魔物を倒す威力を……」
「その間の守りは俺に任せるがいい」
「タイガさん、ありがとう。それじゃ、お願いします」
戦いは皆に任せて、俺は魔法に集中する。
俺はまだ魔法を覚えたばかりの素人だから、強い魔法は動きながらとかはまだ難しい。
だったら、みんなに手伝ってもらってその間に溜めるしかない。
「よし、これで良しっと。アスナ! 準備ができた!」
「ブホッ!」
「むぅ……悔しいわ! ちょっと待って!」
「はい? ……まあ、いいけど」
「こいつに一発入れてやらないと気が済まないわ」
どうやら、負けず嫌いが発動したらしい。
この辺は相変わらずだね。
「ブヘヘッ」
「っ〜!! 笑ってるのも今のうちよ!」
アスナが右の剣と左の剣を交差し、その場で立ち止まる。
それを隙と見たのか、オークジェネラルが斧を振り下ろしにくる!
「アスナ!」
「ブホッ!!」
「平気よ、それを待っていたわ——十字斬り!」
「ブホッ!?」
なんと斧が振り下ろされるのに合わせて、アスナが双剣を振り下ろした。
すると、相手の斧が粉々に破壊されて反動で尻餅をつく!
しかしアスナの双剣は無傷……剣を重ねることで強度を上げて、タイミングを合わせることで武器破壊をしたんだ。
「おおっ! すごいっ!」
「ほら! ぼさっとしてないでやりなさい!」
「はーい! ……氷の刃よ、敵を切り裂け ——
鋭利な氷の刃が、倒れてるオークジェネラルに吸い込まれ……腹が切り裂かれた!
「ブァァァァ!? ……ァ、ァ……」
「へぇ! やるじゃない! 改めて、あいつを一撃で仕留める魔法が使えるなんて驚きよ」
「へへ、まあね。でも、それもアスナが時間と隙を作ってくれたからさ」
「ふふ、なんかこういうのも悪くないわね。なんか、冒険って感じがするし」
「それはそうかも。冒険者になるのも良いけど、ダンジョンとかあればみんなで行くのも良いね」
すると、突然アークに肩を組まれる。
前をみると、アスナの方も肩にクオンの手が置かれていた。
その手には大きな魔石がある、どうやら二人共無事に倒し終わったらしい。
「おいおい、面白そうな話をしてんじゃん」
「ええ、そうですよ。私達も仲間に入れてくれないと」
「じゃあ、ダンジョンがあったらみんなでいくわよ」
「そうだね。そうすれば魔石とかもいっぱい手に入るだろうし」
快適な生活のために領地開拓をしつつ、スローライフを目指す。
それ自体は変わらないけど、こうして仲のいい友達と冒険に出るもの楽しい。
これも、王都から追放されなかったら実現しなかったことだ。
これからは自由だし、色々としたいことして過ごせるといいな。
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