二章

18話 これからの計画

……い


……つい。


……暑い!!!!


「だァァァァ! 暑いってばよ!」


「主人殿、うるさいです」


「だって暑いよ!?」


おそらく外の気温は三十五度近い。

昼間は何もしてなくても汗が出る感じだ。

一応、氷魔法を使って軽減はしているんだけど。

それでも、すぐに溶けてしまう。


「それは知ってます」


「クオンは意外と平気そうだね?」


「私の着ている服は風通しが良いですから」


「ふんふん、確かにそうらしいね」


「というか、発注して着させたのは主人殿じゃないですか」


「まあ、それはそう」


足も草履、白い袴姿……巫女さんとかに近い感じで、完全に俺の趣味である。

黒髪ロングの美女であるクオンには、とてもよく似合っていた。

それで大剣を振るうっていうギャップも良き。


「こっちの職人に作らせても良いかもしれないですね」


「あっ、なるほど……特産品とかにもなるかも。実際、王都にいる頃は興味を持たれた事もあったし」


「ええ、冒険者をしてる時も女性陣によく聞かれましたね」


「ふんふん、涼しいし良いかも」


すると、領主部屋にマイルさんが入ってくる。


「クレス殿下、少しよろしいですか?」


「うん、平気だよ。どうかした?」


「いえ、ここに来て一週間が過ぎたので今後のお話をしようと思いまして」


「そっかぁ……あっという間だったね」


「ええ、本当に。クレス殿下もお疲れでしょう」


ここ来てから毎日動きっぱなしだ。

朝晩と氷を作りまくって住民に配り、昼間は視察や机仕事……あれ!? スローライフはっ!?

このままではまずい! これに慣れちゃダメだ!


「その通り! なのでお休みを要求します!」


「主人殿、たった今これから話し合いをすると言ったばかりでしょうに」


「ぐぬぬっ……そうだった」


「申し訳ありませんが、もう少々お待ちください。それを込みで話があるのです」


「なるほど……そういうことなら話を聞きましょう」


「今更キリッとしてもダメですよ?」


「と、とにかく! 休憩休憩!」


俺は仕事机から離れ、ソファーに座る。

ついでに部屋の四方にあるバケツに氷を足しておく。

そして、目の前にマインさんが座りでかい紙を広げる。


「では、今後の話をいたします。クレス殿下のおかげもあり、下水道が徐々に綺麗になってまいりました。これで病気などをする者も少なくなりますし、仕事環境も良くなったかと」


「うんうん、それは良かった。やっぱり、病気は怖いからね」


「あとは噴水に定期的に水と氷を入れてくれることで、あそこで水浴びをして涼を取る人達が増えました。おかげで広場に活気が戻ってまいり、人々が明るくなってきたかと」


「うんうん、やっぱり気持ちが明るくならないと良いことないよね」


「いやはや、食堂で民と共に食事をすることといい……あれもあり、クオン殿下に恐れをなしていた者達が親近感を覚えたようです。それによって、クオン殿下の魔法もありがたく使わせて頂こうという空気になったのです。その先見の明には恐れ入りました、まさかそこまでの狙いがあったのかと」


「ま、まあねっ!」


単純に寂しかったのと、単純に自分が水浴びをしたかっただけだけど!

特に女の子が生足でぱちゃぱちゃしてると良き!

……そのうち、プールでも作ってみるか。

そうなると水着もいる……ぐふふ。


「主人殿? 何をニヤニヤしているので?」


「ナンテモナイデス」


「……怪しいですね?」


「気のせいです!」


「ほほ、相変わらず仲がよろしいですな。それもあって獣人達も態度が軟化してきました。さて、そろそろ本題に入りましょう」


「そ、そうだね」


……そういやそうだった。

今後はどうしようって話だったね……アブナイアブナイ。


「まずは、クレス殿下の考えをお聞きしたいと思っております」


「プールやお風呂が欲しいです! あっ、プールっていうのは大きな池を人工的に作ったやつみたいなものだよ」


「ふむふむ、つまりは憩い場と癒しの空間ですか。確かに、我々は張り詰めて生活をしておりました。それに人を集めるために、そういう物もあってもいいでしょう。しかし、それにはドワーフなどの力が……まさか!」


「そう、俺はドワーフの方々を誘致したいと思ってます」


ドワーフ、それは物作りと土魔法の達人。

彼らがいれば、プールやお風呂もできるはず。

もしかしたら、冷蔵庫なんかも作ってくれるかもしれない。


「むむむっ、私もいずれはそれを考えておりましたが……しかし、彼らが国を離れて来る利点がありません。うちには、まだ特産品と呼べるものもありませんし」


「ふふふ、それについては考えがあるんだ。ただ、そのためには色々と準備がいる」


「ほほう? 詳しく聞かせて頂いても?」


「ええ、もちろんです」


ドワーフの特性は辛口の食べ物とアルコールを好むこと。

そして、豪快な性格で細かいことは気にしない。

気に入った者には、きちんとした対応をする。

それを踏まえた上で、俺はとある提案をした。


「……いけるかもしれません」


「しかも、そうすればアレも手に入るし」


「ええ、ええ、上手くいけば……試す価値はありそうですな」


「じゃあ、明日から始めるとするよ」


マイルさんの許可を得たので、あとはやるだけだ。


ふふふ、プールにお風呂があればスローライフに一歩近づくよね!





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