第10話 状況を確認する

 ……はぁ、こんなに期待されちゃ仕方ないか。


 みんな、めちゃくちゃキラキラした目で見てくるし……。


 どちらにしろ、このままだと俺自身もスローライフを送れない。


 それにダラダラしすぎた罪悪感が……少しは頑張らないとだね。


「ふぅ、違う意味で疲れた」


「ふふ、あんな風に感謝されることなかったですからね」


結局、あの後は氷の魔法も使いまくって人々に配っていた。

あれくらいあれば、少しはマシになるだろう。


「まあ、無能で有名だったからねー」


「あ、あれで無能なのですか?」


「あぁー、いや……」


「主人殿は、王位争いを避けるために力を隠していたのですよ」


「な、なるほど! 納得です!」


 ……納得しないで! 違うから!

 いや、争いをしたくなかったことは事実だけど!

 その後、再び領内を案内される。

 冒険者ギルドは閑散としており、実質的に殆ど活動していないみたい。

 それに伴い、武器や防具屋も寂れていた。


「あちゃー、随分と寂れてるね?」


「申し訳ありません。若者や優秀な冒険者達は、ほとんど王都方面に行ってしまい……もしくは、南の国に出稼ぎに行っています」


「まあ、こんなに暑いんじゃやる気も出ないよね。それに、報酬も低くなっちゃうし。そうなると、魔物とか溢れて大変じゃない?」


 魔物は、何処からともなく突然現れる。

 理由とか、いつからそうだったわからないけど、そういうものらしい。


「幸い、魔物が近づくことは少ないので……なにせ、森の中に美味しいものがありますから。こちらにくる弱い魔物程度なら、我々でも対処ができますし」


「なるほど、不幸中の幸いってことかぁ。ということは、森はあるんだ?」


「はい。ここから更に西に行ったところに。ですが、凶暴な魔獣や魔物がいて奥には行けません。何より、数が多いです」


「あぁー、狩る人もいないから増えちゃったのか」


 次に案内されたのは南にある商店街で、こちらも栄えてるとはいえない。

 前世で言うところの、いわゆるシャッター街というやつだ。

 買いに来る人が少ないんじゃ無理もない。


「商人が来るには、何か名物がないとだし」


「はい、それが以前は森から取れる恵だったのですが……」


「ふんふん、見えてきたね」


 最後に、住民が住んでいる東側に行く。

 そこでは北側が人族、南側が獣人と住み分けができているようだ。

 奴隷扱いを受けているわけではないが、仲良くというわけではないらしい。


「これはあえて別にしてるのかな?」


「いえ、自動的にこのような形になりました。できれば、協力して欲しいのですが……やはり、過去の出来事がありますので」


「じゃあ、その辺りはクオンに任せるよ」


「とりあえず、努力はしてみます」


「ひとまず、このような感じになります。何か疑問はございますでしょうか?」


「うーん、下水処理とかゴミ問題は平気?」


 特に気になったのは、汚染処理についてだ。

 この暑さでは、色々な問題が起きる可能性がある。


「住民が少ないため、今のところは問題ありませんが……それでも大分まずいかと」


「それを放っておくと良くないね。んじゃ、そこからどうにかするかな」


「それはどういう……? 流石に水で全て押し流すというわけにも……」


「そんなことしたら、地上に溢れちゃうからね。えっと、まとめると……まずは水が必要、食料がない、暑いのが大変、人が来ない、街を綺麗にしたい。まずは、こんなところかな?」


「はい、合っております」


 特産品とかは後で考えればいい。

 外壁なんかも、ドワーフを誘致すればいいし。

 そのための方法も、今なら浮かんでる。

 まずは、人が住みやすい環境にすることだね。


「よし、決めた。まずは、森に行ってみるよ。流石に暗くなってきたから明日の朝一がいいかな」


「えっ? は、話を聞いておりましたでしょうか?」


「うん、危険だってね。大丈夫、俺にはクオンがついてるから」


「はっ、私が一命に代えてもお守りします」


「……では、せめてこちらも人員を用意させてくださいませ」


 さてさて、まずは自分も住みやすいように頑張りますか!


その前に……眠いから寝ようっと。






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