第6話 再び王都へ
そして一週間が経ち前回と同じ馬車に乗り、王都を目指した。前回と違うところといえばリッドが一緒にいることだ。一人の時よりも少しだけ勇気が湧いてくるような心強さがある。朝早くに村を出たので着くのは昼頃になる。馬車に揺られ夢うつつの中、騒がしい音で目が覚めた。前はこの雰囲気が好きだったが今はあまり好きにはなれなかった。
「暢気なものね……」
馬車の中でエリーズの口からそっと零れ落ちた。
その反対に目をキラキラさせているリッドの反応を見てそっと微笑んだ。
「早く宿に行くよ、リッド!」
はしゃぐリッドの手を引っ張りいつもの宿へ向かった。
「宿が取れたんなら早く賢者のところに行こうぜ」
今度は逆にリッドがエリーズの手を引き賢者の待つ屋敷へ向かった。
呼び鈴を鳴らすと落ち着いたこえがした。
前に話をした部屋へ招待され出された紅茶を飲み、ゆっくりと会話が始まった。
最初に会話を切り出したのはエリーズだった。
「私に世界を救えるほどの力があるとは思えません。この国の騎士たちに任せたほうがいいのではないでしょうか」
真剣な眼差しで真っすぐと賢者の顔を見た。リッドにはどこか怯えているように見えた。
「確かにこの国の騎士たちは決して弱くないだが、龍王に立ち向かうためには同じく龍の力をぶつけなければ太刀打ちできないだろう」
「それが私なんですか?」
「いや時を同じくとしてエリーズ君と同じように力に目覚めたもの、目覚めようとしているものがいる」
「私の他にもいるんですか!」
エリーズは思わず身を乗り出して大きな声で質問した。
「君にはその仲間たちを集めながら自身の力を引き出すための旅に出てもらいたい。もちろんそのための護衛も用意しよう」
相変わらず落ち着いた雰囲気で淡々と話していく。そんな彼を見ているとこちらまで冷静になれるので不思議だ。
「俺もその旅について行っていいですか」
しばらく沈黙が続いたとき、一緒に来ていたリッドがここぞとばかりに話始めた。
「もちろんいいとも。見知らぬものと旅をするより見知ったもののほうが旅もしやすかろう。」
「失礼ですが、私はまだ行くとは一言も言ってないですよ」
彼女は、自分の意思とは関係なく話が進んでいくことに思わず憤りを覚えてしまう。
「今すぐ答えを決めなくても旅の中で答えを見つけるといい」
「そうだよエリーズ!こんなワクワクする事を断るなんてもったいねぇって」
しばらく黙りこくってしいた彼女はリッドの目を見て諦めたようにため息をついた。
「わかりました、賢者様。その旅に行きます」
横で嬉しそうにはしゃぐリッドを横目に賢者は笑みを浮かべた。
「それでは後日、旅に同行するものをこちらで用意しよう。その間に君たちも旅の準備をするといい」
静かに立ち深々と頭を下げ賢者の屋敷をあとにした。
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