第16話 スマホの画像
美香はスマホで写真の画像を見ていた。そこには自分が撮ったもの以外に送られた画像もあった。彼女はそれを消していっていた。
(これは見せられない。見つからないように・・・)
それは美香が合コンやパーティーに参加したときの、そしてその交友関係の写真だった。疑われている香織のことで、まさか夫が妻のスマホを盗み見るとは思わないが、それに関する写真がないかと美香のスマホを見せてくれというかもしれない。いらぬ誤解を受けぬために消す必要があった。
「これもだめ。これは残そう。これは・・・」
だがいざ消すとなるとその写真をじっと見てしまうものであった。その中には香織と大山大吾の2ショットもあった。2人とも幸せ様な笑顔で写真に写っている。
「この頃は楽しかったようね・・・」
だが2人の関係は不倫だった。香織はこの頃、そんなことも知らずに大吾に夢中になっていた。大吾の方は多くの愛人の中の一人にすぎなかったようだが・・・。
美香は香織からその話を聞くたびに、表向きは親友の幸せを喜んでいた。しかし心の奥底ではやっかみがあった。恋愛を楽しむ香織に対して。だがそれもすべて終わった。大吾の妻が事故死して不倫であることがわかったのだ。その時、美香は香織に言ったものだった。
「よかったじゃないの。奥さんが死んで。これで何も邪魔するものはないわよ。」
「そんなことじゃないの。彼が奥さんのいることも言わなかった不誠実さが許せないの。」
「そうなの。仕方がないわね。」
美香はそう言ったものの、内心はあきれていた。
(あんな男、遊び人に決まっているじゃないの。誠実さがないのは当然。そんなことをあの男に求めているようなら香織は男を見る目はないわね。)
美香はその頃の香織とのやり取りを思い出していた。
とにかくこの画像は必要ない。いや持っていたら変なことに巻き込まれるかもしれない。そう言いながら美香はその写真を見た。日付は6月26日、別れる直前のものだ。
「ん?」
美香はそこに何か違和感を覚えた。画像の向こうから強い力を感じるのだ。何かが・・・そう思ってじっと写真を見ると、2人の背景の木々の間に何かが写り込んでいるようだった。それは決して背景の一部ではない。何か別のものが写っているのだ。
「何かしら・・・」
美香はスマホをピンチアウトしてその画像の一部を広げてみた。確かに木々の間に何かがある。さらに広げると・・・。
「ぎゃっ!」
美香はスマホを落とした。そこには木々の間からのぞく女の顔があった。その体は白っぽくて不明瞭だった。その目は恨みがましく2人を見ているようでもあった。この世のものとは思えない・・・それを見ているだけで何かがのしかかってくるようで息づかいが激しくなった。
(この目は・・・)
美香はこの女の恐ろしい目に覚えがあった。以前、これと同じ目を見たことがある。だからその時のことが頭の中にフラッシュバックして、恐怖に駆られてスマホを落としたのだ。
「一体、何なの・・・」
美香はつぶやいた。すると床に落としたスマホが急にチカチカと光を放った。彼女は驚いて目を見開いてじっと見つめていた。のしかかる恐怖で身動きはできなかった。
やがてその光は消えた。美香は恐る恐るそのスマホに近づき、画面を見ないようにゆっくりと持ち上げてスイッチをオフにした。そしてテーブルの上に投げ出すように置いた。
「なに? これ・・・」
息は大きく乱した美香は胸の動悸を手で当てて押さえていた。
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