「あんたの事なんて絶対好きにならないから」と小さい頃に言われて疎遠になっていた幼馴染を飛び降り自殺から助けたら、次の日にめちゃくちゃ俺に甘えてくるようになった件

戯 一樹

第1話



「あんたの事なんて絶対好きにならないから!」



 なんて幼馴染の女の子に言われたのは、一体いつの頃だったか。

 ああ、思い出した。あれは小学生の時だ。

 当時、近所に住んでいた幼馴染の女の子とよく一緒に遊んでいたのだが、それを見た同級生の悪ガキに、

「お前、女なんかと遊んでんのかよー! ヒュー! カップルだカップル〜!」

 などと揶揄ってきて、その時横にいた幼馴染がムキになってこう言い返したのだ。

「別にカップルじゃないから! わたし達、付き合ってなんかないし! そもそも好きじゃないから!」

 これで悪ガキも引いてくれればよかったものを、女の子に反論されて腹が立ったのか、余計声を荒げて、

「ウソだぁ〜! だってお待ら、めちゃくちゃラブラブだったじゃん! ラブラブで一緒にシーソー乗ってるじゃん!」

 確かに、この時俺と幼馴染はシーソーに乗って一緒に遊んでいた。だが俺と幼馴染は、いつも通りシーソーを使っていたつもりだった。それが悪ガキにはラブラブな感じに見えたらしい。

 そんな悪ガキの言葉に、幼馴染もいっそう顔を赤くして、

「だから好きじゃないから! 智和ともかずとは単なる幼馴染! そもそも──」

 そこまで言って。

 突然の事にひたすら茫然自失とするしかなかった俺に対して、彼女はこう告げたのだ。

 あんたの事なんて絶対好きにならないから、と。



 それから幼馴染とは──花凛かりんとは、一言も話さなくなった。



 俺から何度か声を掛けた事もあったのだが、ことごとく無視されてしまった。十回を超えた頃にはさすがに俺も諦めが付いて、こっちから話しかけるような事は一切しなくなった。

 ただ、一体なんの運命のイタズラなのか、花凛とは小、中、高と学校が何度もダブってしまい、あまつさえクラスもすべて一緒になってしまうという妙な縁で結ばれていた。

 まあどう考えても腐れ縁でしかないし、向こうも高校生になってから彼氏が出来たらしく、俺なんか眼中にないとばかりに、順風満帆な陽キャ人生を送っているようだが。

 翻って俺はというと、まあ可も不可もなくいった感情だ。別に陰キャというわけではないが、陽キャとも言えない平々凡々な毎日を過ごしていた。

 相変わらず、お互い一切干渉はせずに。

 だからきっと、これからも花凛とはこんな感じで不干渉な関係が続くのだろうと──幼い頃に少しだけ仲が良かっただけの幼馴染として次第に記憶が薄れていくのだろうと、そう思っていた。



 今日この日、花凛が目の前の歩道橋から飛び降りようとする瞬間を目撃するまでは。



 それは高校からの帰り道、たまたま立ち寄った書店で漫画を物色してから家路に就こうとした際の事だった。

 偶然通りかかった歩道橋の前で、今にも飛び降りようとしている花凛の姿を見つけてしまったのだ。

 そこは人通りのないところで、しかしながら車の行き来は多く、また小雨が降っていたせいか、俺以外は誰も気付いていない様子だった。

「!?!! 何やってんだ、あいつ……!」

 手すりに足をかけようとしている花凛の姿を見た途端、俺は持っていたカバンや折り畳み傘をその場に放って全速力で走った。

 花凛を発見したのは本当に偶然だった。少しずつ雨足が強くなったのを気にして空を仰ごうとした時に、たまたま歩道橋から飛び降りようとしている花凛の姿が視界に入ったのだ。

 なんにせよ、あのまま放っておけない。でないと、マジで飛び降りかねない。

 しゃにむに駆けて、ようやく歩道橋の階段を登りきったところで、花凛が手すりに身を乗り出そうとしているところを目にした。

「あの、バカっ!!」

 怒号と共に、最後の力を振り絞って花凛の元へと疾走する。

 そうして、花凛の体が下の道路へと傾きかけた瞬間──



「バカやろうっ!!!!」



 ──間一髪、花凛の両脇をとっさに抱いた俺は、そのまま歩道橋の床板へと倒れ込んだ。

 きゃ! と悲鳴を漏らす花凛と一緒に床板を転がる俺。肘を擦りむいたような感触がしたが、今は構っていられない。

「おい、大丈夫か!? どこか怪我は!?」

「とも、かず……?」

 ぼんやりとした声音で呟く花凛。状況がよくわかっていないのか、瞳が空を映すようにうつろだった。

 が、だんだんと頭の整理が付いてきたのか、花凛はハッとした顔で暴れ始めた。

「いやぁ! 離してぇっ!」

「この状況で離せるわけあるか! とりあえず落ちつけって!」

 俺の腕の中で抵抗せんと手足を振り回そうとする花凛に、こっちも絶対離してやるものかとばかりに全身全霊で後ろから羽交い締めにする。

「なんであんたがここにいるの! なんであたしを助けたりしたのよっ!」

「だから暴れるなって! なんでも何も、あんな思い詰めた顔で歩道橋の手すりに身を乗り出そうとしている奴がいたら、普通に助けに行くに決まってるだろうが!」

 それが幼馴染ともなれば、なおさらに。

 そんな俺の気持ちとは裏腹に、花凛は依然として拘束を解こうと暴れながら激昂する。

「あんたには関係ない事でしょう!? なによ、今までずっと他人みたいな振りしてたくせに!!」



 お前が最初に俺をシカトしたんじゃねぇか!



 ──という怒声を、寸前になってぐっと呑み込んだ。

 今ここで言い争ったところで火に油を注ぐだけだ。ただでさえ抑えるだけで手一杯だというのに、これ以上手が付けられなくなるのは得策ではない。

「いいから、なんか理由があるなら話してみろよ。俺でよかったら聞いてやるから」

 本当はすぐにでもどこか屋内にでも行って雨から逃れたいところではあるが、ここで花凛を解放したら何をやらかすかわからない以上、今は雨に打たれながら歩道橋の上で話を聞くしかない。

 それに、こんなずぶ濡れになった彼女を人目につかせるのもどうかとも思ったのだ。

 現に、いつもならばっちりセットしているゆるふわショートボブも、今やペタペタになっているし、制服だって雨に濡れて下着が透けてしまっている。こんな姿を知り合いに見られたいとは思わないだろう。

 幸い、今は真夏で暑い日々が続いているおかげか、雨に濡れても寒さは感じない。これなら、ちょっとくらい濡れていても風邪はひくまい。

 なんて考えている内に、だんだんと花凛の力が弱まってきた。俺の説得が効いたのか、はたまた単純に疲れたのかはわからないが、これ幸いとばかりに俺も拘束の力を少し柔めて花凛と正面に向き直った。

「で、本当に何があったんだよ? なんだってこんなバカげた事を……」

 項垂れる花凛の両肩に手を置きながら問いかける。

 やっぱりというかなんというか、俺の質問にすぐには答えなかった花凛だったが、やがて気持ちの整理が付いたのか、ボソッと囁くような発声で呟いた。



「……ふら、れたの」



「ふら、れた?」

 ああ、振られたって言ったのか。

「振られたって、それって彼氏にか?」

 こくり、と頷く花凛。

「それで歩道橋から飛び降りようとしたのか……。だからって何も死ぬ事はないだろ。いや、死ぬほど辛かったんだろうけどさ」

「だって……だってずっとあたしのそばにいてくれるって約束したのに、いきなり他に好きな子が出来たって言い出しちゃってさ。そんなの、もう別れるしかないじゃん。あたしなんていらないって言っているようなもんじゃん……!」

「いや、いらないとまでは言ってないだろ……」

「なんであんたにそんな事がわかるのよ! 会った事もないのに!」

「確かに会った事はないけどさ、他に好きな子ができたから別れを告げられたってだけの話だろ? たぶん向こうも申しわけなく思ってるんじゃないのか? そのへん、どうなんだ?」

「どうって言われても、ショックすぎてあんまりちゃんと話を聞いてなかったから……」

「じゃあ、相手が謝ったどうかも覚えてないのか?」

「うん……」

 と、悄然とした面持ちで花凛が首肯する。

 それだけ彼氏が好きだったという事なんだろうが、まさか振られたショックで歩道橋から飛び降りようとするくらい熱を上げていたとは……。

「本当に……本当に好きだったの。あたしにはあの人しかいなかった……あたしのすべてだったの……」

「そうか……」

「でも、振られちゃった……。あの人だけがあたしの居場所だったのに……。お父さんがいなくなって、お母さんも新しい恋人に夢中になっちゃって、もう家にもどこにも居場所なんてないのに……」

「………………」

 花凛の家の事情は、俺のお袋経由からそれとなく聞いてはいた。

 父親が中学に上がる前に蒸発して、それからは母親が働きながら花凛を養っていたそうだが、二年くらい前にガラの悪い男と付き合い出したらしく、色々と生活が荒れているらしい事も。

 だからだろう──学校では明るく振る舞っていた花凛だったが、ふとした拍子に寂しげな表情を見せる時があったのは。

 だが最近彼氏が出来たとかで、それからはずいぶん幸せそうな表情をするようになったと密かに安堵していたのだが、まさかこんな事になろうとは……。

「もうやだ。あたし、もう生きていたくない……。こんなどこにも居場所のない世界なんて、あたしには辛すぎるだけだよ……」

「花凛……そんな事言うなよ。生きてりゃきっと良い事があるとか無責任な事は言えねぇけど、それでもお前に生きていてほしいと思う奴がたくさん──」

「そんなの知らない! あたしは今辛いの! すごく寂しくて悲しいのっ!!」

「ちょ! だから暴れるなって!」

 と、再び歩道橋から飛び降りようとする花凛を力付くで押さえつける。

「離して! あたしが死んだって、あんたには関係ないでしょ!?」

「関係なくはねぇよ! 俺達、幼馴染だろ!?」

「ただの幼馴染じゃない! だから止めないで! あたしの事を誰も愛してくれない世界なんて、もう生きていたくないの!」

「っ! ああそうだよ! ただの幼馴染だよ!」

 手足を振り回す花凛を抱きしめて、俺は続ける。



「お前の事は心配で心配で、たまらなく心配でしょうがない、ただの幼馴染だよっ!!」 



 ピタっと、腕の中で花凛が動きを止めた。

 表情はわからないが、俺の胸の中で「心配……?」と花凛がオウム返しに呟く。

「そうだよ。お前の事が心配なんだ」

「なんで……? だってあたし達、あれからほとんど話さなくなったのに……」

「お前がいきなり『あんたの事なんて絶対好きにならないから』って言った時のやつな」

「あ、あれは、近所の子が揶揄ってきたから……」

「わかってるよ。だから俺を避けるようになったんだろ? 引っ込みが付かなくなって」

「うん……」

「それくらい、俺にだってわかってたよ。何度も仲直りしに行ったのに、結局全部シカトされたけどな」

「ごめん……今さらかもしれないけど」

「ははっ。ほんと今さらだなあ」

 けどな、とそこで言葉を止めて、俺は花凛の肩から手を離して正面に向き直った。



「俺はお前と友達を辞めたなんて、一度も思った事ねぇからな?」



「────」

 花凛の両目が見開く。

 大きな瞳に雨の粒が入るのも厭わずに。

「だから友達としてお前を見捨てられねぇよ。そういうわけで、死ぬのは諦めろ。友達の俺が許さん。ていうか、死のうしたって何度でも助けるから覚悟しやがれ」

「何それ……ちょっと勝手すぎない?」

「理不尽な事を言って勝手に離れていったお前に言われたくない。償いだと思って俺の言う事を聞け」

「これからは友達のために……智和のために生きろって言うの……?」

「ああ、そうだ。友達命令だ」

「そっかあ。あたし、死んじゃダメなのかあ……」

 言って、花凛は再び俺の胸に顔をうずめた。

「そっか。そっかあ……」

 花凛が何度も同じ言葉を繰り返す。そこはかとなく泣き出す直前の震えたような声で。

 そんな花凛の雨で濡れた頭を、俺はそっと撫でた。



 今ならきっと、この雨で涙も泣き声も共に隠せる事だろう。



 ○ ○ ○



 翌日の朝。

 俺はあくびを噛み殺しながら、いつもの通学路をひとりで歩いていた。

 結局、あれから花凛が泣き止むまでずっと雨に打たれ続けてしまったが、幸い、風邪を引く事もなく元気に登校する事ができた。

 まあ、お袋にはめちゃくちゃ叱られたけどな。

 しかも事情を話すわけにもいかんから、ずっと叱られっぱなしだったわけだが、別に後悔はしていない。こっちは人助けをしたわけだしな。

 で、当の花凛はというと、あれから家まで送ってやったあとは何も知らない。

 連絡先も何も交換していないから、どうしたって知りようがなかったのだ。

 とはいえ、さんざん泣いた後に割とすっきりしたような顔をしていたので、たぶん大丈夫だとは思う。

 少なくとも、またどこかで自殺するような心配はないだろう。

 本当は花凛の家まで迎えに行こうかと考えたが、さすがにそこまでやるとウザがられるだけかと思ってやめておいた。

 もしかしたら、あの雨で体調を崩してるかもしれんしな。お節介を焼くのもほどほどにせんと。

 そんなわけで、気怠い朝を悠長にのらりくらりと歩いていた、そんな時だった。



「とーもかず♡」

「ひょおっ!?」



 いきなり背中を力強く叩かれ、俺は思わず変な声を上げて飛び上がってしまった。

 一体誰だこんな朝から悪ふざけをするのは、と少しムッとしながら後ろを振り返ってみると──



「あはは! 『ひょおっ!?』って変な声〜」

「か、花凛……?」



 そこにいたのは我が幼馴染、いつものゆるふわショートボブとナチュラルメイクでばっちりきめた花凛だった。

「どうしたんだよ花凛。お前がひとりで登校するなんて珍しいじゃんか。いつもは友達連中と一緒に行ってんのに」

「今日はひとりで行きたい気分だったのー。たまにはいいかなあって」

「そうか」

 まあ、昨日はあんな事もあった後だしな。花凛の言う通り、ひとりになりたい時もあるのだろう。

 何にせよ、そういう事なら邪魔はすまい。

 そう思って、再び歩みを再開すると──

「なあ花凛」

「なあに智和」

「なんで俺の横に並ぶんだ?」

 そう訊ねた俺に、花凛はニコっと微笑んで、

「今さっき、智和と一緒に学校まで行きたい気分になったから☆」

「だから、なんで? 俺と一緒に通学なんて、小学一年生の頃くらいから一度もした事ねぇじゃん」

「別にいいじゃん。それとも、あたしと一緒に通学すると都合が悪い事でもあるの?」

「いや、そんな事はねぇけど……」

「じゃあ、いいよねー?」

 いい、のか?

 まあ、こいつがいいって言うなら別にいっか。

「ところで、さ……」

 訊いていいかどうかと若干逡巡しつつも、俺は頬を掻きながらそれとなく隣の花凛に切り出してみた。

「あれから、どうだった?」

「あれからって?」

「そりゃお前、歩道橋の件だよ」

「あー、あれねー……」

 と少し気まずそうに目線を逸らしつつ、花凛は言葉を紡いだ。

「あれからまた自分の部屋でいっぱい泣いたけど、泣いたらだいぶスッキリしてさー。ほら、もうこんなに元気元気〜」

「そうか」

「まあ、ぶっちゃけ空元気だけど」

 言って、微苦笑する花凛。

「……まあ、たまには落ち込む日だってあるよな」

 それも彼氏に振られたとなれば、なおさらに。

 とまでは、さすがに言わなかった。これ以上、下手に花凛の傷口を抉るような真似はしたくないしな。

「うん。あ、でも心配はしないでね? もう自殺しようなんて思ってないから。むしろ、今度こそ良い男をゲットしてやるってやる気に満ち溢れてるから!」

「そっか。そりゃ安心したよ」

「それでっていうか、うん。智和に言いたい事があってさ」

「? なんだよ、そんな改まって」

 こんなしおらしい花凛は初めて見るなと内心驚いていると、花凛はまっすぐ俺を見つめながら続けた。

「あたし、智和にひどい事を言った事があるでしょ? それなのにあたしを自殺から助けてくれて、本当に嬉しかった。嫌われても仕方ないのに、こんなあたしを心から心配してくれる人が近くにいるんだってわかったら、すごく安心できた。友達はたくさんいるけど、智和だけがあたしをちゃんと見てくれた。あたしがこの世界に必要だって言ってくれた。だから──」

 そこまで言って。

 花凛は今まで見た事ないくらい屈託なく破顔した。



「助けてくれて、ありがと!」



 その言葉に。

 まるで向日葵が咲いたような笑顔を見せる花凛に、俺はぶっきらぼうに「おう」とだけ返した。

「あ、智和照れてる〜。可愛い〜」

「て、照れてねぇし。全然照れてねぇし」

 それより、と強引に話を変えて、俺は自分の右腕を見た。



「なんでお前、さっきから俺の腕に抱きついてんの?」



 そうなのだ。

 なぜかは知らんがこいつ、話していた最中にさりげなく俺の腕に抱きついてきたのである。自然過ぎてうっかり反応が遅れてしまったくらいに。

「んー。なんとなく?」

「なんとなくってなんだよ?」

「なんとなくはなんとなくだよ」

「ていうかさ、もしかしてお前、俺の事好きなの?」

 でなきゃ、この状況の説明がつかん。

「別に好きじゃないよ?」

「好きじゃないんかい」

 だったらなんで抱きついてんの?

 え? 最近の女子高生は好きでもない男に抱きつくのが流行りなの? 何それ怖ぁ。女子高生怖ぁ。

「つーか、お前はいいの? けっこう通り掛かりの人に注目されてんぞ?」

「別にこのまま見せつけたらいいんじゃない?」

「見せつけたらって、お前なあ……」

「それとも、智和はイヤなの?」

「イヤじゃないけど……」

「あたしのおっぱいを堪能できて嬉しくないの?」

「嬉しいけどぉ」

 あ、ついうっかり本音が。

 そんな俺を見て、花凛がクスクスと笑い出した。

 このやろう、純情な男子高校生を揶揄いやがって。

 でも、まあ。

 この様子なら、もう心配はいらないだろう。

 仮にまた自殺しようとしても、俺が全力で止めるだけだしな。

 それこそどんな時でも、どこへ行ったとしても。

 しかし、それはそれとして──

「なあ花凛。もう一度訊くけど、本当に俺の事が好きなわけじゃないんだよな?」

「本当に好きじゃないよ?」

「けどさあ、好きでもない男にこんな事するかあ?」

「するよ? 今時の女子高生は週一でするよ?」

「マ? 女子高生めっちゃ怖ぁ」

「うん。だから、うっかりあたし以外の女に惚れたりしないでね」

「おう。ん? あたし以外の女? やっぱお前、俺の事が好きなんじゃね?」

「だから好きじゃないってば」

 ううむ。ここまで否定するって事は、マジで好きじゃないって事か? でもなあ、なんか納得がいかん。

 なんて考え込んでいたせいだろう、歩きながらボソッと呟いた花凛の言葉を、俺は聞き逃してしまった。



「だって『好き』じゃなくて、『大好き』な方だもん♡」



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