18話 魔石リオン

えぇ……。

 情報にあったとはいえまじでこんな雑魚だけなんだ。

 まぁ、強いのがいるよりましとはいえ拍子抜けな部分もある。

 

 明らかに落胆したような表情で敵を貫いたアベルがとっとと調べて帰ると言いながら壁を調べ始めた。

 まぁ、俺としても魔石が手に入ればそれでいいわけだしボスフロアに用はない。

 研究所の中にいるみんなを呼び出してさっさと終わらせよう。

 

 しばらく、ダンジョンを調べているとシルバーがボスフロアの床にもろくなっている部分を見つけた。

 魔法で吹き飛ばすと下に続く階段が出てきた。

「ここっぽいな」

「そんじゃ、さっさと終わらせよ」


 地下に着いてみればいつも通りの宝箱と上に続く階段があった。

「とりあえず宝箱からみとくか」

「いいの入ってる?」

「いや、ダメゴブリンとかが持ってるナイフだ」

「いらな、どうすんのそれ」

「とりあえず保管庫に入れとく」


 宝箱を見たからこれで終わり、とは行かない!

 ここまでの階層はくまなく調べたんだもう魔石があるとしたらここしかない。

 この階層は狭いし二人で調べたが割とすぐに魔石が見つかった。


「あった、あった」

「ん、そんじゃ帰るよ」

『待ってください〜!』


 とっとと保管庫にしまって帰ろうとすると持っている魔石から声が聞こえてくる。

 

「え!何、魔石って喋るの」

「ええ?そんなことある?」

 俺が驚き、アベルが疑問の声を上げると魔石は命乞いを始めた。


『う、うう、ボク悪いことしてません、助けてぇ〜』

 な、なんか悪いことしてる気分になってきた。

 けどなぁ、魔石に意思があるならAIは作らないで魔法の補助プログラムだけでいいし、正直欲しいんだよなぁ。


「えっと、魔石?でいいのか、とりあえず落ち着いてくれ」

「大人しくしないと氷漬けだよ」

『ピエッ』


 おい、脅すなアベル!

 まぁとりあえず静かになったし正体が知りたい。

「えっと、俺はブランク、ある理由でダンジョンの魔石が欲しくって来たんだけど君の正体を聞かせてもらっていいかな」

 便利そうとはいえ、敵でもないのに無理やり改造はちょっとあれだしな。


『は、はいボクはリオン、元人間です』

「は?」

『ひえ!えっとボクのユニークマジックはあなたはわたしドッペルゲンガーと言って相手に憑依できるものなんですが』

「あぁ、なるほどそのままを使ったはいいけど戻れなくなったと」

『はいぃ、知らなかったんですがボクのユニークマジック、一回きりの使い切りだったみたいで』

 それはまた、なんていうか……。

「ドジ」

『ひぅ!』

 アベルさん!言い過ぎさっきから!


『そ、それでそちらが言っていた魔石が欲しいというのは……』

「ああ、それなんだが……」

 色々起こりすぎで面倒くさくなってきた俺は魔石に全部話すことにした。


『ぜ、ぜひボクを使ってください!』

「お、おぉ予想してたけどすごい反応だな」

「ちょっと気持ち悪い」

「言い過ぎじゃないのかもしれない」


 ユニークマジックというのは発現するのに様々なルートがある。

 遺伝によるものと誰かから引き継ぐものそして、意思や願望によるものだ。


 アベルの氷は遺伝で出現したらしいが、俺の研究所なんかは意思によるものだ。

 原作ブランクとは別人とはいえ、知識欲は人一倍あるし、研究所が欲しいとはずっと思っていた。


 この反応を見るところ、この目の前でデヘデヘ言っている魔石は自分の意思や願望でユニークマジックを出現させたらしい。


『いいですのねぇ、魔獣!かっこよくって、でも愛嬌があって!もう最高です!』

「お、おう、研究所に入れたらやばそうだな」

「殺されるよ、この魔石」

「さすがにそこまではしないだろ……多分」


『あ、という訳でこれからよろしくお願いします』

「「……よろしく」」


『はわぁ〜!見たことない魔獣がいっぱい!』

 やばい反応を見せているリオンの魔石をコンピューターに繋ぐと画面に赤い髪のメガネの女の子が映った。


「へ?なんですこれ?」

「気にしなくていいよ」

 マジかよ、女の子だったのかよ。

 身長も150センチもないくらいでめちゃくちゃちっちゃい。

 

「まじ、リオンって何歳なの?」

「歳ですか?十二歳ですよ」

 十二であれ!なんていうかある意味、将来有望って言うやつなのか?


 少し落ち着いたようでコンピューター内に入っている魔獣の記録を読みながらくつろぎ始めていた。

 やばいのが仲間になったがある意味では良かったのかもしれない。


 俺や、アベル以上に魔獣の知識がある上にユニークマジックが覚醒するほどの意思もある。

 ワイバーンに移植するのはまだだけどかなり戦力になりそうだ。


「はぁ〜、いいものを見せてもらいました!私が移植されるワイバーンも明らかに特別な存在!今から楽しみです!」

「人間じゃなくなるって言うのに随分と乗り気じゃん」

「へ?魂が人間なら人化できますよ」

 ん?なんだって?


「ち、ちょっと待ってくれ!どういうことだそれ!」

「そのままの意味ですよ、今までもボクと似たようなユニークマジックを持った人間がいましたけどその人たちの文献によれば魂が人ならばユニークマジックとは別に人化の魔法が使えるよいにやるって」

 ま、マジか。

 これは大きすぎる収穫だ。

 強いとはいえ、あそこまで大きいと何かと不便があると思っていたけど人化できるなら話は別だ。

 魂が人ならばということはシルバー達はできないというのが残念だが。


「あ、それより、ワイバーンの改造なんですがオークの細胞を取り込むのがいいですよ」

 む、考えてなかったがそれもいいかもしれない。 

 この世界のオークは細マッチョもそこそこいる。

 しかも、その筋肉は人の何倍も強い。

 その理由がピンク筋と呼ばれるものによるものだ。

 人体には白筋と赤筋と呼ばれる二つの筋肉がある。

 白筋は瞬発力、つまり短距離走なんかに有利で赤筋は持久力がある。

 そしてその中間に位置するのがピンク筋。

 人体にも含まれているがそれはそかふたつに比べるとかなり少量だ。


 しかし、オークの筋肉の大半はそのピンク筋で構成されている。

 何とかこのピンク筋を強化出来れば生身の部分の頑丈性も上がるし長時間、マックスの状態で動けるようになる。


 何より、今後人間の改造を行う上で安全性と運動能力が跳ね上がる。

 ここまでメリットがあるなら鉱石を手に入れたら次はオークだな。


「オークの件はわかったけど先に鉱石だな」

「あぁ、オリハルコンはいいですけどミスリルは高いですよ」

「やっぱりか……どうしたものか」

「考えたんだけどさぁ……オリハルコンで掘ればいいんじゃない?」

 ……はっ!!

 な、なんで今まで思いつかなかったんだ!

 そうだよあの脳筋鉱石のオリハルコンなら物理で掘り出せるじゃん!


「ナイス!アベル!」

「フフン」


 とりあえずミスリルの問題は解決したということでルコアに帰ってきた。


「ギルドマスター、戻りましたよ」

「早く出てこぉい」


「おぉ、おふたりともよくご無事で!」

「ご無事も何も雑魚ばっかだったけど」

「依頼でしたがダンジョンをクリアしたのはいいのですが、探している最中に魔石を破壊してしまいまして……申し訳ございません」

「いえいえ!ダンジョンのひとつ程度ならなんの問題もありません、むしろ胃痛の種だったダンジョン消していただきありがとうございます」 


「それでおふたりにお伝えしたいことがありまして」

「なんでしょう?」

「この街で鉱山をの管理を行うルース公爵家から許可が降りましたよ」

「おお!」

「あの皇帝様やゾルファンと契約しているのなら安心だ挨拶はいいから好きなだけ持っていけとも仰っていました」

「それは!ありがたい限りです!」


 予想外に話が上手く進んだ夜みんなが訓練したり寝ている中一人鉱山に繋がる道を歩き続けるのであった。

 

 ……ぐすん。

  

 

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