17話 ルコアの街

ティアナールの最南端にある街ルコア。

 鉱山が数多く存在しているのに加えて天然の魔石が大量に取れる街だ。

 そしてそこにあるのがファンタジーではおなじみのミスリルやオリハルコンだ。


 こいつらも広義的には魔石に入るが世間的には鉱石として扱われている。

 その理由がその硬さにあるのが。


 ミスリルはかなりの軽さで子供でも簡単に扱えるほどだ。

 しかし、魔石としての副作用はしっかりある。

 魔法を弾くのだ。

 実際この特性はかなり有力だといえる。


 そして次にオリハルコン。

 こちらも有名なファンタジー金属だ。


 こちらは副作用で頑丈になると言う脳筋っぷりを発揮してくれる魔石でその頑丈さは作中でも屈指の硬さを見せている。


 これらの魔石はそれぞれ別々に使っても強力だが合わせることでより強くなる。

 俗に言う合金というやつだ。


 原作ではなかったこいつらの合金は映画で登場した。

 最強の武器を作るのにこの二つを合わせるという話だったはずだ。

 実際四章と五章の間の話として出てきた敵を切り裂いていたためかなりの強力な金属になるのだろう。


 更にルコアの近くには小さなダンジョンがいくつかある。

 スライムやゴブリンなんかのザコ敵しかいないようなダンジョンで最悪のいくつか消えたとしても問題ないだろう。


「ルコアに行くのはいいんだけどさぁ鉱石どうすんの」

「問題はそこなんだよなぁ」


 今アベルが言ったことからわかるようにミスリルやオリハルコンは硬い。

 オリハルコンの方は魔法でどうにかできたとしてもミスリルは物理でいくしかない。

 しかし、今ここにいる奴らは揃いも揃って魔法戦士、物理なんてからっきしだ。


「最悪、ミスリルの方は買う」

「えぇ……まじ?めっちゃ高いよあれ」

 だよなぁ……。

 映画でも高すぎて買えないから採取に行ったくらいだし百年も前の今じゃその値段は計り知れない。

 けどミスリルは欲しいし依頼受けくって金を稼ぐしかない。


「まぁいいやそれよりさ気になってたんだけど……ここ何?」

「……説明してなかったな」


 何となく見せてたけど説明してなかった。

 ……その割にはこいつ、馴染みすぎじゃね?


 とりあえず研究所のことと、俺とアダプト以外は改造済みなことを話した。

「へぇ、便利な魔法じゃん」

「アベルのも大概だと思うけど」


「しっかし、改造ねぇ面白そうじゃん」

「……お前、まさか」

「ねぇ、私もやってよ」


 やっぱりか……。

 人の改造なんてやった事ないけどヒントはある。

 原作でブランクが作った魔人達だ。

 やってることは魔獣でやったことを人でやるだけなんだが、そのステータスにはかなりの差が生まれる。

 俺がシルバーにやった改造を人を母体でやればそれこそ500を超える可能性だって出てくる。

 まぁ、それはあくまで数値の問題だからスピードと爪があるシルバーだって十分強いのだが。


「あ、でもまだまって、もうちょい強いの倒してからね」

「……言っておくが、ユニークマジックの魔法使用不能を打ち消せるかはわかんないぞ」

「あぁ、それはいいよ、今更ほかの魔法練習するとかめんどくさいし」


 そこまで言うと訓練してくると言ってシルバー達がいる訓練室に向かっていた。

 ……めんどくさいとか言っておきながら訓練はするんだな。


「ルコアに着きましたよ」

「ありがとうございます」

「いえ、またのご利用をお待ちしております」


 金も手に入ったということで馬車を借りてルコアまでやってきた。

 ……最初はシルバーに頼んだが爪を見せつけられたので諦めた。


 ルコアの街はマーファ程バハムートの谷に近くないのが理由なのかあちらほどステータスが高くない。

 しかし、数値で図れない細かい部分ここで言うと筋力はティアナールでも飛び抜けている。


 好物の採取を行うには鉱山を管理している貴族の許可がいる。

 仮にもSランク二人、更にアベルは皇帝と契約している為断られることはないだろう。


「せっかく、訓練してたのになんなの」

「挨拶だアホ、鉱石取りに来たっていっただろ」

 とはいえさすがにアポ無しで突撃する訳には行かないので今日のところはギルドに顔出しするだけだが。


「すいません、ギルドマスターはいらしゃいますでしょうか」

「なるはやでねぇ」

 こいつ、礼儀のれの字も知らないな。


 俺はともかく剣鬼アベルは有名なので焦ったように職員が走り出してギルマスを呼びに行った。


「お待たせして申し訳ありません!ルコアのギルドマスターをしているアトルと申します!」

 出てきたのは中年の少しメタボのおっさんだった。

 特段特長的なところもないし人間の様だ。


「あ、いえこちらこそいきなり来て申し訳ありません」

「いえいえ!それより本日はどのようなご要件で?」

「それなんですが……」

 俺は貴族にあって鉱石の採取許可が欲しいことを説明した。

 

「なるほどわかりました、今週中には結果を伝えられると思います」

「わかりました、ありがとうございます」

「ふぅ……唐突で申し訳ないのですがご依頼を受けていただけませんか?」


 ギルマスは先程とは打って変わって困り果てたような顔でたずねてきた。

「依頼……ですか」

「いいよ、どんなのか説明して」

 ちょ、アベルさん、さすがにいきなり受けるのはあれじゃないですか!


「おお!ありがたい、その依頼というのもダンジョンの捜査をお願いしたいのです」

「ダンジョンの捜査?そのくらいならこの街にいる冒険者でもどうにか出来そうだけど」

「はい、ダンジョン自体は大したことはないのですがクリア後の一階層が出てこないのです」

「なるほど……」


 クリア後の階層が出てこない?

 ありえないだろ。

 けどSランク二人に頼んできたということは嘘でも無さそうだ。

 そうなれば可能性として一番高いのは……

「クリアできてないね、それ」


「はい、おそらくはそうなのでしょう」

「けど、クリアしたって言ってるってことは下に続く階段もないんでしょ」

「はい……困ったことにどうすればいいかわからずじまいで」

 

 まぁ、あれだろう魔石の回避機能の延長線上にあるものの一つだろう。

 しかし、原作にもなかったようなことができる魔石となればワイバーンサイボーグの心臓として最適だろう。


「わかりました、詳しい場所を教えていただいても?」

「は、はい!詳しいことは記録してあるのでその紙を見ていただければ!」


 渡された紙を確認してみると、ここから十キロくらいの場所にあるダンジョンで問題が起こっているようだ。

 曰く、クリア後の階層が出現しない。

 曰く、ボスフロアの敵がすごく弱い。

 曰く……曰く……。


 色々異変は起きているらしいが難しくなっているという訳でも無さそうだ。

 うむ、最悪のボスフロアを吹き飛ばして見れば何かわかるだろと研究者らしくない解決方法を掲げながらダンジョンに向かった。


 しばらく歩いていれば書かれた絵と同じく形をしたダンジョンについた。

 とりあえず、歩きたくないと研究所に戻ったアベルを呼び出しダンジョンに突入した。


 ここのダンジョンは全部で三階層でできており、一、二階層はそれこそ雑魚しかいない。

 そのため、俺もアベルも特訓の場所として使っておりゴブリンやスライムにはオーバーキルの攻撃が飛び交っていた。


 アベルの後ろには沢山の氷の剣が飛んでおりそれに貫かれた敵は内側から凍りついている。

「アベルのそれは新技か?」

「そ、氷の剣は前から使ってたけどそれを飛ばして使ってんの」

「なかなか強いなそれ、名前とかあんの?」

「んん?じゃあ氷剣鬼こおりおにで」

「いいじゃん」


 どうやら前々から考えていたのを訓練室で使いこなしたようだ。

 こりゃ行雲流水を使えるようになったら俺が負けるな。

 人間でも鍛えれば使えるようなるのはロインでわかっているしこれが終わったら教えるか。


 それじゃ俺も頑張りますか。

 体の周りに発生させた風に鋭い石を乗せ加速させて、敵を貫いていく。

 師匠との戦いの時に不意打ちで使ったあれの簡易バージョンだ。


 そんな風に新技の実験をしながら進んでいると直ぐにボスフロアについた。

 ボスフロアに着くとそこには……

 ゴブリン三体とスライムが十匹が寝そべっていた。

 


 

 

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