16話 パーティ

「はぁぁぁぁぁ……きっつ」

「ほんとやばかったぁ、あんたいなかったら最初は私一人だったんだよこれ」

 何それ鬼畜すぎ。

 寄っかかられてるシルバーは迷惑そうな顔をしているが今は勘弁して欲しい。


 十分程休んだ後にワイバーンの死体を回収して一旦研究所に戻る。

……さすがに今から街に戻るのは無理すぎる。


 さすがのみんなも今日は疲れたらしく大人しくホテルに戻っていた。

 ちゃっかり後ろから着いてきたアベルに剣を返してもらうと中央部屋のソファで寝始めてしまった。


 アベルが元々持っていた剣は折れてしまったようで机の上に置いてある。

 使えるかはわかんないけど貰っておくか。


 一晩休めば案外回復するものでシルバーに乗せてもらってマーファに戻っていく。

 アベルの奴はここで待っていると言ってまだソファで寝てやがる。


「おぉい!お二人が戻ったぞ!」

 あのまま二日進み続けて門が見えてくるとアベルを呼び出して二人で街に戻った。

 いつぞやの騎士が迎えてくれて疲れただろうとギルドまで馬車で送ってくれた。


「戻りましたよギルマス」

「おぉ、兄ちゃん早かったじゃねぇの」

 ギルドに入れば直ぐにギルマスが待っていて、今回の事の説明を要求される。


 大人しく今回のことを話すとギルマスは驚いた反応を見せた。

「でけぇ白色ワイバーンに、共食いだとぉ!とんでもなくやべぇ状態だったんじゃねぇか」

「そうですね、実際二人で行かなきゃあのデカイのは倒せなかったと思いますよ」

「ほんとに皇帝には後で文句言ってやる」

 アベルさんやそれはちょっとヤバいのちゃいます?


 俺たちが返ってきた報告を受けてゾルファン公爵が扉から入ってきた。

「おぉ、ブランク、それに剣鬼アベルも今回の任務はよくやってくれたな」

 入ってきた公爵にも同じことを説明するとやはり驚いたようで周りの従者に持たせていた魔石を急いで使っていた。

 ?なんだあの魔石を?

 パッと見俺が貰った通信用の魔石と同じようなものにみえるがあの魔石はでかいしキレイでどう見ても丁寧に扱われている。


 しばらく魔石に向かって話しているといきなり俺たちにその魔石を向けてきた。

「この魔石は今皇帝様と繋がっている間違えても粗相をするなよ」

 小声で囁かれた言葉に体が固くなる。


 まじかよ、勘弁してくれよ。

 皇帝と話なんかせずにとっとと処理したかったのにいきなり話をすることになってしまった。

 まぁ、リモートなのが救いだがそれでもめんどくさい。


「繋がっているようだな、私はアダーク・ティアナールである」

「初めまして皇帝陛下、私はブランク・アン・アルームと申します」

「アベルだけどさぁ、聞いてた内容と任務が違いすぎるんだけどどうなってんの」

 ……ア、アベルー?!

 何考えてるかわかんないと思ってたけどまじで何考えてんだよお前!

 相手はこの国のトップ俺たちの首なんて簡単に切り落とせるんだぞ!


「いや、それに関しては申し訳なかった。まさか我が国

 そこまでの脅威が迫っていただなんて」

「ほんとだよ、報酬上乗せは当然してくれるんだろうね」

「それは当然だ、元は金貨百枚を渡そうと思っていたが白銀貨一枚にしようと思っている」

 金貨や白銀貨というのはこの世界の共通の金のことだ。

 銅貨→銀貨→金貨→白銀貨の順で価値が上がる。

 日本円でいえば百円→千円→一万円→一千万円となる。

 本来なら世界で金の単位が同じだなんてことは起きないと思うがそこは漫画の世界ということで簡略化されている。


 そして白銀貨一枚というのは価値でいえば金貨千枚。

 皇帝は報酬を十倍にしてくれるようだ。

 白銀貨一枚は日本円でいえば一千万円程の価値になる。

 冒険者の相場が銀貨一枚から十枚ほどと考えると一回でこれだけ手に入るのならかなりの破格と言えるだろう。


「まぁ、そんだけくれるならいいけど今度やったら国に攻め込むからね」

「うむ、重く受け止めよう」

 さっきからすげぇなアベル。

 皇帝も皇帝でずっと無礼を許してくれるのはなんでだよ。

 そんなに反省してんの?


「あの、アベルあんな感じだけど大丈夫なんですか?」

 あんまりにもあんまりな対応をしているアベルが気になって横にいる公爵に聞いてみた。

「ん?あぁ、剣鬼アベルはアダーク皇帝と契約していることもあってこの程度なら見逃して貰えるぞ」

 皇帝と契約?!

 なんかもう色々規格外だなアベル。


そのままアベルが話を進めてくれて俺は特に話さないまま皇帝との話は終わった。

「はぁ、それでこれからどうすんの」

「?とりあえず食料集めて旅続けるかな」

「そ、そんじゃ荷造りしちゃうから明日ここで待ってて」


 ん?!

 ちょっと待ってくれ、あいつこのまま俺についてくるつもり?!


「ち、ちょっと待ってくれ、お前俺に着いてくる気か?」

「当たり前じゃん」


 えぇ……。

 いや、ついてきてくれるのは嬉しいけどなんの相談なしで決めてんじゃん。


「はぁ……まあいいけど条件はあるぞ」

「剣を教えることでしょ、あんたの強さなら簡単には死なないだろうし教えてあげるよ」

 こ、こいつ!

 スティと同じ感覚派の気配がする!

 まぁ、良く考えればこの若さであの体の動きができるんだからまじの天才なんだろう。


「なんだ、兄ちゃん、アベルとパーティ組むのか?」

「あぁ……そうなりますね」

「手続きはそっちでお願いね」


「おいおい、まぁSランクだからカードがあれば手続きはできるからいいんだけどよ」

 いいんだ。

 それならこっちとしても面倒だしやっといてくれるならありがたい。

「そんじゃ、必要な分だけ今質問させてもらうぞ」

「ん、さっさとして」


「……パーティ名を決めてくれ」

「だってさブランク」

「はぁ?!俺!」


 こいつ!まじで!

 えぇ……パーティ名?

 さすがにいきなりは思いつかないって。

 ……しょうがない


「進化の先……」

「進化の先?」

「まぁほら、私たち進化したように強いですから」

「おいおい、まぁいい進化の先。そんじゃ手続きしとくからカード渡せ」


 進化の先というのは原作でブランクよく言っていた言葉で代名詞と言ってもいい。

 これから色んな仲間ができるだろうしその仲間も進化といっていい変化があるだろう。

 なかなか、いい言葉なのではないだろうか。


 やることが終わり、研究所に戻ってきた。

 これからやるべき事はあのワイバーンをどうにかすることだな。

 覚醒済み、プラスしてあの大きさは単純に武器になる。

 かと言って蘇生するのはリスクがあるし、何よりあの強さなら従わないだろう。


 唯一手段があるとすればサイボーグ化だ。

 死体の防腐処理をして機械を取り付けてAIを搭載する。

 詰まるところ目標にしていた機械兵器だ。

 ……あの強さは正直欲しい。

 俺が改造すればあのゴブリンナイトを超えるかもしれない。

 

「うっし、目標は決まった」

「ん?どしたのブランク」

 元々いたと言うばかりにソファで寝っ転がっているアベルが声をかけてるく。


「おう、あのワイバーンを改造してサイボーグにする」

「……あいつを?大丈夫なの?」

「魂がないなら死体は動かない。そこを機械で補助して仲間にする」

「ふぅん……そんなんできるんだ」

「俺ならな」

「生意気」

「ブーメランだぞ」


 そうなれば必要なのは機械部品を作るための鉱石。

 AIに関して言えば研究所のコンピューターで作ればいい。

 

 しかし、鉱石か……。

 とりあえずコアにする部分はダンジョンの魔石が望ましい。

 あの回避性能は弱点となる部分には欲しい。

 

 他の部分は……やっぱりミスリルオリハルコンなんかか。

 そうなれば

「よし、次はティアナールの最南端、ルコアを目指す」

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