15話 VSワイバーン
あれから二日シルバーに走り続けてもらった。
夜は研究所で休憩してもらっているとはいえまっすぐ進むだけの作業は訓練よりも辛いものがあったらしい。
しかし、その甲斐あって、バハムートの谷まであとちょっとだ。
もう一キロも歩けばバハムートの谷に着くこともあり、少しづつワイバーンが飛んでいるのが見えてくる。
「思ったより少ないですね」
「前は……もっといたし、やっぱりなんかいるのかね」
どうやらアベルは前にも来たことがあるらしい。
そして、あの伝説はこの場で起きるだろう。
本来百なんて数じゃ収まりが効かないはずのワイバーンが百匹しか襲ってこなかった。
血が薄いとはいえ祖先にはドラゴンがいるはずのワイバーン、本来なら百匹はかなりの数だが原作ではこの程度の数ではなかった。
そうなると考えられるのはより強力な存在が谷を乗っ取ったか、共食いが始まったかだ。
……こんなことになるなら機械兵器の開発もやっておけば良かったな。
原作ブランクは様々な兵器を作っていたがその中には当然生物では無い機械の物もあった。
実際、この世界でドローンのようなものが出来れば偵察は簡単になるしもしかしたら遠くから細胞を採取してくれるような機械も出来るかもしれない。
まぁ、ないものねだりをしても仕方がないとっととバハムートの谷に行って何が起きているかを確認するしかない。
アベルも同じ感想なようで静かに谷の方向へ進んでいる。
抜き足差し足忍び足で進んでいると崖にたどり着いた。
中にはおおよそ百匹程のワイバーンが巨大なワイバーンの前に様々な死体を並べている。
その中でも突出して多いのが同じワイバーンの死体であり、半分以上はそうなのではないかというくらいだ。
しかし、それ以上に俺が目を話せずにいたのは巨大なワイバーンだけが白色の鱗をまとっていたことだ。
ゴブリンナイトよりも圧倒的に強いワイバーン。
そんなワイバーンを跪かせる異質な存在が白色とはいえ覚醒済みといのはかなりまずい。
何より厄介なのはここに来るまでの間ワイバーン以外に魔獣を見なかったことだ。
あいつの覚醒の原因はどう見てもあの死体だろう。
未だに白色だということは効率は良くないにせよ覚醒に必要な何かを摂取できているのだろう。
だが、その死体を用意できなくなり同族を狙い始めた。
そしてその同族もおおよそ百匹と言えるまでに減少。
そうなれば次の狩場は当然より多くの生き物が集まる場所、つまり人間の街だ。
ここに一番近い街はマーファだ。
まだそんなに交流もないし、見捨てることもできる。
しかし、原作のブランクの様にならないと決めた以上助けられる命は助けたい。
いつかそれで命の選択をしないといけないとしても今は助けるのが最善だ。
「アベル、ちょっと取り繕ってる余裕も無さそうだし素の状態だけど聞いて、あのデカイをしばらく足止めできない?」
「……なに?逃げるってこと?」
そこで明らかに不機嫌になるあたりアベルもこいつらを野放しにすればどうなるかわかっているらしい。
「違う、俺と俺の仲間で他のを殺しきる。そうしたら加勢するからそれまで頼む」
「はぁ……了解、とっととしてね長くは持たないと思うし」
作戦も決まったということで直ぐに行動に移る。
まずあいつは全員飛べる以上煙幕なんかは全く意味が無い。
そうなる一撃でなるべくもっていきたい。
研究所の中で待機してもらっている仲間たち全員を呼び出し持てる限りの広範囲魔法を撃ってもらう。
……まぁ全員火炎弾になるんだけど。
着弾と同時に半数のワイバーンが動かなくなり残りがこちらに飛んでくる。
それと同時にこの場にいる全員が谷に飛び降りる。
空を飛べるワイバーンからすれば谷に落ちた獲物は格好の餌だ。
しかし、それは谷を出れたらの話。
崖を走ってる先に降りたアベルは巨大なワイバーンに切りかかる。
他のワイバーンもそれに気が付きアベルに襲いかかるが俺たちがそのワイバーンを落としていく。
元々木を足場にしていたようなシルバーは壁を蹴りながら一撃でワイバーンを屠っていく。
それを見てケル、ベロ、スーもワイバーンを踏みつけながら地面に叩きつけている。
当然銀子もあの火炎砲でワイバーンの体に穴を開けていっている。
残念ながらまだアダプトは危うい所もあるため俺の服の中に隠れて見学だ。
もしかしたらなんかの耐性がつくかもだしね。
そして俺は昔やった様に水を噴射して空中から魔法を放っていく。
風で加速した石の弾を頭にぶつければ一撃でワイバーンは地に落ちていく。
そんな調子でワイバーンを倒しきったと同時にアベルがこちらに逃げてきた。
「ちょっと……まだなの」
「今終わったけど、やっぱりヤバそうか?」
「やばいなんてレベルじゃない、下手すりゃ全員死ぬよ」
……どうやら本格的に気合いを入れないと行けないらしい。
追いかけてきたらしい巨大なワイバーンは全身に血を滲ませていたがまだまだ元気と言った様子だった。
「まぁ……あんたが来たしここからは本気で行くよ」
「出来れば最初っからやっといて欲しかったけどね」
「……魔力切れを起こしたらやばいでしょ」
ん?魔力切れ?
そんなふうに疑問を持つとその答えは直ぐに返ってきた。
目の前の空気が一気に冷えたと思ったら氷でできた剣が大量に出現した。
「これは私のユニークマジック、
ま、まじかよ!
あの剣鬼なんて呼ばれてる奴が氷使い!
しかし、納得の行く部分もある。
やっぱり
そんな中で剣を極めるだなんてどうなってんだと思ったけどま氷以外使えないなら魔法より物理を極めるようになるか。
「とっとと行くよ」
「了解」
アベルが出した剣がワイバーンに当たるが刺さる前に砕けてしまう。
しかし、俺たちの援護はそうはいかない。
炎斬撃や火炎砲を喰らえばさすがに傷がつく。
そうなれば当然ワイバーンの標的は傷をつけてきた相手になる。
だが、当然俺たちだって威力の高い技を持っている。
圧縮火炎弾を風の大砲で飛ばすいつもの技を当てて怯んだところをシルバーが追い討ち炎の牙で噛み付く。
一連の攻撃を繰り返しながら体力を削っていくが大きなダメージにはなっていない。
しかし、何度も繰り返せば当然ワイバーンも苦しくなってくる。
「このまま行けば行けそうだな」
「うん……めんどくさいしとっととやっちゃおう」
そのままトドメを刺そうとした俺たちだったがワイバーンが羽を大きくばたつかせ始める。
こんな狭いとこでそんなことしたら谷が崩れるぞ!
そんなことを考えたすぐあとに谷が崩れ始める。
ワイバーンはその巨大な故か岩がぶつかってもビクともしていないが俺たちはそうは行かない。
この崩れる足場の中で全員が脱出?!
無理に決まってる!
焦る気持ちが出てくるがシルバーが他のみんなを背中に乗せて走ってきた。
シルバーは全員を乗せて上まで上がる気のようだ。
しかし、上にはワイバーンいる以上危険すぎる。
しかし、シルバーのおかげで解決策がうかんだ。
シルバーに崖を登って貰うのは変わらないが上に乗るのは俺だけだ。
他のみんなには研究所に入っていてもらう。
急いで研究所を発動し中に入ってもらう。
そうすれば直ぐにシルバーは走り出す。
当然危うい足場もあるが強くなったシルバーにとっては大した難所でもない。
上に上がれば巨大な火炎弾を作っているワイバーンが目に入る。
しかし、それは命取りになる。
植物のツルで口を固定して研究所の中からみんなを呼び戻す。
抵抗するワイバーンにあの黒いゴブリンナイトを屠った技を放つ。
ツタを焼き付きしその技を回避するワイバーンだが二の矢までは避けられない。
あの黒い剣を握ったアベルによって首を切り落とされていく。
奇しくも伝説の一場面をみた俺とその伝説となったアベルは疲れた体を引きずりながらハイタッチをしてシルバーに寄りかかった。
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