7話 改造①
自分を改造して欲しいってどゆこと?
シルバーの突然の提案に困惑しているとシルバーは説明してくれた。
俺に圧倒的な差を見せつけられ自分の弱さを知ったのと持ち前の頭脳でこれから先俺より強い者を相手するということを悟ったらしい。
うーん……シルバーを改造か。
生きたままでの改造は絶対に失敗できない。
そうなると必然的に時間がかかってしまう。
しかし、シルバーは元の状態でもかなり強く、もし改造が成功すれば今の俺を超える力も手に入れられるだろう。
「よし……わかった、シルバーお前の提案をのもう」
シルバーを改造出来ればこれから先かなりの戦力となるはずだ。
だがしかし、シルバーを改造するのはまだ先だ。
安全の話しもそうだが、実はこの暗い森には読者の間で密かに強いと言われている魔獣がいるダンジョンがある。
その名はハイスライム。
スライムが長い間生き続けることで進化したものであり、あらゆる環境、攻撃力、状態異常へ体制を持つことができる。
原作では本当に長く生きただけで耐性もなかったために道すがらに倒された不憫な魔獣だがもし、見つけることが出来れば訓練室と合わせてかなりの強さになるはずだ。
しかしハイスライムは進化元のスライムが弱すぎるが故に他の個体はいないとされている。
そんなハイスライムの細胞を手に入れられればシルバーの強さは青天井になる。
シルバーにそのことを説明すると納得してくれたようだ。
その後シルバーは訓練室に入りデータの自分と戦い、俺はブラックウルフを回復ポットに入れ、魔人二体とアングリーボア、シルバーの細胞の解析を始める。
ブランクの頭脳は本当に優秀で見たことの無い物であってもスルスルと解析が進み一ヶ月で解析しきってしまっていた。
その間はシルバーのわがままでデータにある自分に圧勝できるようになるまではと、外に出てくれなかったのであれから暗い森の探索は進んでいない。
……しかし、優秀な頭脳故に魔人の細胞の扱いに困っていた。
細胞そのものに凶暴性が備わっている。
実は魔人と狼系の動物を合わせた魔獣というのは原作でも登場している。
そのスピードで動き回り、魔人のように魔法を操る。
三章で登場したこの魔獣は主人公の相手にはならなかったが、他の仲間の足止めには成功するほどの戦闘力を持っている。
今それだけの力が出せれば俺を超えるのは無理でもそれこそ普通のダイアウルフ程度なら圧倒できる筈だし、奈落の魔獣もある程度は相手できるはずだ。
まじでどうすっかなぁ。
魔人の細胞は絶対に使いたい、しかしこの細胞は凶暴すぎるが故に他の細胞を殺してしまい改造どころではないだろう。
仮にできたとしてもその凶暴性がが備わってしまい従魔契約をしたところで暴れて、管理しきれないと思う。
どうしたものか……。
ブラックウルフの肉体はとっくの前に再生が終わっているのでさっさと改造してしまうのが正解なのだが、アングリーボアとシルバーの細胞だけではこれから先通用せずにすぐに死んでしまうだろう。
なんかないかなぁ……。
魔人の凶暴性を抑えるようなもの……抑えるようなもの……。
あっ!
あるじゃん。しかも手元に!
エルフは本来、種族レベルで優しさが備わっているため俺自身の細胞を使えばある程度その凶暴性を抑えられるかもしれない。
不安なのは俺がブランクだということだが、原作でも里にいる頃は優しい普通の子どもだったし行けると思う。
そうと決まれば俺の細胞からエルフとしての成分が多いところと精神を司る部分である耳と脳の細胞が必要だ。
耳はともかく脳は普通には取れないため俺の細胞を培養ポットにセットし、俺自身の体を複製していく。
……何となくいやな気持ちになるが、まさか自分の頭を開く訳には行かないし仕方ない。
コンピューターを見てみると完全な複製までにまだあと二週間ある為訓練室に入り俺も俺自身と戦って時間をつぶすことにした。
二週間たち完全な複製が完成したためそのからだを手術室に持っていき脳細胞を取り出す。
そのまま直ぐに他の細胞と合わせる作業をしていく。
実は灯火にはブランク以外にも細胞を使い新たな生き物を生み出すものもいる。
しかしそいつはそれぞれをそのまま元の体に入れての改造をしたため、免疫細胞の関係でものすごい時間がかかってしまっていた。
今はそれでいいかもしれないが、これから先細胞の数が増えれば確実に間に合わない時が来てしまうためここは意地でも細胞同士を合わせる技術を覚えなきといけない。
慎重に細胞の核を取り出し、中のDNAを合わせていく作業を続ける。
二時間後に遂に完成した細胞を培養ポットに入れ細胞を増やしていく。
……キモイ。
漫画で見たから知ってたけど、やはりキモイ。
元々体というものがない生き物は細胞だけを増やしていくらしく何となくでかくしたアメーバっぽい見た目になっていった。
「……よし、ついにやるか。」
細胞を完成させてからこれまた二週間後これは必要なものを取り出し手術室に立っていた。
さすがに試験もなしにブラックウルフに接合するのは危ないと思い、シルバーに頼んで外でネズミを撮ってきてもらった。
めちゃくちゃ渋られたけど……。
魔法で仮死状態異常にしたネズミの脳を開き細胞を合わせていく。
そうすると直ぐに細胞が合わさっていきネズミの外見にも変化が現れる。
灰色だった体毛は銀色に輝き、前足は赤、後ろ足は緑の毛に変化する。
口を見ると牙のような歯も生えてきており、耳も大きくなっている。
頭を閉じ、訓練室に連れていき眠りから覚めるまで待つ。
しばらく後に起きたネズミは周りを見て、自分の状況を確認していた。
さて……どうなる。
ここでなりふり構わず暴れだしたら失敗。
逃走を謀る、または降伏したら成功。
そんなこと考えながらネズミを見ているとネズミは俺の前に来て頭を下げ始めた。
せ、成功した?!
このネズミにはシルバーの特性が顕著に現れているらしく自分よりも強いと直ぐに判断し俺に降伏したようだ。
その後はシルバーの時と同じように従魔契約を行い、名前を与えていく。
うむ……本当に見たことの無い魔獣を生み出してしまったため完全に自分で考えないといけない。
えぇ……っと。
「よし、お前の名前は
体毛と十二支の子から取ってきただけの簡単な名前だが中々いいと思う。
銀子も気に入ったらしく、上機嫌な思念が伝わってくる。
その後、銀子は訓練室でシルバーと手合わせをしていた。
おぉ、こうしてみると中々強いな銀子。
二種類の魔法を駆使して元々速い速度をはね上げている。
エルフの細胞と魔人の細胞の組み合わせはえげつないな……。
さすがにシルバーも産まれたての銀子に手こずるようなことはなかったが、その素早さには面食らっているようだった。
俺は二匹の訓練を見た後に手術室に戻り今度はブランクウルフの肉体に細胞を合わせていく。
動物の種類が違うとはいえついさっきやったばかりの作業を間違えることも無く、三匹のブラックウルフの手術は終わった。
しかしこのブラックウルフは元々死んでいたため肉体を再生させただけでは生き返ったりはしない。
生き返らせたければ蘇生室に連れていき見合った供物を捧げなければならない。
蘇生室に連れていくと三匹を蘇生するのに必要な供物が指定される。
どうやら十キロの肉を捧げれば三匹の魂が戻ってくるらしい。
直ぐに食用に培養していたアングリーボアの肉を捧げ、ブラックウルフの蘇生を始める。
アングリーボアの肉が無くなったと思えば三匹の上の空間に穴が空いた。
うっすらと見えるその穴の奥に俺は見覚えがあるあった。
……ま、まじか!
あれって冥界じゃん!
冥界は古来魔人編のあと五章の舞台であり魂だけとなったものが住んでいる。
特別そこにいるやつが強いということはないけどネームドの連中は出てきてしまえばこっちの世界が滅ぶクラスのがいる。
……これはあれだ、あんまり使いすぎると危ないヤツだ。
冥界の出現に唖然としていると蘇生が終わったらしく冥界への穴が閉じていった。
はっ!
そうだった、ブラックウルフ達はどうなった!
目線を下に下ろすと直ぐに銀子の時と同じような変化をおことしたブラックウルフ達が頭を下げて待っていた。
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