6話 契約と研究所

デカイ……。

こいつはおそらく原作で出てきたダイアウルフだろう。

現実ではとっくの昔に絶滅してしまった狼だがこちらの世界ではこの暗い森で更に進化して住んでいる。

銀色の体毛、体長は二メートルほどあり、筋肉と骨格が異常に発達している。

そしてこんなところに住んでいるんだから当然だが、夜目がきく。


原作では暗い森の中ボスとして現れ、最後にはロインに敗れ、従魔契約を結んでいた。

しかしこいつは……おそらくは別の個体だ。

ロインと従魔契約を結んだダイアウルフはグレーの体毛を持ち体もここまで大きくはなかった。

だからこいつはきっとゲームの方で出てきたダイアウルフ、シルバーだろう。


灯火のゲームの中でボスキャラとして現れるシルバー。

圧倒的なスピードと攻撃力からプレイヤーからも恐れられていた存在だ。

ゲームの説明だと暗い森の東側を支配したと書いてあったが、なるほど……言うだけのことはあり、現段階でロインが契約したダイアウルフよりも強そうだ。

もしかしたら魔人も倒せるかもしれない。


しかし俺には勝てない。

もし、後ろから不意打ちなどを受ければわからなかったが正面から対峙していまえばこちらのものだ。


シルバーは俺の視線を切ろうと木を足場にして立体的に動き回る。

暗い森の木は映画を除けば作中でもっとも硬い植物だ。

後半は金属が武器のメインになったとはいえシルバーの足場になる程度の硬度はある。


シルバーは俺の後ろに回り込み首に爪を振り下ろす。

しかし、行雲流水で集めていた魔力で水を吹き出させシルバーを吹き飛ばす。


シルバー……原作では登場しなかったとはいえ、その力はおそらく暗い森の中でもトップクラスだろう。

ぜひ仲間になって欲しい。


ダイアウルフは基本的に力の強いものに従う。

しかしシルバーは群れることを拒まず、他の動物を殺したその死体に集まった動物を狩って過ごしている。

しかしそんなシルバーもダイアウルフとして強いものに従うのを良しとするのはゲームの説明文からわかっている。

そうなれば俺のすることはただ一つ。


今度は正面からスピードをつけ襲いかかろうとするシルバーを植物のツルを巻き付け、土の棘を刺さらないようにシルバーの回りに生やし動きを止める。


脱出を試みるシルバーに水の刃を向けて話しかける。

「これで……お前の負けだ」

シルバーはその狩りの方法からわかる通り頭が良い。

そのシルバーなら今俺に負けた上で情けをかけられていることはわかるだろう。


シルバーが抵抗をやめると、俺は魔法を解きシルバーを解放する。

すると直ぐに俺のまえに来て頭を下げる。

これはダイアウルフが主人と認めるものに捧げる忠誠の証のようなもの。


俺はその頭に手を置き自身の魂とシルバーの魂を繋げ従魔契約を結ぶ。

従魔契約はそれを専門的に鍛えた魔法士しか使えない技術だが、俺のようにユニークマジックが覚醒しているものは魂と魂を繋げることで同じように従魔契約を行える。


従魔契約にはとても重要な利点がある。

契約を結んだもの同士は何となくで意思疎通ができる。

言葉は分からないが、何となく思念が伝わることで相手の伝えたいことがわかるようになる。


シルバーを仲間にして直ぐにまた外に向かって進もうとするが、シルバーが後ろからつついてくる。

どうやら、名前がないとのことらしい。


……そういえばそうだ、勝手にシルバーと呼んでいるだけでまだ名前をつけていなかった。

「よし……お前の名前はシルバーだ」


シルバーは名を貰ったことで気になることも無くなったようで俺の後ろを着いてくるようになった。

そして、いざ進もうと思った時に自分がどちらを向いているかがわからなくなていることに気がついた。


やっべぇ……。

シルバーとの戦いで自分の向いている方向を見失ってしまった。

情けないがシルバーになにか目立つものがある場所がないかを聞き、シルバーの後ろを進んで行く。


「ふぅ、シルバー今日はここら辺で休もう」

「わふ」

どこを目指しているかは分からないが今日中につかないようなので一度に休むことにした。

道中アングリーボアという牛くらいあるイノシシを三体倒したため食料はある。

少し不安だったが解体は山での修行中に学校の教師の人達に教えられたためすんなりできた。


「シルバー、着いてきてくれ」

俺はシルバーに声をかけるとユニークマジックを発動し研究所に繋がるゲートを開く。


お、おぉ!!

何回も見てきた研究所だ!

そこにあったのは原作で描写されているよりも設備が少ないが大方俺の知っているブランクの研究所であった。


中央に大きな机と椅子が用意されている大きな部屋を中心に円形に他の施設が広がっている。

中央の机に置いてある施設の説明書を手に取り、中にある施設の説明のページを読む。


コンピューター:研究所ないの全ての機械を制御できるパソコン。

加工台:物の加工に必要なものが揃えられている台。

培養ポット:細胞から体を完全に再生できる。ただしこの世界では魂がないと脳が機能しない。

回復ポット:死体の損傷をある程度直せる。

訓練室:記録から、環境を変えたり、データにある生き物のホログラムと戦うことができる。

保管庫:触れたものをしまうことができる。

蘇生室:死んだものの魂を呼び戻す部屋。供物を捧げることで身体の持ち主の魂を呼び戻すことができる。

手術室:細胞を組み合わせたり、肉体の改造を行うことができる。


どうやら現状はこれらに加えてこの真ん中の部屋が研究所内にあるようだ。

うぅむ……原作ブランクはもっとたくさんの施設を使っていた気がするが記憶違いか?


しかし、説明書を読んでいると研究所のレベルが上がると施設の数や機能が増えると書いてある。

研究所のレベルはその名の通り研究を行うと上がり、レベルは最後のページに書いてあるとこのとだ。


最後のページを読んでみると確かにレベル1書いてある。

研究か……。

最初は暗い森を出た後に武器・防具の研究をやろうと思っていたが、研究所にレベルがあるというのならはなるべく早く上げておきたい。


しかし、今の手持ちで研究所のレベルが上がりそうなものは……。

……ある。あるにはあるがどうなんだぁ。


「シルバー、俺はお前が狩りにつかっていた死体を改造したいだがいいか?」

どんな質問だよ。

我ながら意味のわからない質問をしていると思うが現状研究所のレベルをあげるには動物の死体を改良して生き返らせるしか方法がない。


魔人を蘇生するのは危なすぎるしアングリーボアは蘇生したとしても野生に戻すしかない。

しかしプラックウルフ達は狼の系統ということで強さを見せれば従魔契約を結ぶことができる。


シルバーは少し考えるような仕草をした後に許可がおりた。

よっし!

気持ち的に少しいやなところはあるがあまり悠長な事も言っていられない。


なぜなら俺は暗い森を抜けた後、魔人界に行こうと思っているからだ。

いまの俺は里に来た魔人程度ならまだしも上位の魔人や原作でなまえがあった魔人には勝てないだろう。


そうなると俺自身が強くなることはもちろんだが、強い仲間や強い道具が必要になる。

原作でのブランクの道具はかなり高性能であり俺じゃ勝てないであろう魔人にも勝機が見えてくる。


……しかしそんなことよりも重要な理由がある。

今から十年後に二章のボス魔王アルファにある事件が起きる。

それは魔人界にある奈落と呼ばれる場所に落ちることだ。


奈落はかなりやばい場所で主人公も三章の修行で使用した場所だ。

過去編ではボーイシュな性格と赤みがかった髪と可愛らしいその顔立ちで人気を出したアルファだが奈落に落ちた後は持ち前の元気さはなくなり、弱いものを虐げる魔王になってしまう。


それはあかん!

俺はそれを阻止するために何とかそれまでに魔人界で過ごせるようにしないといけない。

待っていろアルファ必ず助けてやるからな!


そんな風に覚悟を固めているとシルバーから思念が飛んでくる。

どうやら自分も改造して欲しいとの事だ。


ほぇ?

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