5話 覚悟と旅立ち

「師匠!魔人です!」

俺がそう叫ぶと直ぐに師匠の返事が来た。

「こちらにも……一体いますそちらはあなたで対応をお願いします」


まじかよ……。

これの目の前にいるのは風の魔人。

原作二章で出てきた敵で今の俺なら簡単に倒せる相手だろう。

だが……。


「ッ?!」

風の魔人が放った風の刃を回避して俺は魔人向けて植物ツルを巻き付ける。

今までの戦いとは違う……殺さないといけない。


今までは師匠との修行とは違う。

殺意、殺気、そういった今までは感じたことの無い物を容赦なく浴びせられる。


風の魔人はツタを千切ると速度をあげて俺に突進してくる。

実力差は圧倒的だやろうと思えばもう殺せている。

だが……今まで殺しなんて無関係な生活をし続けていたため上手く魔法を使えずにいた。


そんな時に俺は原作を思い出した。

二章始まって直ぐに主人公が住んでいた街が焼かれていた。

老若男女問わず殺し尽くされていた。


そんなシーンを思い出していた。

……やらないと里が滅ぼされる。

もしかしたらまじでに勝てる人もいるかもしれないでもこの近くには学校がある。

子どもは確実に殺される。


させる訳には行かない。

ここでやらなければ俺は後悔する。

ここでやらなけれ俺は本当に原作と同じブランクになってしまう。

ここでやらなけれ……人が死ぬ。


覚悟を決めた俺は巨大な水弾を作り出し、圧縮した。

師匠が好んで使う応用技。

範囲を犠牲にして威力をはね上げる。

行雲流水を極めた者が扱うことができる奥義。

名は圧縮ディープ


俺は小さくなった水弾を魔人の心臓を目掛けて放った。

水弾は命中し血液に大量の水が混ざった魔人は死亡した。


「ッ?!」

魔人の死亡を確認しようとちかずくと頭に激痛が走った。

痛みに頭を抑え屈んでいると脳内に言葉が響いた。

(ユニークマジック:研究所を解放します)


ユニークマジック、それは灯火の代名詞と言ってもいいほど有名なものだ。

その個人にしか使えない特別な魔法。

そしてブランクのユニークマジックは研究所である。


研究所はその名の通り研究所必要なものやその後に必要なもの施設が入った異空間であり、ことユニークマジックを使うことで出入りしたり、その機能を使うことができる。


このタイミングでユニークマジック!

ちょっと!もうちょいタイミングかんがえて!

なんか俺の知らない魔法でも食らったかと思ったわ。


しかし、一度にいろいろ起きすぎてくれたおかげで俺は一周まわって冷静になることができた。

……そうか、俺殺したのか。

今までも虫を殺すことはあったし、いつかはやらないといけないことだというのも理解していたつもりだ。


きっついなぁ。

やっぱり人型の生き物を殺すのは精神的にダメージがある。

しかし、それでも俺は大切な者のために命を選ぶ。

敵になるのなら殺す。

味方になるのなら助ける。

今後生きて行く上でこれだけは曲げちゃいけないという人生の指針が定まった。


「ブランク!……無事!」

「はい、師匠幸い大した強さではなかったようです」

早速師匠が来る前に研究所の機能を使い風の魔人を回収する。


「魔人……どこですか?」

「いえ、それは……」

俺は師匠に魔人が来てからのことを説明した。

覚悟のこと、ユニークマジックの事、そのユニークマジックで魔人を回収した事。


「研究所……なるほどユニークマジックでしたか」

拒絶されることも覚悟していたが師匠は簡単に受け入れてくれた。

更にはそれならばと炎の魔人も持ってきてくれそれも回収させてくれた。


その後里に戻り里のトップに魔人のことを説明した。

里のトップは直ぐに会議が必要だとして俺たちを連れて会議室へ向かった。


「魔人だと!……しかもそれが二体!」

「本当に魔人が現れたのだろうな」

「本当です信じられないというのであればこの場でお見せすることもできますが」

「いやいい、ハイエルフの言葉なのであれば事実なのだろう。」


どうやら、この人たちにはスティがハイエルフであることを知っているようだ。

ハイエルフは高潔で誇り高い存在だと知られているため師匠の言葉を簡単に信じた。

……魔法祭の時にめっちゃ嘘ついてたと思うけどいいのか。


会議は進んでいき、このまま二人でこの里を守って欲しい派と片方は里を出て世界がどうなっているかを調べてきて欲しい派に別れた。


俺としては後者だ。

なぜなら魔人を放置すれば世界がどうなるか知っているからだ。

今は歳的に魔人が攻めてくるまでまだ時間がある。

それでも今回のようにはぐれの魔人は現れるし、一般人は簡単に殺されてしまう。


それはダメだ。

この世界のボスや敵達は皆辛い過去を持つ。

そんな過去がなければきっといい未来が待っているはずだった。

その過去を帰るチャンスがあるのに行動しないのは嫌だ。


「……俺に里を出させてください」

「なっ、しかし!」

「我々の里は暗い森で囲われており外部からの侵入は困難を極める、にもかかわらず魔人は侵入はして来たこのまま放置すればさとも世界も大変なことになるそれはわかっているはずだ!」


「わかった……許可しよう」

「よ、良いのですか里長」

里長と呼ばれるものをよく見ると魔法祭で俺たちに髪飾りをくれたエルフだった。

こやつらのような強さを持ちながらこの里の中だけで持ち腐らせる訳には行かないと言ってくれ俺の旅立ちの許可がおりた。


「それでは……行ってきます」

そう挨拶すると里のみんなから様々な言葉が帰ってくる。

気をつけろよと叫ぶ父ダイン、何時でも帰ってこいと言う母フィフィ、強くなれという師匠スティ、死ぬなと叫ぶ他の仲間たち。


まだ里にいたい気持ちはある。

だけどこの世界に俺がいる意味を考えればやっぱりここで出ないと行けない。

この後百年後に主人公ロインが生まれ様々な事件が起こっていく。

この世界まだ原作道理なのであれば明確なタイムリミットはロインの冒険が始まるするあと百十五年。


しかしそれはあくまで最終ライン。

他にも救わないと行けない人は沢山いる。

その人たちの命を救い世界を救う。

それが俺の旅の目的だ。

里のみんなに見送られながら里の外へ向かい歩いていく。


歩いていると直ぐに辺りが真っ暗になる。

持たされた魔石を杖にはめ少し魔力を込めると淡く光り始める。


ここは暗い森と呼ばれる森で、その由来はその森に踏み入ると辺りが見えないほどの暗闇と外からの音が聞こえなくなる特殊な空間によるものだ。


原作二章で主人公たちが修行のために入った森で様々な野生動物とダンジョンがある。

更にここにいる動物達は皆外の動物よりも強力に進化しており、下手な魔獣よりも強い。


いくら俺が漫画を何周もしたからといってもどこに何があるかまでは分からない。

今はまだ里を基準に歩けているからいいが何かの拍子にどちらを向いているかがわからなくなれば直ぐに迷子だ。


何かダンジョンかオブジェクトを見つけておきたいな。

そう考えながら進んでいると狼の死骸を発見した。


近ずいて見るとそれがブラックウルフのものだとわかる。 

死んでから時間がたっているようで腐乱臭がする。

ハンカチで鼻と口を抑えながら近ずき回収する。


回収したら直ぐに離れるべきだ腐乱臭が原因で近ずいて来なかった動物達は臭いが無くなった事に気づくだろう。


戦っても勝てるとは思うがそれは戦えればだ。

ここにいる動物達は皆この暗闇の中でも周りをしっかり見ることができる。

しかし俺は違う。

気がついていない時に死角から襲われれば戦いが発生する前に負ける可能性もある。


対策として行雲流水で急所を固めてはいるが毒持ちもいる、警戒するに越したことはない。

そんな風に考え前に進もうとすると目の前にさっきの狼よりも一回り大きい狼が現れた。



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