4話 師匠


「け、決着!勝者ステイ!」

観客の歓声の中審査員が宣言する。

はぁ、疲れたぁ。


「降参……しても良かったのですか?」

「そりゃ、親の前で怪我はできませんよ」

特にうちの母親は過保護だし……。


「二人ともいい戦いだったよ、この後身体検査をした後は閉会式始まるまで待っててねぇ」

「はい……」

「わかりました、失礼します」


「いやぁブランクすごい戦いだったぞ、よくやった」

「怪我はありませんね!痛いところはありませんね!」

「大丈夫です、おかあさま……」

これで八回目……。

やはり過保護な親だ。


「しっかし、強かったなステイちゃん」

「すごい子でしたね」

本当に強すぎ。

あの場で俺が勝つ手段は相手の油断をつくしか無かったがそれでも無理なら本当に俺に勝ち目はない。

……負けで元々と思っていたがやっぱり悔しい。

相手が原作最強格のスティだからといって負けは負けだ。


しかし、今回の魔法祭で自分の強みと弱みがわかった。

俺には原作知識という力があり魔法については今でもソコソコの相手までなら通用するだろう。

しかし逆に自分自分のイメージによる魔法というのが苦手なのかもしれない。


既存の魔法の改良はできても新たな魔法を作るとなるとまだしばらくできそうにない。

……しかしそれより問題なのは身体技能だ。

武術に無関係だったとはいえ、スティの蹴りを避けることも受けることもできなかった。


「これより閉会式を始めます。選手の皆様は会場に集まってください」

お、召集がかかった。

俺は両親に見送られながら会場に向かった。


「ごめんねぇ、二人はここにいてねぇ」

「え、あっはい」

「わかりました……」

来た時と同じようにジュニアクラスの列に並ぼうとしたがスタッフに止められ端っこにスティと立たされていた。


はぁ、暇。

まじで話長ぇなみんな。

もう何回目かも分からないほど同じ話を聞かされ意識が飛びかけていると俺達の名前が出た。

「それでは特別試合選手ステイ、ブランク前へ!!」

へ!

こういうのがあるなら先に言っとけよ!ぶっつけ本番で喋らせる気か!

俺達の二人は返事をし話しているエルフの前に立った。


「まず二人ともよく戦った、その年齢にして大人にも負けないほどの試合をしせてくれたこと嬉しく思う。」

おぉ、なかなか嬉しいことを言ってくれる。

このエルフが言うにはやはり俺達の魔法のレベルはこの里の中でもかなり高い方で再現出来るものはそうそういないとの事。


……やっぱり行雲流水には気づいてないな。

それが分かったのは大きい、家や街に出た時でも簡単には気づかれないということだ。

こういうのはやればやるだけ力になるものだ。


「ではそんな二人の健闘を称えこれを贈呈する」

そういうと二人のスタッフがなにか布に包まれた物を持ってきた。

布を開くとそこにはピンクと緑の木でできた羽のような髪飾りがあった。


え?!

うっそだろ!マジで!

この髪飾りはかつてこの森を守護していた大精霊ドライアドが残したと言われる大精霊樹から作られた髪飾りで聖属性の加護がかかっている。


原作では二章で出てきて主人公が魔人と戦うために身につけたものだったはず。

ここで俺が貰っても大丈夫なのか……。

まぁ、最悪俺が鍛えてやればいいか!


「有難くちょうだいします」

「ちょうだい……します」

俺が緑、スティがピンクの髪飾り受け取ると礼をし、元の場所に戻った。


「すいません……ブランク、この後少し時間を貰ってもよろしいでしょうか」

「え、はい、わかりました」

なんだ?!

ちょっと待ってくれスティからの呼び出しは怖すぎる?!

行雲流水の事か、それともそもそも俺の正体がバレた?もしかしてこっちが正体に気づいていることに気づいたか?


閉会式が終わり、スティについて行く。

何聞かれんだまじで。

「それでは……あなた私の弟子になるつもりはありませんか」

「ほぇ?」


「えっと……弟子、ですか?」

「はい……今から詳しい話をするので聞いてください」

スティはその後すぐに自分の正体を話し、今回の魔法祭参加した理由が弟子を探すためだということを話してくれた。


「弟子をお探しなのでしたら、ジュニアクラスを見るよりドラゴンクラスを見たようがよろしかったのでは?」

「いえ……半端に学んでいるものよりあなた達くらいの子供の方が教えるとなれば都合が良いので」

確かにそうだ。

もう自分のやり方が確立している者よりまだ魔法について知らない子どもの方が教えるのなら好都合だ。


ん?なら、トーナメント出ていた方が都合良かった気がするけど。

「でしたら、予選のあの魔法はミスでしたか」

「いえ……あなたが行雲流水を使っているのがわかったのでジュニアクラスで戦うよりも特別試合であなたの力を見たかったのです」

「……なるほど」

それっぽい事を言っているが頬が赤くなっているのでミスをしたのを隠そうとしているな。


「それで……弟子になる件考えてくれますか?」

「私としてはありがたい限りなのですが両親の件もありますのでこの場で決めることは……」

「なるほど……であればあなたのご両親を紹介してください」

けっこう強引に来るな。

まぁ母親の方は分からないが父親の方は許してくれそうだ。


俺はその後スティを両親の元へ連れて行き、弟子の件を話した。

そうすると両親は自分たちの家でやるのならば良いと言ってくれた。

俺としてはこの話はかなりのメリットがある。


俺ことブランクの本来の強さはユニークマジックが発現してからだ。

しかし、原作を見ての通りそれだけだと簡単に死んでしまうし、今後生まれる人造生命やロボットの戦闘データの充実は俺の強さの向上にも繋がる。

その後はスケジュールを四人で相談し詳しいことを決めると家に帰ると俺は疲れからかすぐに眠ってしまった。


「では……改めまして、スティです」

「はい、よろしくお願いします師匠」

次の日になりスティとの修行は直ぐに始まった。

原作でもスパルタっぷりが目立っていたスティだがさすがに五歳の子どもにあんな修行はしないだろう。

「まずは……死なないように気をつけてくださいね」

「ほぇ?」


「早く……立たないと死にますよ」

「はぁはぁ、ぐっ!」

どうもあれから十五年たって二十才になったブランクです。

エルフの老化は十代後半程度で止まるとは聞いていましたがハーフエルフの俺も例に漏れずその見た目は変わらずにいた。


スティの特訓の目標は行雲流水を無意識にやり続けるというものだった。

人が意識して呼吸する訳では無いよう行雲流水も無意識に行えばさらなる強さが手に入るとこことだ。


実際これを習得するすると数段強くなった。

……だがスティはそのために朝は五時に起き七時まで行雲流水をより深くさっきの呼吸で表せば深呼吸をし続け、朝食を食べると昼休みまで魔法の特訓。午後は父が作った木の剣を持った師匠とエルフの里にある山の中を鬼ごっこ。

最悪なことにここは冒険者を志すエルフのトラップの連取上にもなっており、スティから話を聞いたエルフ達が嬉々として大量のトラップを仕掛けていた。


立ち上がった俺は師匠に植物の根をツルのようにし巻き付かせ、土埃をあげて逃げていく。

この十五年間で俺は基礎の魔法は完璧にできるようになり応用もかなり覚えてきた。

今ならば師匠にカウンターとして使った魔法も一人で放てる。


山を抜けるために走っていると横から強力な風が吹いてきた。

ッ?!

なんだ?師匠?

いやない。魔法を当てられる状態なら師匠はもっと殺す気の魔法を撃ってくる。


そうなるとトラップ?

そう思い横を見ると緑色をした二メートル人間がこちらを見下ろしていた。

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