2話 魔法祭予選

「魔法祭……ですか?」

「あぁ」

魔法祭と言うと……アニメオリジナルエピソードのアレか。

アニメでは酒場でパーティ内最強は誰かって話になってそれを決めるために参加することになっていた。

うむ……魔法祭か。

参加してみてもいいかもしれないな。


「いいですけど、私はまだ五歳ですよ」

「あぁ、それなら問題ない魔法祭は年によってクラス分けされているんだ」

なるほどぉ。

まあそうだよな、アニメでは全員同じクラスで戦っていたけどあれはなんか特別だみたいなこと言っていたしな。


「わかりました、参加しましょう」

「よっし、そう来なくちゃな」

それから父は少し詳しく魔法祭について教えてくれた。

俺が参加するのは四歳から七歳が参加するのジュニアクラスらしい。

皆魔法と言っても簡単なものを一つから三つ使って戦うものらしい

正直行雲流水ができる俺が誰かに負けるところは想像できない。


「それでお前、魔法使えるのか」

「知らずに参加するのか聞いたんですか……使えますよ本を見て練習しました」

ちょっと前から思っていたが天然だなこの父親。

行雲流水はバレたらまずいが魔法は子供が勝手に使ってしまうというのは割とあるらしくバレても問題ないと思い結構思いっ切り練習してたんだがな。


「はははっ、悪い悪い俺は魔法ではなく細工の方が得意だからな」

そう、実を言うとこのダイン原作ではないがちょと名前が出ている。

ダインという名前は灯火がゲーム化された時に主人公が使う道具や武器の製作者として出てきていた。

まさかそれがブランクの父親だとは思わなかったが。


「それじゃ、明日仕事の時に手続きしてくるからな」

「はい、お願いします」


「大丈夫ですか?忘れ物はありませんね?怪我をしたらすぐに大人の人に言うのですよ」

「わかりました、わかりましたよおかあさま」

「今ので何回目だ?」

八回目ですおとうさま……。

ついに本番の日が来たということで今俺たちは会場に来ていた。


何とか過保護二人と離れられた俺はジュニアクラスの看板を掲げている人の所へと向かった

「すいません、エントリーしているブランク・アン・アルームです」

「はーい、アルームくんね……うん、あるねじゃあこの奥にある広場にジュニアエリアって書いてある場所があるからそこで待っててね」

「わかりました」

「困ったことがあったら近くの大人の人に聞いてねぇ〜」


「すいません、ここがジュニアエリアで合っていますか?」

「ん?あぁあってるよ君も今日参加するのかい?」

「はい、ブランク・アン・アルームと言います」

「お、おぉ。子供にしては礼儀正しいね」

「おとうさまとおかあさまのおかげです」

ジュニアエリアには俺と同じくらいの子供が沢山集まっており体をほぐしたり、走り回ったり、本を読んだり思い思いの方法で時間を潰していた。


エリア内での魔法は禁止されているため俺もなにかして時間を潰すか。

行雲流水ををしていてもまぁバレないとは思うが念の為だ。

うむ、周りを見ると準備運動をしているものが多い。

まぁそれくらいしかやることないか。


俺も地面に寝そべり身体をほぐすために柔軟をしていく。

魔法には身体も必要だと言うことで柔軟は小さい頃からよくやっていた。

筋トレは……何もしなくても勝手に筋肉がついて行くブランクの体に甘えているところはある。


いっちに、さんしー、ごーろく、しちはっち。

「みんなーそろそろ開会式だから集まってぇ」

あれから三十分低度アップをしているとスタッフの人から声がかかった。


「ここの線に合わせて身長順に並んでねぇ」

「「はーい」」

こんだけ数がいると並ぶのも大変だな。

だいたい真ん中辺りに並んで待っていると女の子が話しかけてきた


「前……いいですか?」

「え……あ、どうぞ」

そういうと俺の前に俺より少し小さいくらいの女の子が並んだ。

ちょっっっっっっっと、待ってくれ?!

こ、こここここの子、原作主人公のパーティメンバーじゃねぇか?!

この子の名前はスティ実年齢は百歳を超えるおばあちゃんのハイエルフだ。

見た目を操ることができるユニークマジックを持っており、今のように小さい女の子になることができる。

まぁ元の見た目も中高生くらいにか見えない訳だが。


やばい……計算が狂った。

行雲流水があれば全員ボコボコにできると思っていたがスティは違う。

彼女は何とか同じく行雲流水を扱うことができる。

原作では四章に出てきて主人公に行雲流水を伝え覚えさせていた。


どうすっかな、別に何がなんでも勝ちたいという訳では無い他の子供たちの魔法を見たかっただけだ。

だけどせっかく原作最強格が目の前にいるのに手を抜いて戦うのはもったいない気がする。

そうなれば全力で当たるしかない。

また行雲流水ができるだけで特別強力な魔法が使えるわけでないが俺には原作知識という最強のアドバンテージがある。

くっくっく、悪いがずるさせてもらうぞスティ!!


「…………ということです。ではこれにて開会式を終わります。」

こういうところでの話が長くなるのは世界が変わっても一緒か。

「みんなーこっちに集まってぇ」

ん?なんだ?ジュニアは別の会場だったはずだが。


「はーい、今からみんなには予選として一つ魔法を見せてもらいます。」

「全員で十人の審査員が君たちの魔法を見て上から十五人がを選んで本戦に進むことになるよ」

まじか、ここにいるのはだいたい三十人程度つまり半分は予選落ちってわけか。

まだ小さい子供に結構酷なことをするな。


それぞれがまた列に並び審査を行い始める。

審査は審査員が用意した水晶に向けて魔法を放つというものだ。

終わったものはジュニアエリアで待たされるようだ。

「次、ステイちゃん」

「はい」

そう呼ばれるとスティが水晶の前に立った。

まじかよお前、ステイってィをおっきくしただけじゃねぇか。


「……いきます」

そういうとスティの前に巨大な火炎弾が出た。

周りは予想外といった様子でどよめいている。

しかしスティのことだこんなんじゃ終わらないはずだ。

そう思っていると火炎弾はどんどん小さくなっていきやがてテニスボールくらいの大きさになってしまった。

しかしそのエネルギーの量は変わっておらずものすごい熱を放っている。


スティがそれを投げると水晶に着弾。

すぐに水晶が真っ赤に染まり初め少したつの着弾地点が溶け始めた。

幸い火炎弾は水晶を少し溶かしたくらいで消えたが、もしスティがもう少し力を込めていたら水晶はなくなっていただろう。


そして今の赤くなったのでこの水晶が何なのかを思い出した。

魔石だ。

魔力を持った石。文字そのままの意味である魔石は言ってしまえばバッテリーだ。

作るには特別な魔法をなんでもいいから石に使う、そうすると魔石が完成するという訳だ。


そして子の魔石は元の材料により副作用が出ることがある。

今回のように魔法の性質に合わせて色が変化したり、相手の倒した者や行った場所わかるものなど様々だ。


「えっ……ええええぇぇぇぇぇ?!?!」

おおっすっげぇ顔で驚いてんな審査員。

見ていたほかの子供も完全に萎縮してい待っている。


「ご、ごめんねぇ、今新しいの持ってくるから待っててねぇ。ステイちゃん君はちょっとここで待っててね」

「わかった……」

そんなやり取りをしていると別のスタッフが別の水晶を持ってきた。


「よーし、それじゃ次ブランクくん」

「はい」

さてどうするか。

俺だって人前で思いっ切り魔法をぶっぱなせる機会初めっからスティに負けていては格好がつかない。

本当にスティに勝てるとは思っていないが手を抜いていてくれると言うのなら勝ちに行こう。


すぅ……ふぅ……

集中しろ、体の中にある魔力を集めろ。

手のひらに魔力を集め、水晶を破壊できる魔法をイメージしていく。

単純なものではダメだスティに勝てない。


しかしこの世界で生きて五年間自力で高威力な魔法をイメージできるほどの俺はすごくない。

であれば借りさせてもらう。


まずは、周りに空気の筒を作る。

さらにこれに進行方向へ向けて風を起こす。

その後に体を支えるように土の壁を作る。

最後に火炎弾を作り発射しないように筒の中に待機させ、その後ろにさらに小さい風の塊を作り出す。


「いきます」

火炎弾を離すと同時に風の塊を破裂させる。

俺は土の壁に支えられながら原作主人公の最初の必殺技の威力を見守った。


この魔法は原作で主人公がまだ、強力な魔法が使えない頃に使っていた必殺技だ。

一つ一つの魔法は普通の魔法使いであれは簡単に扱えるもので威力もないが大砲のようにスピードと重さを乗せた火炎弾は着弾と同時に凄まじいエネルギーをうむ。


俺の火炎弾が水晶に着弾するとスティの時と同じように直ぐに水晶は赤くなり着弾地点が溶け始めた。

ここまでならスティと同じだだが俺は原作主人公の必殺技を改良してつがっている。


本来ならない指向性を持った風を生み魔法発動タイミングに気を使ったこの魔法はスティ時よりも水晶を溶かし奥まで進んだ。

火炎弾は消えた頃、周りの驚いた顔と半分溶けた水晶だけが残っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る