原作なんてぶっ壊せ!原作最悪の男ブランクに転生したけど諦めずに原作ブレイクを目指す。
カラーコンタクト
1話 転生
「うっ……うっうぅぅぅ……うぅ」
俺は人気漫画「灯火が照らすもの」通称灯火の最終回を読んで涙を流していた。
辛い。ほんと辛い。
この漫画は連載を開始してからはや十年毎週必ず某雑誌を購入し続けていたほど大好きだった。
本当に面白かった。
勝気な女の子の主人公ロインが犯罪組織や魔族、極悪科学者、古来魔人との戦いを通して成長していく王道ファンタジー漫画。
ここまでならありふれた漫画で俺だってここまでハマることはなかっただろう。
だが、この漫画のすごいところはキャラの深さだ。
主人公はもちろんその仲間たち、ライバル、果てはボスまでそうなっても仕方がないと思わされるような過去や心情が事細かに表現されていた。
まぁ……例外もいる訳だが。
「結局ブランクだけは徹頭徹尾クソだったな」
ゴミカス、この漫画唯一のクズ、皆が神様から優しさを貰っている間に地上に落とされた男、顔面だけで人気投票にくい込んでくるな。
さんざんな評価を受けているこのキャラはDr.ブランク。
本名はブランク・アン・アルーム。
顔は金色の目のつり目猫を彷彿とさせるイケメンで髪色は黒。
ハーフエルフであり、寿命も長く主人公たちと対峙した時も百歳を超えていた。
大体のキャラはそうなるだけの過去があるのだがこのキャラだけは純然たるクズ。
第三章で起きる事件の首謀者。
三章の敵ということで弱くはないが主人公を追い詰める程ではない。
だが、こいつは前章で命を落とした主人公の仲間リゾートの遺体を改造し主人公に仕向けた。
まぁ、結局起きたばかりのリゾートに殺され、以降作中で話されることもなかったが。
そんなふうに最終回の余韻に浸りながらSNSで感想を話そうと開くと、ゲリラで開催という文字が見えてきた。
「ゲリラ?なんだ?」
詳しく調べてみるとなんと今日まさに最終回を迎えた漫画灯火が照らすものの最終回記念が開催されるということだった。
「はぁ?!まじで!」
幸い開催場所は全国各地にあるためすぐに向かうことができる。
急げ!急げ!
俺は財布をしまいっぱなしのカバンを手に取り急いで家を出た。
「はぁ……はぁ……くっそ、運動しとけば良かった」
デスクワークでまともに運動していなかったことが祟り交差点で息も絶え絶えになっていると信号か青色になった。
さすがにずっと走っていたため少し歩くことにし交差点を歩いていると右側から大きな音がした。
「なん……うわ?!」
そこにあったのはなんてことない普通の車。
ははっ。死に際に時間がゆっくりに見える演出あるけどあれ、まじなんだ。
てか、運転手寝てんじゃん。
案外避けられるかと思い足に力を入れるが間に合わずそのまま衝突した。
最後意識が切れる前に見えなのは真っ赤に染まった地面と車から降りてきた運転手の姿だった。
「やっ……げんき……とこの……す」
ん?なんだ?助かったのか?
俺は聞こえてくる声を無視して体を起こそうとする。
……が動かない。
まじかァ。まぁ車に轢かれたんだし動けなくもなるかぁ。
幸い声は聞こえるんだし近くの人に話を聞けば……はぁ?
俺の目に飛び込んできたのは耳の尖った女性とその女性の手を握りよく頑張ったといい、泣き続ける男性、それを囲む医者らしき人だった。
それだけならいい……いや、良くはないがそこにいる男性と女性に見覚えがあるのだ。
えぇ……この人たち名前は知らないけどブランクの親じゃね?
どういうこと?俺もしかして事故にあって寝てる?
そう思ったが体にあるなんとも言えない感覚がそれを否定する。
ちょっと待ってこれあれか……転生か?!
まじかァ、でもこの親から生まれたってことはブランクの兄弟か。
どうすっかなぁ……頑張ればいい子に育ってくれるかぁ?
嫌でも優しさという概念すら知らなそうなブランクだぞぉ。
「よくやった……よくやったぞぉフィフィ」
「ふふっ泣きすぎですよダインさん」
へぇ、フィフィさんとダインさんかいい人そうなのにまじでなんであのブランクが生まれたんだよ。
「それよりあなた男の子よ名前、前から決めてたあれでいいわよね」
「ああ、もちろんだ。よし、我が子よお前の名はブランク、ブランク・アン・アルームだ」
……え。
ちょ、ちょっと待ってくれよ?!
ブランク?!俺があのブランク?!
う、嘘だろ。
クソ、こうなったら最悪もう一回……
「ブランク、ふふっ可愛い我が子よ」
……。
こんないい人そうな両親を泣かせられるか?!
あぁ、いいだろう生きてやるよブランクとして。
見てろよ世界俺は負けねぇぞぉぉぉぉぉ?!!!!
「おとうさま、おかあさまこの本も読み終わりました」
「おぉ、よしよしさすがは俺達の子頭がいい」
「私としては……ちょっとくらいわがままを言って欲しいです」
どうもブランク・アン・アルーム現在五歳です。
いやァあれからまじでキツかった。
この世界哺乳瓶がないらしく離乳食が食べられるようになるまで母乳生活だった。
「よし、それじゃあちょっとテストをしてみよう」
お、テストとな。
実年齢二十歳越え、灯火がちオタ、一応本も読んでいた俺にテストとな。
「どんとこいです」
「ふふっ、ではこの世界に魔法をくださったのは」
「唯一神アルタガーナです」
「正解!ではエルフが住む里の外にあるのは」
「暗い森ですね」
「おぉ!正解だ!では最後魔法を扱う際に大事なのはなんだ?」
「うぅーん……確かイメージと魔力操作あとは魔法の使用に耐えられる体……でしたっけ?」
「凄いですね百点満点です」
「やった」
まぁ余裕だ。
ていうか、これみんな前世から知ってたし?!
「ですが、魔法で身体を鍛える必要があるとよく知っていましたね」
あぁ……それは
「おとうさまに教えてもらいました」
まぁ、ある程度元々知ってはいたけど。
原作第一章で主人公が高威力の火炎魔法を使った時に大怪我をしていた。
どうやら高威力な魔法を使うのは肉体で例えると血流の速度が早くなるような副作用があるらしく、しっかり鍛えていないと魔力回路が壊れてしまうらしい。
まああとは単純に物理的に反動に耐えられないという話もある。
「そぉ……ふふっダインさんも頑張っていらっしゃるのですね」
そう微笑まれ恥ずかしそうに頬をかいている父が風呂に入れると俺を連れて部屋を出た。
「おとうさまは本当におかあさまによわいですね」
いてっ。
ちょっといじったらデコピンが帰ってきた。
そんなことより今は魔法の練習だ。
魔力回路のを流れる魔力を意識して操る。
名前を行雲流水。
この技術は本来は失われた技術として四章の古来魔人がやっていたものだ。
普通の人間や魔人は自分の魔力回路を認識することはできない。
だが、エルフだけはべつだ尖った耳にある魔力回路だけは認識することができる。
そしてその耳にある魔力を意識して追いかけ続けると魔力回路を認識することができる。
これの効果は無駄な魔力を消耗しなくなるのと魔法が高威力になる。
……さすがに一回で完璧に認識はできなかったが、ゼロ歳ベイビーの頃から五年間やり続ければできるようにもなる。
エルフの母親にはバレるかもしれないのでこうやって母がいない時にやっているということだ。
「流すぞぉ」
「はーい……」
まぁ……親に風呂に入れられているっていう事実がちょっと恥ずかしいのもある。
いや……いいお湯だった。
原作でも温泉の里とか言われていたエルフの里だ、風呂の質は日本にも劣らない。
「あら、二人とも上がりましたか」
「あぁ、残りの洗い物は俺がやっておくからお前も入ってくるといい」
「ふふっ、では頂戴してきます」
相変わらず二人は仲が良い。
是非ともこのままの関係でいて欲しいものだ。
「そうだ、ブランク来週にある魔法祭に参加してみないか」
「ほぇ?」
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