Episode.13 一緒に勝つために、参戦しますよっ!
というわけで戦闘はドーネルさん優位で始まったのですが。
流石に相手はほぼ同じレベルのボスクラスの敵です。
徐々にドーネルさんが押され始めました。
私の学習の結論として、ゲームでの戦闘と言うのは極論を言えば「自分が倒される前に」「相手を倒せるか」という勝負であると認識しています。
つまりは「いかに相手を速く倒せるか」と「いかに自分が倒されないか」という能力を競い合うものだという認識です。
これが真理どうかは……まあ、人それぞれでしょうか。
で、この2つですが、「いかに相手を速く倒せるか」については今さら言うことはないかと思います。
逆に「いかに自分が倒されないか」という部分については軽視はされませんがはっきりとした指針はないように感じます。これは「いかに自分が倒されないか」という能力についてはアプローチが違う方法がいくつもあり、複数の手段の合計値として決められるからでしょう。
で、その方法ですが大きくは「相手の攻撃を避ける」「相手の攻撃に耐える」の2パターンに分かれるかと思います。
あ、あと「こちらが倒される前にとにかく倒す」という考え方もありますが、これは「いかに相手を速く倒せるか」と同じなので割愛します。
「相手の攻撃を避ける」というのは文字通りです。当たらなければどうということはない、というのは昔の偉い人(?)の言葉だったようですが、実は「Dawn of a New Era」ではこの「相手の攻撃を避ける」というのはあまり重きを置かれていません。
え? なぜか?
基本的に「Dawn of a New Era」においては「相手の攻撃を避ける」という行為は全てプレイヤー自身が行わないといけないからです。
対面の敵からの攻撃を見て避ける……というのは
……じゃあ何で私は敵の攻撃を避ける動作を支援するための技能である【見切り】のレベリングをしていたんでしょうか……?
あ、いや……回避するのも「敵の攻撃は全部回避します」というのが無理なだけで、例えば10回攻撃されたうち2回避けることができた、とかでも十分防御の効果はあるのでそこは考え方と意識の持ち方かもしれません。
ラズウルスさんはNPCで技能からして武術の達人なので「俺ができるからお前もできる」というつもりで私に避けさせるつもりだったのかもしれませんが。
それはさておき。
もう一つの「相手の攻撃に耐える」はさらにいくつかの手段に細分されます。「防具を着るなど守備力・防護力を上げる」「HPをひたすら高める」「HPを継続的に回復する手段を用意する」などですね。
だいたい戦闘系のプレイヤーキャラクターの持つ防御手段はこちらになります。ドーネルさんも、まあ同じでしょうね。ファーストコンタクトの時の防具を身に着けてないのに硬いのは技能かアーツによるものでしょうし、種族レベル的にも種族的にもHPは高いはずですし、【HP自動回復】の技能も持っていると思われます。
では、それを踏まえて。
ドーネルさんvsミノタウロスジャイアントの戦いがどうなっているか、を見ていきます。
序盤、ドーネルさんが優位に立てたのは「相手の攻撃に耐える」面でアドバンテージを取れたからです。
空を飛ぶという不意打ち、長柄の武器の間合いの内側に入り込む体格の差を逆手に取った戦法で優位に立ち、相手の攻撃を封じました。
簡単に言ってしまえば「相手に攻撃させなかった」わけです。
攻撃を受けなければ、耐える必要もないですからね。
ただ相手のミノタウロスジャイアントも当然、対応してくるわけで。
どうしたかと言うと、巨大な斧を振り回して積極的にドーネルさんを「吹き飛ばし」にかかりました。
これはどういうことかと言うと、純粋な物理演算なのかそういう効果のある〈アーツ〉なのかはわかりませんが、ドーネルさんが近づくたびに斧を振り回して攻撃をガードしたドーネルさんを衝撃で壁際まで吹き飛ばすようにしたのです。
もちろん吹き飛ばして距離が離れるとミノタウロスは「特殊状態:土俵入り」によるダメージを受けてしまいます。ですが、それよりもドーネルさんには相手と離れた状態からまた近づかなければいけない方がデメリットが大きいのです。
体格・武器を考えればドーネルさんが攻撃する距離よりミノタウロスの攻撃する距離の方が長いわけですから、距離を置くことで逆にドーネルさんが近づけずに攻めあぐねて一方的に殴られる時間が増えてきています。
やっぱりボス敵なんですね、ミノタウロス。
こういったメリット・デメリットを冷静に天秤に乗せて計算された対処法を取って来る所にもミノタウロスの「賢さ」を感じます。
それに、ボスモンスターですのでレベルはほぼ同じでも1vs1だとプレイヤーキャラクターよりも能力は圧倒的に上なのでしょう。
「……よし」
手に持ったエーテルブレードに魔力を通して、刃を顕現させます。
元々、フロアボスモンスターはパーティを組んで複数で倒すべき相手。
ドーネルさんが1人で戦ってジリ貧に追い詰められるなら、それを打破するのはパーティメンバーの役割のはず。
ドーネルさんには「挑んでみたかったら自由に割って入ってもいいですよ」と言われはしましたけれど。
……正直、レベル差・実力差に不安はありますが。
格上ボスに挑んでみるんじゃなくて。
一緒に勝つために、参戦しますよっ!
◇◆◇◆◇◆◇◆
ミノタウロスジャイアントに接近。
立ち位置はドーネルさんとミノタウロスを挟んで対角の位置。ちょうどドーネルさんと相対しているミノタウロスの背後を取る形になる所です。
ミノタウロス自身は近づいてきた私のことなどまったく気にしていません。むしろドーネルさんが気づいてびっくりしています。
いや、私のことは気にせず戦って!
とりあえず、力いっぱい横なぎにエーテルブレードを振るいます。
「……かったぁ……っ」
ドーネルさんを斬った時も(斬れませんでしたが)凄い硬さでしたけど、このミノタウロスはそれ以上の手応えです。
……いや、全然歯が立ってないので手応えとは言わない、かな……?
当然ですが、ミノタウロスも私のことなんか無視したままドーネルさんとバチバチにやりあっています。
「……もっと威力のある攻撃、か……」
呟きに応えるかのように、体が勝手に動いてエーテルブレードを両手に握り上段に構えました。
継承している【流派:森羅万勝】の技能が反応してくれたようです……が、よく考えるとどういう仕組みなんでしょうね?
私の感覚だと、「こうする」というふんわりとしたイメージを自分の中でデータ化したらそれが技能を通じて勝手に回収された
「……ぇぃいやああああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
びっくりするほど大きな声が出ましたが、掛け声です。確か現実にも叫び声のような掛け声を上げる武術はあったはずですし。
助走をつけてスピードに乗って勢いをつけて全体重を乗せるように、エーテルブレードを振り下ろし、叩きつけます。
よし。さっきよりはましな手応え。
ぎろり。
ミノタウロスが横目でこちらを睨むように見ました。
「……わっ、と」
ドーネルさんを巻き込むような形で大振りの斧の一撃がこちらまで飛んできました。
流石にそれくらいなら自力でも回避できます。
「うーん、ちょっとはこっちに意識を向けてくれたかと思いましたけど『何かいるな』くらいみたいですね」
そのまま、またドーネルさんの方を向いて戦闘を続けています。
私については「ついでに殴っておくか」くらいだったようです。
ふーむ。さて、どうしてやりましょうか。
さっきの〈アーツ〉で繰り返し攻撃していれば、いつかはこちらの方に意識が向くかもしれません。ただ、さっきの技は助走つけて全体重をかけて剣を振り抜かないといけないので、1回の攻撃に時間がかかるんですよね。それではドーネルさんの戦いに介入する力は弱いですし、下手すると私がゆっくり攻撃している間にドーネルさんが耐えられなくなってやられるかもしれません。
よし。
ここは最上階の部屋の蔵書を読み漁っている時に見つけた「奥の手」を使ってやりましょうか。
いったん、エーテルブレードへの魔力の供給を止めて刃の顕現を止めます。
で、柄の部分にある機構をちょっと弄って。
「これでよし、と。それじゃあ【魔機工学】のレシピで見つけた新機能、見せてやりましょうか。エーテルブレード『
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