第16話 動きやすさ重視でぴったりですね。
『何だ、珍しく長く寝てたな、姫さん』
「え? ああ、まあ、そうですね」
ログインして目覚めたら、ラズウルスさんにそう言われました。
そうでしたっけ? と思いましたが、現実時間で約1日ぶりのログインなので、ラズウルスさん視点で見れば、寝ている時間が長かったのでしょう。
え? 廃プレイしてる?
いやぁ、そんなことはないはずですが……割と寝食の時間を惜しんでプレイしてたのは、あるかもですけど……これは、遊びではなく調査ですから……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
というわけで、3階(階層的にはB1F?)のフロアの探索に向かっています。
2階から3階に上る階段は奇跡的に壊れてなく使用することができましたので、楽に3階に上がることができました。
これが壊れていたら、ちょっと大変でしたので助かっています。
3階の床も壊されて大きな穴が開いているのですが、2階の床に開いている大穴よりも一回り小さい大きさになっています。そのため、2階の床から【魔法】で石壁を垂直に立ててハシゴ代わりに伸ばしても、天井に当たってしまい3階の穴から上に登ることができません。
では、どうすればいいかというと、2階の穴から反対側の3階の穴(2階の天井の穴でもありますね)の縁に斜めに石壁のハシゴをかけてやればいいわけですが。元が「石壁」なので垂直に建てるのは簡単なのですが、斜めに倒すのは意外と難易度が高いのですよね。
3階は、フロアの真ん中に1本通路が通っていてその両側に個室が並び、通路の1番奥に大きめの部屋が2つ並んでいるという構造になっています。天井や壁はぼろぼろですし、床には大穴が開いていますが、2階と比べると破損状況はひどくないようですね。
ラズウルスさんから聞いているのは、3階はマギドールの人たちの居住区域にだったそうです。壁や扉が壊れている部屋から個室の中の様子がうかがえますが、安めのビジネスホテルの個室みたいな部屋をイメージしてもらえたら、わかりやすいかと思います。
結構狭いのでマギドールの方々の住宅環境はあまりよくなかったのでは。
「うーん、マギドールの人たちの死体もそこそこありますけど……あんまり状態はよくないみたいですね」
元が居住区域だったからでしょうか。マギドールの人の死体は2階よりも多くある気がします。ただ、1階にあった死体よりさらに破損状況がひどい感じです。何か鋭い牙でかじられたような死体が多いですが、そこは気にしないことにしましょう。
元々、マギドールの構造というのは「
マギドールの胴体にはこの
この「胴体部分がきちんと残っている死体」というのが、現状、まったく存在しないのです。
マギドールが死んでいるということは、つまり、
こう、不謹慎なのは百も承知なのですけれど、手足がもげてそこから失血死したような死体でもないだろうか、と思っていたのですが……今のラズウルスさんのように、マギドールは
私はマギドールですけど、たぶん最初の死は失血死のはずなんですけどね。やっぱり、神さまが創ったらしいので、何か違うのでしょうか。
「もしだめなら、自力で修理できるかやってみないといけませんが……あっ」
とりあえず、壊れていない部屋の扉を開けて、中を探っているとこんなものが。
《戦闘用侍女服(クラシカル)》
種別:服(上半身/下半身) レア度:R 品質:C+
守備力:+10 防護力:+2
重量:15 耐久度:90%
特性:【耐毒】技能に+15レベル。
【調理】【清掃】【洗濯】技能に+3レベル。
【MP最大値上昇】技能に+5レベル。
《戦闘用ホワイトブリム》
種別:装飾品(頭) レア度:R 品質:C+
守備力:+2 防護力:±0
重量:3 耐久度:89%
特性:【耐毒】技能に+5レベル。
【MP最大値上昇】技能に+3レベル。
クローゼットと思われる棚にハンガーで吊るしてありました。
いわゆる「メイド服」と言うものですね。
ベースは黒で白いエプロン、全体的にフリルや装飾が多く、アニメや漫画などに出てくるメイド服のイメージそのままな感じです。頭につけるカチューシャも同様です。
「悪くないですね」
今、装備は靴をのぞいて何もつけていない状態です。このメイド服の防御効果がどれほどのものかはわかりませんが、特性で技能に補正もかかるようですし、初期服よりはまず間違いなく性能は上です。
いったんプレイヤーズブックのインベントリにメイド服をしまって、自分の見た目を3Dホログラムで表示してくれるページを開きます。身に着ける装備品はここで変更が可能です。ひたすらにリアリティを重視していることが売りの「Dawn of a New Era」ですが、実際に着替える必要はないようです。やっぱり服が脱げて裸になれてしまうと色々とまずいからでしょうね。
メイド服を指定し、装備品を変更すると、表示されている3Dホログラムの見た目が変わると同時に私が着ている服もメイド服になりました。サイズも自動的に調整してくれるようです。
あとは頭のカチューシャですが……これはつけないことにしました。
これつけると本当にメイドさんになるので。メイド服だけなら、デザインとしてもクラシカルなドレスに、まあ、見えなくもないですし?
◇◆◇◆◇◆◇◆
通路の1番奥の2部屋のうち、1部屋は休憩所のようでした。
大きなテーブルと簡素な椅子がいくつか置いてありました。あとは収納ケースみたいなものがいくつか置いてありましたが中には何も入っていませんでした。
もう1部屋は床に瓦礫とともによくわからないものが散乱している部屋です。
大きな棚が倒れたようでそこに収められていたものが散らばったのでしょう。
それより目立つものが部屋の壁際にあります。
「これ……!」
目を閉じた、女性型のマギドールです。
作成途中、という感じで、服を着ていない状態で下半身がなく、背中側が大きく開いており「
あと棚が倒れかかってきており、ぶつかって左腕が大きくひしゃげています。
が、何より大事なのは胴体部分に損傷が見えないことです。
「あー、なるほど……ここは、マギドールの製作室かメンテナンス室、なんですね」
よく見れば床に散らばっている物の中に工具が混ざってますし、瓦礫の中に埋もれていましたが《簡易錬金台》と《簡易作業台》がありました。
《簡易作業台》だと……!?
《簡易作業台》
種別:道具 レア度:C 品質:C
重量:220 耐久度:77%
特性:【魔機工学】で取得した〈アーツ〉〈スペル〉の行使のために必要。
見た目はちょっと小さめのテーブルくらいの金属製の台に色々な工具がコードでつなげられている感じですね。
これは持って帰りましょう。というか、こんなものがあったんですね。
あとは製作途中だったマギドールの体と、個室の探索で見つけていた、今、私が着ているメイド服とは別のメイド服が今回の戦果ですね。
別のメイド服とは、今、私が着ているクラシカルスタイルのロングスカートのメイド服とは別デザインのミニスカ型になります。
ラズウルスさんの体を再生させたら着る服が必要ですし、動きやすさ重視でぴったりですね。
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