第13話 地味に1番嬉しかったのはこれかもしれません。
さて、今回使った【魔法】ですが。
〈スペル:石〉
これは、【魔法】のうち主魔法〈スペル:土〉から派生した主魔法になります。土属性はむしろこの〈スペル:石〉の方が良く使われたりしますね。石を弾丸にして飛ばして攻撃したりとか、です。
〈壁〉
これは主魔法の属性の壁を作る効果を与える副魔法になります。壁を作る魔法は便利で汎用性が高いですね。比較的大きく(壁なのでサイズが大きい)、効果時間が長いのが特徴です。
〈変形〉
これは主魔法の形状を変化させる効果の副魔法です。今回は壁を高く、細くするのと間に等間隔に穴をあけることでハシゴ型にするために使っています。
〈時間延長〉
これは主魔法の効果時間を延ばす効果の副魔法です。ハシゴを作ってもすぐに消えてしまっては探索時間が確保できません。MPを限界までつぎ込んだおかげで、ゲーム内時間で1日くらいは維持できるようになっていましたね。
この組み合わせで、壁を変形させた石のハシゴを作っています。
最初は石を積んで階段にしようとか思ったんですけど全然MPが足らなくてですね。【MP最大値上昇】とか【MP回復上昇】とか技能まで覚えたんですが、それでも全然足りなくて、最終的にこうなりました。
案外上手くいったので私的には満足です。
で、2階までの高さのこのハシゴ。石製で滑りやすそうですので、
ゲームのキャラクターとしてはレベルも上がって敏捷(AGI)も高くなっていますので、特に問題なく登ることができました。
ただ、垂直に近い壁をわずかな手掛かりを頼りに登ってる扱いになるのか【登攀】技能を取得してしまいました。
これはこれでラッキーだったと思いましょう。
「さて、到着しましたけど」
2階の様子は、というと。
まず両端に階段があります。
1階から2階に上がる階段は崩れていましたが、ちらっと見える感じだと2階から3階に上がる階段は壊れていないようです。3階へ同じように石壁のハシゴを作って登るのはちょっと大変そうでしたので、階段が使えるならありがたいですね。
元は凹型に部屋が並んでいる構造だったようです。
けれど、今はフロアの真ん中に大穴が開いており、床が残っている部分も少なく、部屋のほとんどが崩れてしまっています。
フロアの隅にある部屋が2部屋だけ、かろうじて形を残している、という感じです。
「つまり。あの部屋のどちらかに【錬金術】用アイテムがないと、計画は破綻、ということでしょうか」
いいアイデアだと思ったのですが、いざ始めてみると出たとこ勝負というか運任せになっていますね。ま、【魔法】の感触は何となくつかめましたので、ダメならその方向で行ける、ということで気負わず行きましょうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆
残っている2部屋のうち、最初に入った部屋は。
キッチンでした。
「……いや、あの。古代文明? だとは思いますけど」
こう、ド直球でシステムキッチンが置いてあるとは思わないじゃないですか。
「Dawn of a New Era」て剣と魔法のファンタジーでしたよね?
特に見覚えはない、本当にただの一般的なキッチンです。
一応、水道と思われる蛇口とレバーや、コンロのスイッチみたいなものがありましたので全部いじってみましたが、水が出たり火が点いたり、ということはありませんでした。
「壊れているのか、電気? いや、電気ではなくてこの場合、魔力とかでしょうか。それがないので動かないか……ですかね?」
棚も開けてみますが、たぶん元は皿だったらしきものが割れた破片が大量に。
あと、かなり傷んだ鍋とケースに入っていたので比較的綺麗な包丁。
《ミスリル出刃包丁》
種別:短剣/道具 レア度:R 品質:C
攻撃力:+11 貫通力:+9 防御補正:±0
重量:2 耐久度:92%
特性:【調理】技能に+3レベル。
〈調理:切り〉の成功率に+20%。
《ミスリル両手鍋》
種別:両手鈍器/両手盾/道具 レア度:R 品質:C
攻撃力:+3 貫通力:+1 防御補正:+2 守備力:+4 防護力:+4
重量:10 耐久度:16%
特性:【調理】技能に+1レベル(+4レベル)。
〈調理:煮る〉の成功率に+8%(+20%)。
【鑑定】もレベルがあがってデータが見えるようになってきましたね。
……いや、何ですか、これ。
ミスリルって有名で希少な金属ではなかったですか?
古代文明だからいいのですか。いいのかな?
あと、出刃包丁を短剣として見るのはいいですが、鍋を盾……?
鍋は壊れかけですし持ち運びには邪魔ですけど、包丁はナイフ代わりくらいにはなりそうなのでもらっておきます。なにげに武器2つ目ですね。
それで、もう1つの部屋へ。
こちらは扉はこわれていましたが、壁は何とか残っている……という状態です。
見慣れない、一見すると製図台のような台と土鍋みたいな入れ物が置いてあり、床には瓦礫と割れたガラスらしきものが散らばっています。
台と釜は【鑑定】するとそれぞれ《錬金台》と《錬金釜》と表示されました。
どうやら、【錬金術】の作業をするための部屋だったようです。
「よしっ」
思わず小さくガッツポーズが出ました。
割と行き当たりばったりだったのは否定できませんが、賭けに勝ったのでよしとしましょう。
まずは台の方に手を置いてみます。
台に描かれていた円と複雑な模様、文字らしきものが淡く光り、目の前にウィンドウが表示されました。
『【錬金術】製作
道具:錬金台
≫〈合成〉
≫取得済レシピ
≫【魔機工学】
マギナーヴ
マギボーン
マギマッスル 』
なるほど、こんな感じになるんですか。
では、試しに「マギナーヴ」というのを選んでみます。
『≫レシピ:マギナーヴ:0%
→使用する素材を錬金台にセットしてください』
新しいウィンドウが開いて、こんな表示が出てきました。
レシピ、というからには必要な材料が提示されるのかと思いましたが、何も出てきません。これだと、作成するのに何が必要かもわかりませんが。
試しに、さっき拾ったミスリル出刃包丁を錬金台に置いてみます。
錬金台の光る場所で色が変わった部分があるので、おそらくそこに置け、ということなのでしょう。
『≫レシピ:マギナーヴ:32%
▶《ミスリル出刃包丁》:32%
→使用する素材を錬金台にセットしてください』
おお?
表示が変わりましたね。新たに光の色が変わった場所ができましたので、さらに何か置くことができるのでしょう。他に持っているものはなかったので、適当に落ちていた瓦礫を拾っておいてみます。
『≫レシピ:マギナーヴ:0%
▶《ミスリル出刃包丁》:0%
▶《エーテルモルタルの破片》:0%
→使用する素材を錬金台にセットしてください』
あれ、全部0%になってしましましたね。
ガラスの欠片みたいなものを拾って瓦礫の代わりに置いてみます。
『≫レシピ:マギナーヴ:0%
▶《ミスリル出刃包丁》:0%
▶《ガラス片》:0%
→使用する素材を錬金台にセットしてください』
やっぱり全部0%のままですね。
うん。これ、思ったより難しいな?
これはちょっと戻ってログアウトした時にでも使い方を調べた方がいいかもしれません。いったん置いておくことにします。
とりあえず【錬金術】が使えることがわかったので、それでいいですしね。
あとは部屋に何か残ってないか、瓦礫をどけたり棚があったらしき場所とかを掘り返してみたりしましたが。
《簡易錬金台》
種別:道具 レア度:C 品質:C
重量:120 耐久度:62%
特性:【錬金術】で取得したレシピでの生産が可能。
まず見つかったのがこれです。
最初に使ってみた《錬金台》と同じように使えそうです。最初の《錬金台》は固定されていて移動させられなかったのですが、これはそれよりはやや小さくて、動かせそうです。ただ、重量はともかくとして私の小柄な体では持って運ぶには結構大きいので、これを持ったままハシゴを降りるのは無理でしょう。
それともう1つ。
《保冷水筒》
種別:インベントリ レア度:R 品質:C+
重量:5 耐久度:64%
特性:液体を1枠1リットル保管できる。
温度変化への抵抗力+80%。
地味に滅茶苦茶ありがたかったりします。何せ、コップもなくて今まで水の出る蛇口から直飲みしてましたからね! あと、今後、街の外に出るためにダンジョンを攻略しないといけないとなら水を持ち歩く必要がでてくるため、絶対に必要なアイテムでした。
地味に1番嬉しかったのはこれかもしれません。
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