我慢した結果
異端者
『我慢した結果』本文
この話は、男性の私が大学生の頃に体験した実話をもとに脚色したものです。
「脚色」といっても、記憶が曖昧な部分があるため補完した程度で、物語の大筋を変えていないことをご了承ください。
当時、私は電車通学で少し離れた大学に通っていました。
片道一時間以上というのは、他に費やす時間を考えれば結構な浪費でしたが、独り暮らしをすることを考えれば利点の方が大きかったでしょう。
夏の遅い時間、既に日が暮れた中で私は帰宅するため電車に乗りました。
幸い乗客の数もそこそこで、なんとか座ることができました。
どこの駅からかまだ若い女性が乗ってきて私の隣に座りました。
私はその時、着くまでの暇つぶしに文庫本をカバンから取り出して読んでいました。
通学中に本を読むのは、私の数少ない娯楽であり着くまでの暇つぶしでした。
しばらくすると、彼女が肩に寄りかかってきました。
私はその重さに隣を見るとどうやら眠っているようでした。
――きっと疲れているんだな。このままにしておいてあげよう。
正直、生暖かさや重みもあって見ず知らずの女性に寄り掛かられるというのはあまりいい気分ではありませんでしたが、あえて素知らぬ振りをすることにしました。
私はページをめくるのにちょっと邪魔でしたが、疲れて眠っている彼女を起こさないように注意を払いました。
その間にも電車は進んでいき、彼女は目を覚ましました。
その時、彼女はどうしたと思いますか?
目を覚ますと驚いたように立ち上がり、こちらの顔を確認するや否や、無言で嫌そうな顔をしたのです。
そしてそのまま一言も発せずに去っていきました。
私はその時「酷い」と心の中でつぶやきました。
確かに私は無言でも女性の寄ってくるような綺麗な顔立ちではありません。顔立ちだけでなく体格も男性にしては貧層です。
しかし、彼女のしたことは非礼以外の何物でもありません。
「ありがとう」でも「すみません」でもなく、自分が勝手に寄り掛かった男性が好みでなかったから嫌そうな顔をして立ち去る――これがまかり通って良いものでしょうか?
日本は男尊女卑だと言って女性の権利ばかりを主張する方も居ますが、それでも「女性様」の一方的に評価するこの姿勢は許されるものではないと思います。
あなたが逆のことをされたら、それが不快ではないのか? ――そう問いたいです。
男性は痴漢冤罪を恐れながら電車に乗り、女性は見ず知らずの男性を見下して許される。そんな社会は幽霊よりもよほどホラーだと思います。
不快にされた方には失礼いたしました。
しかし、こういった矛盾が日常でさも当たり前のように行われていることが我慢ならなかったので、今回便乗して公開させていただきました。
完
我慢した結果 異端者 @itansya
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