第三話 悪は闇にさまよう
どこかにある闇におおわれた空間。その中央に人の気配がある。
光の支配の及ばぬ領域、黒く染まったそれらは暗い声を出す。
「遥かなる天のミザがやられたようだな」
「奴は四天王の中でも最強」
「なんで死んだの?」
「空から落ちて死んだらしい」
「遥かなる天とか名乗ってたのに飛べなかったの?」
光差さぬ空間を重苦しい沈黙が包む。
「とりあえず、何かが起きている。調査の必要があるな」
「俺が行こう」
闇の中、何かが立ち上がろうとして、テーブルに足をぶつけてうずくまった。
「くっ、この痛み、忘れんぞ……」
「では、狂える赤い炎のゼン、お前に任せよう」
「なんで明かりつけないの?」
「ふっ、任せておけ!」
真っ暗な中、うずくまっていたゼンは颯爽と立ち上がる。上昇する頭部はテーブルに衝突して鈍くいびつな音をたてた。
ゼンはその場でくぐもった声を出しながら再びうずくまる。
「うぐううう、この痛み、この怒り、忘れんぞ……」
「何に対して怒ってるの?」
よろよろと立ち上がったゼンは、完全な闇の中を手探りで進み、何かにけつまづいて派手にすっころんだ。
なにかよく分からない物を巻き込んだ転倒。突如響いた大きな音に驚いた配下の者たちがあわてて部屋に飛び込んでくる。
彼らは真っ暗闇の中、床に倒れたゼンの上を「大丈夫ですか!」と言いつつ何の遠慮も無く往復。その度になんか嫌な音がした。
「こっ、こんなところで終わらんぞォー!」
吼えるゼンの顔面を誰かがうっかり踏んだ。
狂える赤い炎のゼン――
どうにかがんばって怪我人と喧騒は運び出され、空間にまた静寂が戻ってくる。
暗く静かな中に、人影が二つ。
「狂える赤い炎のゼンがやられたようだな」
「バカなの?」
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