璃華達の本音
ここで時系列は飛んで2037年の5月14日。現在15歳、中学3年生になった千陽は受験勉強やらで忙しい中でも時間をとって、陽梨の1歳の誕生日のお祝いのため、咲里とともに璃華達の家を訪れた。
「わぁ、陽梨ちゃんおおきなったね」
千陽は自分が父親と言うのもあってしょっちゅう会っているが、咲里は久しぶりに見る陽梨の成長ぶりにわっと驚く。
「うん、もうあんよも覚えて、どこさんでんはってく(あちこち動き回る)けん、いっちょん目ぇ離せんもん」
ほんと大変なんだけんと言いながら、どこか自慢気な弥咲。で、陽梨が最近言葉を覚え始めて、何も教えていないのに千陽の顔を見るといつも「ぱっぱ」と言うのだが、それを初めて聞いた咲里が驚く。
「なんか子供の本能的に分かるんかな・・・ちゅうかやっぱ千陽と弥咲姉ちゃんの子だけん、美形よねこん子も」
「えみちゃん、それ私には似とらんて事?!」
弟嫁の何気ない言葉に、ショックを受ける璃華。
「あ、ごめん璃華姉ちゃん、千陽に似とるて事は、千陽とそっくりな璃華姉ちゃんとも似とるて事だけん・・・」
「あ、そ、そぎゃんこつね・・・ほんで改めて、あんた達も今、勉強忙しかろて来てくれてありがとね」
「「んねんね」」
千陽からすれば、陽梨は自分の娘だし、咲里からしても、将来を誓い合う彼の娘は自分の娘も当然だし、何よりも優先するのは当たり前でしょ?みたいな顔を姉夫婦に向ける。して、この世界の男子とあって、子供の相手は得意な千陽が陽梨と遊んであげている間、彼の姉夫婦と3人で話す咲里。
「璃華姉ちゃん、弥咲姉ちゃん、陽梨ちゃんな千陽の子てから、その旦那の私がなんもできんでごめんなさい」
一応、自分も千陽の婚約者という立場であるのに、陽梨が産まれてからなかなかこの家に顔も出せず、何もできずにいた事を後ろめたく思い、義姉夫婦に頭を下げる咲里。しかし璃華と弥咲にすれば、そんな事気にしてもなく、そもそもそんなに気を使わせて申し訳ないと逆に咲里に謝罪する。
「あんたもほんなこて心の優しか子だけんね・・・ばってんほんと、私達にはなんも気使わんちゃよかけん」
「ばってん陽葵姉ちゃんにも、ちゃんとしろよて言われたりするし・・・」
「「あん人な子供になんば・・・・・・」」
自分達としたら、もちろん千陽は大事な弟であるが、今ではそのフィアンセの咲里も、心の底から妹のように大事に思っており、陽葵が彼女に何かプレッシャーを与えるような事を言っているんだなと、その妹の表情から察して、私達は味方だけん大丈夫と告げる。
「今後またひま姉になんか圧かけられたら私達にすぐ言えよ」
「ばってん璃華姉ちゃん達からしても、私は大事な弟ば奪った・・・「「そぎゃん思とるわけにゃあどが」」
「姉として、大事な弟が幸せんなるなら、えみちゃんがちーちゃんば幸せにしてくるんなら、普通に嬉しかこっだろたい」
璃華の言葉にうんうんと頷く弥咲。そして、そんな璃華達の本音を初めて聞いた咲里は、その思いに、本来なら他人であるはずの自分に向けてくれる、その家族愛のような愛情に、双眸を崩す。
「千陽と出会って、姉ちゃん達にも出会えてほんとよかった・・・」
「ふふ、あんたがちーちゃんにプロポーズしてくれた時も言うたろ?私達の事、ほんなこて姉ちゃんと思てよかて」
そう言って、咲里の頭を撫でて微笑む璃華。璃華も弥咲も千陽に好きな人ができたと聞かされ、初めて咲里に会った時は「この子どぎゃんもんだろ」とか冷ややかに思っていたりしたが、それからほどなくして、自分達にも全く物怖じしなかった咲里に感心して、元々の優しい性格からいつしか、そんな彼女の事を常に気にかけ、今では自分達にとっても大事な、本当に妹のような存在になっているのだ。そして、弥咲も、そんな妹に言葉を紡ぐ。
「だけんね、えみちゃん。あんたがなんか困った時とか、悩んだ時は私達のおるけん」
「・・・うん、璃華姉ちゃんも弥咲姉ちゃんもありがとう」
で、話している間に時間は過ぎ、千陽と咲里はここに泊まる事となって、最近ずっと勉強を頑張っていて疲れているのか早めに寝入る「弟夫婦」を微笑ましく見つめる姉夫婦であった。
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