充希の愛情
2036年 12月
喪中であってもクリスマスはそもそも舶来の風習とあって関係ない、それに家族が普通にしてないと、春美も心配していつまでも浮かばれんだろうとの事で、普通にパーティをする葛西家。千陽は家に呼んだ咲里と部屋で2人過ごす。
「千陽のじいちゃん、プレゼントだけじゃなくて小遣い銭までくれたばってん、なんか申し訳にゃあな・・・」
そう言って、亮にもらった封筒をどうしようかと千陽に相談する咲里。
「まあくれたもんわざわざ返すともあれだし、とっとってええたい」
「そっかぁ・・・ほんで話変わるばってん、いつもなら恵梨ちゃんもここさん一緒におるはずが、やっぱにーによりじいじのがよかっだろかな」
「まああれも末っ子だし、なんさん甘えたどん(甘えんぼさん)だけんね」
「千陽も恵梨ちゃん産まれるまではそぎゃんだった?」
「まあ・・・男子だけんお姉ちゃん達にも過保護されよったし・・・」
「されよったて過去形にしよるばってん、今もだろたい。私、璃華姉ちゃん達に会うとしゃがないつも「ちーちゃんなどぎゃんしとる?」とか聞かれて、「ちゃんと守れよ」て言わるっし。陽葵姉ちゃん達と芳美姉ちゃんからも、あん人達忙しかろて、しょっちゅう連絡来るしね」
「それはうちの姉達がご迷惑を・・・・・・」
「んねんね。姉ちゃん達が千陽ば大事に思うとな当たり前のこっだし、そぎゃん人達に、まあ腹ん底じゃ何思われとったっちゃね、さしよりでん、そぎゃん大事にされとる千陽の婚約者として認められとっとだて思たら、私も自信なるし」
「ポジティブね、咲里は」
「まあいちいちあん人達の顔色伺ったりするごた奴なら、千陽も好きになってくれとらんど?」
「ふふ、そうね。そん通り、いつも女らしく堂々として強か咲里が、僕はたいぎゃな好いとっけん・・・咲里な僕のどこが好き?」
「名前ん通り、いつも明るく周りば照らしてくれるとこ、表情豊かでかわええとこ、なんでも真剣に向き合うとこ・・・言うなれば全部たん」
「・・・・・・」
「いつも気の強かくせして、こぎゃん時見せるそん照れ顔も、な」
「もう・・・」
お互いの好きなとこを言い合って、付き合った当初、小学4年生の頃と何も変わらずイチャイチャする2人。そして、ある程度イチャイチャし終えたところで、タイミングを見計らったように、紙袋を持った充希が千陽の部屋に入ってくる。
「これ、僕と咲良から2人にクリスマスプレゼントね」
「わ、ありがとう充希兄ちゃん!」「ありがとうございます」
「充希兄ちゃん、すぐ開けてもええ?」
「もちろん」
紙袋の中に入っている可愛くラッピングされた小さな箱を丁寧に開け、なんだろねとワクワクしながら中身を取り出す千陽達。
「ピンキーリング・・・ペアリングだ!わぁ、ほんとありがとう、さすが充希兄ちゃん」
「ほんとありがとうございます」
「んねんね、あんた達に喜んでもらえたならよかった。えみちゃんもそぎゃんかしこまらんちゃよかよ、おっちゃん達の勝手にしよるこっだけん」
「ばってん千陽と付き合うごんなってから毎年毎年・・・大人になったらちゃんとお返ししますんで」
「僕も、充希兄ちゃん達には普段から世話んなっとるし・・・」
「なんなん、ふたっともまだ子供なんだけんそぎゃんと気にせんちゃよかて。隼瀬も冬未ちゃんもいつも言うどだい?親が子供の為にするこつは見返りとかば求めるわけじゃにゃあて」
「「たしかに・・・」」
「だけん今ん内はまだ、僕達とか隼瀬達とか親にいっぱい甘えときね、分かった?」
「「う、うん・・・」」
千陽と2人して、充希によしよしと頭を撫でられながら、自分の親じゃないこの人達にまでこんなに愛情を普段から注がれている千陽が、改めてちょっと羨ましいなと思う一人っ子の咲里であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます