突然の別れ
※今回の話では千陽はほぼほぼ出ません
2036年 8月
先月の事件の後、両親や咲里、カウンセラーのサポートで割とすぐに元気になった千陽。この日も、恵達と友達数人で遊びにでかけていた彼だが、その途中、パパから大事な話があるので至急帰れとの連絡を受け、慌てて帰ってきた。
「ただいまぁー・・・パパ、大事な話ってなんね」
「うん・・・あんね、ばぁば・・・ママん方、葛西のばぁばがね、今朝倒れてそんまま亡くなったって・・・・・・」
「え・・・ばってん昨夜も電話してきて、普通にいつもんごつ元気そうだったたい・・・・・・」
「うん、だけんじいじもね、まだ信じられんて言いよるし、パパもママもそぎゃんばってん、ほんなこって・・・・・・さしよりママと陽葵達とかみんな帰ってきてからあっちん家行かにゃんけん、あんたも制服着替えときね」
「うん・・・」
突然の事で家族としても混乱する中、とりあえずみんな集まってから、冬未の実家へ来た家族。
「ホッとしたごた顔しとんね・・・」
「ほんなこつね・・・」
家へ帰ってきた春美の遺体の、その安らかな表情に少し安心する冬未と隼瀬。ただ、死因が若い頃の過労がたたった事による急性心不全と聞いて、冬未は自分のせいで母は・・・との思いを零すが、亮はそれを一喝する。
「ばか、そぎゃんこつ言うもんじゃにゃあ。あんたと隼瀬ちゃんが結婚して、陽葵が産まれた頃も言うたろが、親の子供んためにする苦労は当たり前て。だけん、お母さんが死んだつば自分のせいとか思うな。人間、いつか別れはくっとだけん、それが今日だっただけんこったい」
しかしそう言う亮にしても、結婚前、まだ幼い子供の頃から60年以上も寄り添った妻との、あまりの突然の別れをすんなり受け止めきれるはずもなく、娘夫婦や孫達の前だから、なんとか平静を保っていられる状態であった。そして、昔から世話になっているそんな義父の内心を見抜く隼瀬は、彼と2人で話をする。
「お義父さん、変な事考えよんならやめてよ」
「・・・ばってんずっと一緒におった相手が突然おらんくなって、僕もどぎゃんしたらいいか・・・・・・」
「ばってんお義父さんも立て続けにてなったら冬未は、僕も、子供達だって・・・だけん、お義母さんの後ば追うとか絶対やめてはいよ」
「そうね・・・あんた達ん事なんも考えんで・・・ごめん」
「んね・・・僕も冬未がもしこぎゃんなったら多分、お義父さんと同じ事考えちしまうどし・・・・・・」
「隼瀬ちゃん・・・そっか、あんたな僕と一緒だけんなんでん気持ち分かってくれるもんね」
「うん・・・だけんお義父さんばこのまま1人にしたくにゃあけんね」
義父が妻の後追いをしようと考えるのを、自覚できなくなった力を冬未が無意識に使って、なんとか止めた隼瀬であった。そして、通夜、葬儀とバタバタで行われ、すぐに初七日が過ぎ、改めて同居の件を本気で話し合う亮と娘夫婦。
「ちゅうか、お母さんの位牌とか家に持ってきて、うちでお父さん面倒見たがよくにゃ?」
「ばってん冬未、ここ思い出のいっぱいある家だけんて、わざわざ買い取ったわけだろたい。そぎゃん簡単に・・・」
「ばってん・・・お父さんはこん家離れたくないと?」
「んー・・・ここおると春美さんの事ずっと思い出してしまうし、冬未の言うごつしたが・・・」
「まあお義父さんがそぎゃん言うなら僕としても・・・」
「ばってんあんた達、千陽と恵梨にはちゃんと話した?急にじいじも一緒に住むて混乱せんね?」
「うん、まあ上3人が出てってからあん子達もちっと寂しがりよるし、むしろ喜んどるばい」
「そんならよかった・・・ばってんここはやっぱ、隼瀬ちゃんの言うごつ思い出もいっぱいあるけん、空き家にするわけもいかんしね。あ、暁美ちゃん達のおるか」
というわけで、冬未の生まれ育ったこの家は隼瀬の姉夫婦に住んでもらう事とし、冬未隼瀬夫婦が亮を引き取る事にすんなり決まったのであった。
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