事件



 2036年 7月



 14歳になって益々綺麗で男らしくなりつつある千陽。まあその端正な容姿から、この女だらけの世の中で変なのに狙われたりもするわけで・・・・・・



「森くん!すぐ来て!千陽が!」



 夏休み前の学校で、恵が慌てた様子で咲里を連れ出す。



「メグちゃんどしたつや・・・さしより落ち着いて」



「千陽がね、体育館裏でタバコ吸いよった連中に注意したらね、あいつら逆ギレして千陽ば・・・千陽も抵抗したばってん女ばっかに勝てるわけも・・・・・・とにかく来て!」



 わけも分からぬまま、千陽がその彼女らに連れられていったという旧野球部室へ恵と一緒に向かう咲里。



 数分後 旧野球部室



「葛西、お前ん事はずっとヤリたいて思いよったつたいなあ」



「ふざくんな、お前らなんかに汚されてたまるかい」



「縛られて身動きとれんとに威勢はええな・・・さ、お前の友達がお前の彼女連れて戻ってくるのと、俺らにやられちゃうのどっちが先か・・・・・・」



 そのフラグのような不良の台詞を回収するように、怒り狂った咲里がドアを蹴破って入ってくる。



「千陽!なんもされとらんや?!」



「うん、大丈夫!ありがとう咲里!」



 そして、咲里は千陽を縛っていたロープを解いて、騒ぎにならないように恵と一緒に人目に付きにくいルートで保健室まで行けと指示。彼女は5人の不良達を怒りに任せてボコボコにするわけでもなく、犯行に使おうとしていたロープで彼女らを繋いでそのまま学校警察官駐在所へ連れていった。



「恵美姉ちゃん、こいつら千陽に乱暴しよかしよった」



「ほんなこつや?お前ら私の親友の大事な息子に手出すとかよか根性しとんね。ちゅうか咲里、ようボコボコにせんかったな」



「なん、こぎゃんやつら殴った手で千陽の手握れんたい」



「はは、冬未んごたこつ言うて。なら先生達にも私から話すけん、咲里はもう行ってよかばってん、後でちーちゃんと一緒に話だけ聞かせて」



「分かった!」



 駐在所を出て、走って保健室に向かって、保健の南先生に色々診てもらってとりあえずベッドに横になる千陽を抱きしめる咲里。



「ごめんな、私が目離したけん・・・」



「んねんね、僕の危機管理能力の問題だし・・・あいつらは?」



「恵美姉ちゃんとこつき出してきたばい」



「そっか・・・ばってんあん時、メグもおらんで咲里が来るの遅かったら僕ほんなこてあいつらに・・・・・・」



 咲里が奴らを警察につき出したと聞いて、安心したのか張り詰めていた緊張の糸が解け、やっと涙をポロポロ零す千陽。



「千陽・・・」



「咲里、これからずっと僕の傍から離れんでおって・・・ずっと僕ば守って・・・もう力じゃ女子には勝てんけん・・・・・・」




 そう言って自身の胸を濡らす千陽を、その自分にぶつけてくれた彼の心の傷をしっかりと抱き留める咲里。その後、恵美が男性私服警官を呼んで千陽本人と、事件目撃者の咲里と恵にも事情を聴き、犯人グループの少女達は逮捕となって、千陽はスクールカウンセラーと面談した後、迎えに来た隼瀬とそのまま帰る。



















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