ずっとここにおる



 ここで時系列は飛んで2036年、千陽の14歳の誕生日の少し後、彼の義姉、弥咲が元気な女の子を出産。夫婦は生物学上の父親にあたる千陽と3人で相談して、その子は陽梨あかりと命名された。



「みさねえ、璃華ねえ、僕もこん子のパパとして、できるこつはしてくけん安心してよ」



 姉夫婦が現在暮らす家で、陽梨を抱っこしながら、2人にそう告げる千陽。



「「ちーちゃん・・・ありがとう」」



「まあ言うても、僕もこれから高校受験とかもあるし、そぎゃんな、なんでんかんでんできんかもしれんばってんね」



「なんなん、よかよか。ちゅうか、ちーちゃんもそぎゃん、パパだけんとか気負わんちゃよかけん」



「弥咲ん言う通り、、ほんなこてたまーに手伝ってくれたりすりゃよかけん」



「うん・・・ありがとうみさねえ、璃華ねえ。てかみさねえは専業になるて事ばってん、璃華ねえも一応産休育休取れたつよね」



「うん、流石に弥咲1人になんでん押し付けるわけいかんし、会社側も理解してくれて」



「そっか、よかったたい。なら今日はそろそろ帰ろかな、あんま遅くなると恵梨が泣くし」



「はは、そうね。ならまたね、ちーちゃん」



「うん、みさねえもまだ産後そぎゃんたっとらんし無理せんごつね」



「はいはい」



 弥咲と陽梨にバイバイと手を振って、璃華に車で家へと送ってもらう千陽。



「璃華ねえ、自分も産みたいて思う?せっかく女同士で結婚してお互い産める可能性はあるわけだし」



「まあ多少はね・・・ばってんなんか産むの怖いて思うとこもあるし、いつか機会があればね」



「そっか。まあお姉ちゃん達もまだ若いしね」



「そうそう」



 そんな話をしている内に、すぐに千陽達の家へと着き、すぐに帰っていく璃華を見送って、玄関で待ちくたびれた様子の恵梨を抱き抱え、そのまま部屋に連れていく千陽。



「あんたももう3年生なったっだけん、ちっとはお兄ちゃん離れせんね」



「えー、だって姉ちゃん達皆おらんくなったし、にーにはおる内に色々しときたいとだん」



「そっか・・・」



 恵梨が産まれた時には陽葵と陽斗は既に家にいなくて、芳美もその数年後には出ていって、そして2年前には璃華と弥咲も出ていって、自分も寂しい思いはあるが、恵梨もそうなのか、彼女はいつか兄の自分も出ていっちゃうと思って寂しくなって、最近やたら甘えてくるのかと、その心中を察する千陽。そして今、彼は昔、陽葵お姉ちゃんが芳美に言っていたあの言葉を、そういう事かと理解し、同じ事を妹に告げる。



「ばってん大丈夫、にーには、んね、にーにだけじゃにゃあ、ひまねえもよしねえも璃華ねえも、みさねえもはるにーにもね、あんたのここには皆、ずっとおるけん」



 あの時の陽葵と同じように、恵梨の胸に手を当てて、だけん何も心配せんで大丈夫よと言う千陽。恵梨からすれば、まだよくその意味は分からないが、なんとなくお兄ちゃんが自分の事を心配してくれているのは分かり、心がじんわり暖かくなる気がした。













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