陽葵の圧
2035年5月6日
千陽の13歳の誕生日。そして俗にゴールデンウィークと呼ばれる春の大型連休、世間的にはその最終日になるはずの日曜日だが、千陽や咲里ら桜木中の生徒達の姿は学校にあった。そう、体育祭だ。前作の陽葵達の時にも書いたと思うが、改めて書くと、この世界における運動会や体育祭といったそれは、筆者達のよく知る合戦形式などではなく、ただただ色んなスポーツに触れ合おうという文字通りのお祭りである。で、スポーツ大好きな千陽は恵や博美をあれやろうよこれやろうよとあちこち連れ回す。
「ずっとこぎゃん動いて・・・千陽、なんで息ひとつ切れとらんとやあんたは」
朝から色々と付き合わされ息を切らしながら、本当お前すげーなと改めて千陽の爽やかな顔を見る恵。
「まあ遺伝かな。てか博美も意外と運動神経ええとね」
「千陽には負けるけどね、これでも向こうの小学校の男子じゃ、うちトップクラスだったんだけん」
博美も入学当初から方言バリバリの千陽達と一緒にいるうちに、こっちの言葉を少しづつ覚えて使えるようになって来ていた。
「そっか、ほんで今日ひまねえも来てくれとっけん博美にも紹介すんね」
「そうね、博美は陽葵姉ちゃんは会った事なかったね」
そう言って、有名人の姉の前にできている人だかりをかき分け、博美を連れていく千陽と恵。
「ひまねえ!」
「おお、千陽。メグちゃんも久しぶりたい、あ、その子が噂の東京から来たっちゅう子?」
「久しぶり、陽葵姉ちゃん」
「は、はい。白金山博美です。お姉さんの事はテレビとかでよく・・・」
「なんなん、今はただの友達の姉ちゃんなんだけんそぎゃん緊張せんちゃよかたい。ちゅうか白金山とかほんなこて都会感あるね」
「千陽にも初対面の時、同じ事言われました」
「あはは、まあ私の弟だけんね。ほんで博美ちゃんも私ん事はお姉ちゃんでタメ口でよかけん」
「いやそんないきなりは・・・」
「真面目な子ね・・・まあこれから会う機会もあるどしゆっくりね。うちの大事な弟ばよろしくね。メグちゃんも」
「「はい」」
博美がサインをもらって、陽葵から離れてまた遊び出す3人。と、入れ替わるように他の女子達と一緒に咲里が陽葵に挨拶に来る。
「陽葵姉ちゃん、なんか久しぶりですね」
「確かに、正月も春休みも会えんだったけんね。千陽とはちゃんと上手くやっとるごたんね」
「当たり前ですよ、もう婚約もしたんですから」
咲里は芳美や璃華や弥咲には、普通に妹のように甘えられるようになっていたものの、やはり長姉の陽葵には未だ緊張してしまい、お姉ちゃんとは呼べるようになったものの、未だ彼女と冬未に対しては敬語なのである。
「まあお母さんも私も芳美もおって、あんたもそら迂闊な事は出来んよな。ならこれからもうちの大事な弟ばよろしく頼むぞ」
「勿論ですよ」
そして陽葵と別れ、千陽と合流する咲里。
「咲里、大丈夫?」
「な、何が?」
「いや、ひまねえになんか言われたんじゃにゃあとかなって」
「んね・・・私が勝手に、あん人に圧んごたと感じとるだけばい」
「まあひまねえは僕ん事、大事に大事にしてくれとっけんね・・・ばってんなんも気にせんちゃええよ、言うたろ?僕は何があったっちゃこの先ずっとあんたば好きでおれるて。あんたも僕にそぎゃん言うてくれたたい」
「うん、そ、そうよな。私達は私達、姉ちゃん達は関係にゃあ、か」
「そうたい!お姉ちゃん達に邪魔されたら、2人で駆け落ちどんすりゃええし」
「そぎゃん簡単に・・・ばってんそっか、もしそぎゃんなってうだうだ悩むくらいならそん方がええかもな」
「うん、ほんで今は今で楽しめばええ。ほら、あっちの木まで勝負ね」
そう言って、いきなり走り出す千陽を追いかけ、彼の言うとおり、この瞬間を楽しむ咲里であった。
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