方言講座



「ちきちき!第一回!千陽と!」「恵の!」



「「熊本弁講座〜」」



「わ〜!」( ˶˙ᵕ˙˶ ノノ゛



 前回、中学生になった千陽に新たな友達が出来て、その子が東京からこっちに来ていて、方言を色々教えて欲しいと言うので、しぶしぶという素振りを見せつつも、なぜかノリノリで授業風に方言講座を開き出した彼ともう1人の友達の恵。



「・・・っちゅうてもたい千陽、どっから教えよっか」



「そこよね・・・博美、僕達と話しよってなんか気になった言葉ある?」



「えーとね、あの、なんだっけ?ばってん?ってやつ、千陽よく言うなって」



「あー、まあ基礎的なとこね。メグ、お願い」



「あれ、千陽がメインでやる感じじゃ・・・まあええか。まず、その「ばってん」ばってんね・・・あー、今言うたご・・・東京弁にせんと分からんか。今、うちが使ったように、これは「だけど」「しかし」「でも」といった接続詞に使います、応用としては「今日体育ばってん体操着忘れた!」と言った感じです」



「ふむふむ、なるほど・・・って千陽は何笑ってんの?」



「いやあメグが一所懸命東京弁つこて説明しよって、わろたらでけんち思たら余計・・・」



「千陽あんたね・・・」



 ジト目で親友の顔を見る恵。と、方言そのものよりも千陽と恵が言う「東京弁」という言葉に引っかかる博美ではあるが、2人がそれを言った時の自身の反応にちょっと怖い目をしたのを見るに、突っ込むとやばそうなので何も言わない事にした。そして、その後もよく使う言葉を中心に講座を行った後、千陽のパパの隼瀬が用意してくれたお菓子をつまみながらボーイズトークに花を咲かせる3人。



「千陽は咲里さんといつから付き合ってんの?」



「3年前からよ、2年前に婚約した」



「へー結構長いんだ・・・てか2年前、小学生で婚約?!」



「僕達あくまで真剣だけん」



「あー、まあ早いなら早い方がいいのかな・・・それで、メグは彼女とかもしくは彼氏?好きな子とかおると?」



「いやあ、うちはあんまそぎゃんと興味にゃあけんね」



「そうなんだ」



「てかそういう博美は?東京で彼女の1人や2人おったんじゃにゃあと?」



「ま、まあ1人や2人どころか?とっかえひっかえっていうか?」



 急に目が泳いでしどろもどろになる博美に、あー・・・と全てを察する千陽達。なお、博美が普通に彼らの言葉を理解しだしたのは、2人の丁寧すぎる方言講座によるもの。



「だ、だいたいうちらの年頃だと彼女とかいなくても普通じゃん・・・千陽がマセすぎなだけでしょ」



「それはそうね、こいつ初体験も小学校で済ませとるし」



「まじか・・・あ、相手は?」



「咲里に決まっとるたい」



「そ、そうよね・・・な、なんかそれ聞くと千陽がすごい大人に見えてきた」



「なん、やめてよ」



「そんでそういうのってさ・・・」「千陽、うちも改めて聞きちゃあな」



 で、この場には男子だけとあって、生々しい話をし始める千陽に、恵と博美がきゃーとかぎゃーとか言うのが聞こえてきて、高校の時の修学旅行の夜の男子部屋を思い出す隼瀬であった。










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