成長編

新しい友達は都会人でした



 2035年 春



 熊本市東区桜木に住む少年、葛西千陽はこの春、小学校を卒業、受験などはせず彼女であり婚約者の森咲里を含め、地元の子達と一緒に、姉達も通った熊本市立桜木中学校へ進学した。



「千陽、中学でもまた同じクラスでよかったね」



 入学式後、学校支給の連絡網用スマホに来たクラス分けの通知を見てそう声をかけてくるのは、中学でも全校生徒800人中たった160名、千陽達今年の1年生では5クラス合計で52名と数少ない男子の1人、小学校の時から千陽や咲里とは仲がいい親友の神本恵かみもとめぐむちゃんだ。



「そうね、メグは制服スラックスにしたっだ」



「うん、選択自由て事だったけん、うちもちょっと女子っぽいの着てみたかったし」



 ちなみに、昨今は公立校でも女子も男子も制服は強制ではなく、様々な選択肢が用意されているわけだが、私服はやはり毎日気を使うのが大変というわけで、子供達の大半は制服を選び、その中でどんなものを着るかというのが特に男子にとっては楽しみだったりするわけである。で、その男子の会話に咲里が割って入る。



「なんか女装男子って感じでええね、メグちゃん」※この世界の女装男子は現実世界の男装女子的なイメージ



「咲里、あんたメグばエロい目で見よっとじゃにゃあどね?」



「な、なん、別にそぎゃん、なんかほんと、メグちゃんのかっこええ女っぽいなって」



「ならええばってん。僕以外ばそぎゃん目で見たら、お姉ちゃん達にすぐ言うけんね」



「はい・・・気をつけます」



 あらあら、千陽はお姉ちゃん3人に妹までおるけん森くん大変よねと笑いながら、後はお2人でと言わんばかりに離れていく恵。と、入れ替わるように、他の小学校から来たちょっと派手なギャルっぽい少年が千陽達に話しかけてくる。



「ねぇねぇ、2人って付き合ってんの?」



「「うん」」



「やっぱり。あ、うちね、小学校まで東京だったけどこの春にこの田舎来てね、名前は白金山博美しろがねやまひろみって言うんだ、よろしく」



「「白金山とかなんか都会っぽい!!」」



「そうかな・・・それで2人の名前は・・・」



「あ、ごめん、僕は葛西千陽よ」



「私は森咲里、白金山さん、千陽と仲良くしてやってよ・・・って上から目線かな」



「いえいえ、うちも仲良くしたいと思ってるし。てか苗字じゃなくて名前で呼んでよ、2人ともね」



「うん、なら私も名前でええよ」



「僕も、千陽って呼んでよ」



「うん、ありがとう千陽、えみくん」



「えみくん・・・?」



「あ、咲里さん・・・・・・」



 異性の咲里相手にも急に距離を縮めてきて一瞬、千陽が顔をしかめたのをみて言い直す、見た目とは裏腹に真面目な部分も見せる博美。



「まあなんにしたっちゃ、博美、慣れん土地で色々困る事もあると思うけんなんかあったら僕ば頼ってよ」



 博美の容姿を見てそれなりに警戒しているのか、咲里から離してそう告げる千陽である。



「うん!ありがとう千陽!てか方言可愛いね!」



「そぎゃんかな、ありがと・・・ちゅうか博美のその派手なメイク、似合うね」



「えへ、昔のギャル雑誌見て可愛い!て衝撃受けて、うちもあのお兄さん達みたいになりたいなって、千陽にも教えてあげよっか?」



「え、いいと?」



「うん、うちらもう友達じゃん!」



 そして更に恵も加わって、この日の学校終わり、千陽の家に集まってメイクの勉強会を開く事にした3人。なお、千陽が初めて連れて来た友達の博美のメイクや格好を見た隼瀬と冬未は、その世代的に「パンダメイクとか懐かし!」とタイムスリップしたような気分になったという。



「メグは似合うね」



「うん、可愛い!千陽は元が良すぎるからあまり派手なのは逆に似合わねーか・・・なんかごめんね」



「んねんね、色々勉強なったよ」



「んね?」



「あ、熊本弁でね、いやいやとかいえいえとかいう意味」



「へー!うちなんか生まれてからずっと東京だから方言憧れるわぁ」



「「そぎゃんもんかねえ」」



 いいなあいいなあ方言いいなあとずっと言っている博美に、自分達からすればこれが普通だし何がいいんだろうと顔を見合わせる地元民の千陽と恵。そして、なんか色々方言教えてよと都会人的無茶ぶりをしてくる博美の、そのキラキラした期待する瞳には抗えず、即興で方言講座を開く千陽達・・・・・・




 つづく






















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