男の子の日(節句)
2033年 3月3日
筆者の誕生日の翌日・・・というのは置いておいて、この日、桃の節句はこの世界においては男の子の節句である。千陽も今日はお雛様の格好をして、いつも以上に姫扱いで上機嫌だ。
「璃華ねえ、ちゃんと可愛く撮れた?」
「うん、千陽雛様などっから撮っても映えるばい」
「えへへ、あ、そうや恵梨、こっち、にーにの隣さん来て」
そう言って恵梨をお内裏様に見立てて、お姉ちゃんに写真を撮ってもらう千陽。
「だっごかわええ・・・まってかわいすぎる・・・かわええ・・・やびゃあ・・・」
弟と妹のあまりの可愛さに可愛すぎて語彙力をなくす姉バカな璃華。可愛いが被っているが、それだけこの兄妹は可愛いという事である。で、今日は家族にとっては千陽の日というわけで、冬未が何かしたい事はあるかと聞いたところ、千陽は隣の三森家も含めた「家族」みんなで焼肉を食べたいと言うので、今いるその家族8人で近所の焼肉屋さんへ来た。無論、千陽は洋服にお着替え済、2つのテーブルに冬未隼瀬璃華弥咲、咲良充希千陽恵梨と別れて座る。
「ちーちゃんも恵梨ちゃんもいっぱい食べるね」
「やっぱ隼瀬ちゃんと冬未の子よな」
さすが大飯くらいな隼瀬と冬未の遺伝子だなと、まだ小さい千陽と恵梨ががつがつ食べるのを微笑ましく見守る充希と咲良。ちなみに葛西家三森家は両親同士が中学や高校時代からの25年以上の付き合いで、咲良と充希は葛西家の5人の子へ我が子と変わらぬ愛情を注いでいるわけだ。逆もまた然り、冬未と隼瀬も陽斗と弥咲の事を我が子と同じように扱っている。
「そうねえ、ちーちゃんも恵梨ちゃんもお肉追加するなら気にせんで好きなの言うて」
「なん充希兄ちゃん、自分で注文するけんええて」
「よかよか、食べよるうちに注文したがよかたい」
「それもいちりあんね・・・恵梨、なんか食べちゃあとある?」
千陽もまだ子供なのに自分の食べたいものではなく、まっさきに妹に食べたいのを聞く姿を見て本当にこの子はちっちゃい隼瀬だなと改めて思う三森家の両親。そしてなんかもうだいぶおひな様とか関係なくなってきちゃったけど、このまま話を続ける事とする。
「んーと、とんトロとシマチョウとミノと・・・いしやきビビンパもたべたい」
「そっか、ならにーにも石焼ビビンパ食べよかな・・・あと、上ロースとカルビとサガリも」
「うん、豚トロシマチョウミノロースカルビサガリと・・・石焼ビビンパね。全部2人前ずつにしたばってん大丈夫?」
「「うん、まだまだお腹すいとるし」」
「「まじか・・・」」
既にこれまでにサラダバーもご飯も3回おかわりして最初に注文した大きい盛り合わせの肉達も殆ど2人で食べた小さな兄妹の、それでもまだ有り余る様子の食欲は改めてやべえなと気付かされる咲良と充希。
「隼瀬ちゃんも、こん子達こぎゃん食べるなら毎日ご飯大変だろ」
「まあもう慣れたね。冬未も週末とか変わってくれたりするし、咲良ちゃんもそぎゃんしよる?」
「いえ・・・」
思えば新婚当初から余り台所に立った事もなく、冬未がこの25年以上ちゃんとしていると聞いていたたまれなくなる咲良。
「ふふ、まあ別に無理に冬未と同じごつせんちゃよかたい。ねえ充希」
「うん、咲良には咲良のよさがあっとだけん。男親の僕じゃ分からん弥咲とか璃華ちゃんの話聞いてやったりとかね」
「充希・・・愛しとる」
「僕も愛しとるよ、咲良」
「なら僕も、冬未、愛しとるよ」
「私も愛しとる・・・隼瀬」
愛を囁きイチャイチャしだす親達をまたかと呆れ気味に見つめ、無言で肉を口に運ぶ子供達であった。
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