年末年始編 中編



 2032年もいよいよ今日で終わり。夜は毎年大晦日恒例、葛西家三森家両家全員が食卓に集まって数個のホットプレートを囲んで焼肉を食べていると、弟夫婦と姪っ子達が大好きな隼瀬の姉夫婦も訪れて、姉婿の葵はあんま邪魔すっとあれだけんすぐ帰るねと言うが、隼瀬と充希が引き止める。



「よかたい。兄ちゃんと姉ちゃんもいっしょ食べてってはいよ」



「そうたい、どうせこん子達たいぎゃ食べるけんと思て、いっぱい用意したっだけん。まああれならお姉ちゃんだけ帰ってもろて葵兄ちゃんだけ残ってもらおかな」



「いやいや、みっちゃんなんでや!」



「はは、冗談たい。ばってんほんと、もうこの人数なら2人増えたとこで一緒だけん」



「充希の言う通りたい。それに子供達も姉ちゃん達おっとしゃが喜ばすし」



 というわけで、斎藤家の夫婦2人も増えて更にガヤガヤと楽しい夕飯となって、咲良と充希夫婦が弥咲を残して隣に帰っていき、今日は年越しという事で千陽、恵梨、佳奈の子供組も夜更かしを許されて、その3人と芳美、璃華、弥咲の大きい子組も全員ねーねとにーに夫婦の元に集まる。



「芳美も璃華も弥咲も、体だけ大きなってからまだ子供なんだけん」



「こまか時からいっちょん変わらんね」



 まだ小学生の弟や、幼稚園児の娘と末の妹と一緒になって甘えてベタベタしてくる大きい妹3人に呆れ笑いしつつも、陽葵も陽斗もなんだかんだそんな大きくなった妹達にもまだまだ甘えられるのが嬉しく、よしよしとしてあげるお姉ちゃんお兄ちゃん。そのうち芳美と千陽はそれぞれ恵梨と佳奈を連れて部屋に戻り、残った璃華と弥咲は既に来年中に予定されている自分達の結婚式に、陽葵姉ちゃんはシーズン中だし来れるの?と聞く。



「心配せんだっちゃ、大事な妹達の結婚式は絶対出らにゃんたい」



「「そっか、よかった」」



「ほんで姓はどっちにするか決めた?」



 璃華と弥咲が付き合った当初からなんだかんだ両家で譲り合いになって決まっていない様子のその問題を、本人達はどう思っているか改めて聞く陽斗。ちなみに別姓も選択肢にはあるはずだが璃華も弥咲も、せっかく結婚するなら同じにしたいと考えていて、陽斗も陽葵も妹達の考える事はよく分かっているのでそれは言わない。で、2人の答えは既に決まっていた。



「三森家は女が弥咲1人だけで、いわゆる跡継ぎ?んごた感じだろし、私が三森璃華んなるばい」



「うちのお母さんもそぎゃん跡継ぎとかは気にしよらんかったばってん、璃華がそうしよて強く言うてくれたけん私もそっでよかかなて」



「そっか・・・まあ家の存続とかほんと気にせんでよかち思うばってん、2人がそぎゃんしたいならそん方がよかね」



「結婚すっとはこん子達だしな。ほんで璃華、そぎゃん言うて事は子供も・・・流石に2人では作れんけん養子?」



「んね、弥咲は精子提供してもろて自分で産みたいて」



「そん気持ちは姉ちゃんも出産経験して分かるばってん、精子バンクのドナー自体少ないて運良く見つかっても確実にできるかどうか・・・」



 この世界はそもそも男女比率が2:8くらいという事もあり、バンクに提供する男も少ないので心配する陽葵だが、弥咲はそのドナーの心配はしとらんと断言して、彼女もその義妹の言葉の意味を瞬時に理解する。



「弥咲、あんた千陽に・・・」



「うん、璃華も賛同してくれたし。ちーちゃん・・・千陽本人とえみちゃんにも実はもう話して、納得してくれとっけん」



 しかし陽葵も陽斗も、千陽本人と彼の彼女も理解して納得しているとはいえ、2人が親達にちゃんとその考えを伝えているのかと、一番気になる事を聞く。



「勿論言うたよ。お父さんと充希兄ちゃんはすぐに私達の気持ち理解してくれて、お母さんと咲良姉ちゃんな最初はとまどいよったごたばってん、最終的に4人ともちーちゃんがよかて言いよっとならよかろて言わしてね」



「そっか、ならよかった。親に黙ってそぎゃんこつ決めるならおおごつだけんね」



「うん、ほんで璃華と冬未姉ちゃんとえみちゃんには言うとるばってんがらね、ひま姉ちゃん、そのちーちゃんに提供してもらう方法について・・・・・・」



「・・・そういう事か。まあ千陽も、璃華もそっでよかなら姉ちゃんも別になんも言わんばい。陽斗もだろ?」



「うん、千陽も親達も納得しとんなら、僕達がどうこう言うもんでもにゃあしね」



 璃華と弥咲が姉兄に自分達の将来の展望を話す一方、父親に似ておしゃべり好きな、この世界の典型的男子な主人公の千陽は佳奈に咲里との惚気話を一方的に聞かせていた。



「にーにが体育の授業ん時つこけてね、ちっと膝擦りむいただけん大丈夫て言うたばってん、咲里なわざわざおんぶして保健室さん連れてってくれてね。ほんで夏休みにデートした時もずっと荷物持ってくれてね・・・そんでね、あんでね、ほんでね・・・・・・」



「にーにはそーにゃ(相当に)、えみねえのこと大好きとね」



「うん、佳奈のパパがママん事大好きって言うのと同じよ」



「じゃあ大きなったらえみねえとけっこんすっと?」



「まあまだそん時どうなっとるか分からんばってん、にーにはそぎゃんしたいて思いよるよ。そん時は佳奈もにーに達の結婚式、絶対来てはいよ」



「そらもちろん!」



 そしてそんな話をしているうちに時計の針は真上を指し、2033年の年明けを迎える。佳奈も普段はとっくに寝ている時間とあって猛烈な睡魔に襲われながらも、にーにと年越ししたいから、にーにに最初にあけましておめでとうを言いたいからと頑張ってここまで起きていた。



「あけましておめでとうございます、にーに」



「おめでとうございます、佳奈。もうねんねする?」



「にーにといっしょがいい・・・」



「うん、にーに抱っこしてやるけん」



 佳奈を抱っこしてトントンとしながら、自分も実は相当眠気が来ていたのでそのまま、佳奈を胸に抱いたまますぐに眠る千陽であった。


































































































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