クリスマス 後編




 クリスマス、咲里の家に妹の恵梨と一緒にお泊まりに来ている千陽。ささやかなパーティが終わった後、彼らは3人一緒にお風呂に入る。



「えみねえ、なんかやらしか目でにーに見よっど?」



「そらしょんにゃあたん、好きな子の裸見てなんも思わん方がおかしゃあども」



「まあたしかに。俺もにーにの体えろいと思うし」



「そぎゃんよな」



「なん言いよっとねふたっとも。恵梨もまだこまかてから璃華ねえになんでん吹き込まれるもんだけんよう分からんとにそぎゃんこつ言うて・・・」



 でも彼女ともう1人は妹とはいえ、2人の女の子にそういう目で見られるのは多少自信になるなとも思うおマセさんな千陽少年である。で、お風呂から上がってしばらくして恵梨は大好きなにーにの膝枕で寝て、これでやっとイチャイチャできるねと咲里に甘える千陽。



「ねえ、今日はクリスマスだし最後までする?」



「ばってん恵梨ちゃん起きたら・・・」



「大丈夫、こん子いつも1回寝つくと朝まで起きんけん。それに今まで僕もまだ早いかなと思いよったばってん、なんか我慢の限界ちゅうか・・・」



 そして彼は恵梨をベッドに降ろして、その妹が寝ている横に服を脱いで仰向けになって、僕のはじめて、咲里にクリスマスプレゼントであげるよと告げる。彼氏にそこまで言われて、もう知識もある咲里も我慢できるはずはなく、小さなカップルはこのクリスマスの夜にはじめて結ばれたのであった。



 翌朝



「望兄ちゃんおはよー・・・」



 やはり彼女の家ということで早めに目が覚めた千陽は朝食準備中の望に挨拶して、何かお手伝いしよっかと気を使う。



「ちーちゃんはほんとええ子ね・・・ばってんほんと気遣わんでよかよ」



「ばってんこぎゃんしょうぶんだけん・・・」



 そう言ってえへへと笑う千陽に、同じようにいつも、パパ友の間でも皆に気配りして回っている彼の父親の顔を重ねる望。



「ちーちゃんはほんとパパそっくりね」



「えへ、よく言われる」



「ほんとかわいか〜・・・ほんで咲里も恵梨ちゃんも起きてちーちゃんおらんだったら寂しがるけんまだお部屋おんなっせ、ご飯できたら呼ぶけん」



「ばってん・・・」



「よかよか、ほらはよ戻りね」



 望にそう多少強引に、子供が何も気を遣うなと言われ咲里の部屋に戻った千陽。既に咲里も恵梨も起きていて2人が顔を洗ったりして戻ってきた後、昨夜の事を考えても自分や鈴と食卓を囲むのは千陽達兄妹も気を遣うだろうなと気を回した望がわざわざ部屋まで朝ご飯を持ってきてくれて3人で食べた後、一旦千陽達の家に荷物などを起きに行って、恵梨と別れ2人きりデートに出かけた千陽と咲里。千陽はせっかくだからと姉婿の陽斗が小さい頃着ていたサンタの衣装を着て出かけていて、しかもこの寒いのに生足を出して横を歩く可愛すぎるサンタさんに咲里はドキドキしっぱなしである。



「すれ違う人みんな千陽見よるな」



「そぎゃんこつにゃあて、咲里は意識しすぎばん。あ、パンダ焼食べよ」



 とりあえず健軍の商店街の入口にあるパンダ焼を買おうと千陽が財布を出し私が出すばいと咲里も財布を出したところ、パンダ焼屋のおっちゃんがよかよかと制止して、そっと商品を渡してくれる。



「ばってんおっちゃん、ちゃんと払わんと・・・」



 さすがにタダでもらうのは気が引けるからと財布を開ける咲里をなおも止めるおっちゃん。



「うちは小学生からはお金取らん事にしとっけん。それに隼瀬ちゃんと望ちゃん・・・2人んパパ達にもしょっちゅう買いに来てもろとっけんお返したい」



 咲里も千陽もそれでも・・・と食い下がるが、おっちゃんはあくまで子供の2人からお金は取ろうとせず、2人もありがとうございますと深く頭を下げて店前のベンチでもらったパンダ焼を食べる。



「やっぱこれよね」



「うん、地元の味って感じ」



 ちなみにこのパンダ焼き屋は千陽の両親が子供の頃からずっとこの地で代々営業を続けており、地元の人達の馴染みのお菓子として定着している。小学生以下の子供からお金を取らないというのも代々の伝統で、千陽の両親、咲里の両親のみならず地元が近い人達はみんなここのパンダ焼きを食べて育つと言っても、それは過言だ。過言なんかい。で、この世界でも少子化の時代が長く続いた(1980年代前半より男性の本格的社会進出率の上昇とともに出生率がマイナス傾向にあり、恵梨が産まれた年にそれが底をついてプラスに傾きはじめた)とあって、このパンダ焼き屋以外でも千陽達は人気でこっちこっちと、最近は昔の、冬未や隼瀬が小学生だった頃くらいのそれに匹敵するほど店も増えつつある商店街のあちこちから呼び込みをかけられたりして引っ張りだこで、結局ここにいる間咲里も千陽も殆どお金を使わずに、商店街のおばちゃんおっちゃん達が半ば強引に色々くれたものを持って帰るのであった。







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