クリスマス 前編


 2032年 12月



「ほらきこえてくるでしょ、鈴の音がすぐそこに〜♪」



 クリスマス、璃華と弥咲は2人で出かけ、両親達もダブルデートとの事で、それならと恵梨と一緒に咲里の家に招待されて、ルンルンで可愛い歌声を響かせながら飾り付けをする千陽。ちなみにこの家では咲里が女の子でそういうのは興味を示さなかったという事もあって毎年こうやって可愛く飾り付けとかはしてこなかったので、僕に任せてくださいと言ってどんどん家の中を可愛く飾り付けていき、新鮮な景色に咲里の父、望も同じ男子として感慨深げだ。



「ちーちゃんはパパに似てセンスあるよね」



「いえいえ望兄ちゃん、パパに比べたらそぎゃんいっちょん(全然)・・・」



 千陽は自分の親より年下の咲里の両親を最初からさん付けで呼んでいて、おっちゃんおばちゃんでいいよと言われ続けていたが流石にそうは呼びづらく、兄ちゃん姉ちゃん呼びとした。ちなみに咲里と付き合って既に半年経った今では実際にそれほど気を使わず敬語も使わなくなった。で、千陽と望がこうやって飾り付けしたり色々料理したりしている間、咲里は部屋ですっかり自分にも懐いてくれている恵梨と2人で遊んでいた。



「えみねえ、わざと負けたろ」



「んねんね、お姉ちゃん本当にこのゲーム弱かっだん」



「ほんなこつやぁ?」



「ほんなこほんなこ。ねえ恵梨ちゃん、今日はお姉ちゃんもにーにと恵梨ちゃんと一緒に寝てええ?」



「しょんにゃあね。ばってんにーにん横は俺だけんな」



「ふふ、ほんなこてにーに大好きね恵梨ちゃん」



「当たり前たい。にーにはおとこんこなんだけん俺も守ってやらんといかんていつもママに言わるっし」



 ちなみにこれ、冬未が千陽に過保護なのではなく、この世界の親は男の子が産まれた際、上に姉がいる場合は弟を大事に守れと教育し、また下に妹ができた際も、その子が物心つく頃には同じようにお兄ちゃんを大事に守れと教育されるので、咲里も千陽が姉妹に姫扱いされてベッタリでもそれは普通の事と認識しており嫉妬したりはしない。むしろ彼女としても、将来の事も考えはじめ、彼の姉妹(弥咲含む)とももっと仲良くなりたいと思っているのだ。



「そら恵梨ちゃんも女だけんね。ちゅうかそぎゃん大事なお兄ちゃんとお姉ちゃん付き合うのよう許してくれたね」



「まあえみねえは「ごーかく」だし」



「そっか、合格か・・・嬉しいな」



「ばってんにーにばちゃんと大事にせんかったらゆるさんけん、ねーねたち3人ぜんいん許したっちゃ俺がゆるさんけんな」



「はい、しっかり千陽ん事大事にさせていただきます・・・」



 と、そんなやり取りをしていたところへ千陽が部屋に戻ってくる。



「こら恵梨、咲里姉ちゃんば困らすなよ」



「よかばい千陽、恵梨ちゃんもまだこまかばってん、かよわい男ん子のお兄ちゃんば女として立派に、大事に守りよっとだけん」



「まあ恵梨もにーにの頼もしいナイト様だけんね、いつもありがとう」



 そんな小さなナイト様にご褒美といって、いつも咲里とするのよりは少し軽めのキスをしてあげる千陽姫様。ちなみに普通に姉弟や兄妹で口と口で愛情表現のキスをするのもこの世界、この時代では普通だったりするので、目の前で見ている咲里も兄妹愛てえてえなあくらいの感じだ。



「恵梨ちゃん次はお姉ちゃんともちゅーする?」



「えー、まあえみねえもいちおう姉ちゃんだしな、いつも璃華ねえともしよるけんええよ」



 自分の事も一応とはいえお姉ちゃんとして認めてくれてそう言ってキス待ちする恵梨が無性に可愛く見えて、思いきりぶちゅーとする咲里。



「えみねえ、いがいとはげしかね」



「いやあ、なんか恵梨ちゃんの可愛いすぎて」



「分かる。恵梨なもぞかもんほんなこて」



「ふたっとも、俺女なんだけんもぞかとか言うな!」



「「はは、ごめんごめん」」



 しかし、その反応も可愛いよなと思うお兄ちゃんとお姉ちゃんである。そうこうしているうちに、望がそろそろ始めるよと呼びに来て、ささやかなクリスマスパーティが始まる。



「はいちーちゃん、恵梨ちゃん、これおばちゃん達からクリスマスプレゼント。こっちは璃華お姉ちゃんの分ね」



 サプライズで自分達のみならず、ここにいない璃華の分までクリスマスプレゼントを貰って、本当にありがとうございますと頭を下げる兄妹に、咲里にも隼瀬と冬未から送られてきとるし気にせんでよかよと告げる咲里の両親。して、望と千陽が一緒に作ったクリスマス料理に舌鼓を打ったパーティも終わり、子供達は皆でお風呂に入る。






































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