芳美お姉ちゃんと璃華




 2032年 9月14日



 なぜはっきりとした日付を書いているかというと、この日は千陽の3人いるお姉ちゃんのうち上から2番目、芳美の20歳の誕生日だからである。ちなみに改めて葛西家の子達の誕生日設定を書いておくと長女陽葵が2009年1月19日生、次女芳美は今日20歳というわけで2012年9月14日生、三女璃華が2016年3月7日生、長男千陽が2022年5月6日生、末っ子の四女恵梨が2027年11月18日生である。ちなみにこの世界はそもそも女の子の方が産まれやすかったりする。で、今日はもちろん芳美本人も実家に帰ってきて、東京に遠征中の陽葵以外の家族全員でお祝いする。



「もう2年前に成人はしとるばってん、これでやっとあんたとも一緒に飲めるね芳美」



 嬉しそうにそう言って、芳美にビールを注ぐ冬未。ちなみに芳美は案外真面目な子で、これまで正月のお屠蘇以外興味本位でも全く飲んだ事は無く、恐る恐るはじめてのビールを飲む。



「・・・にっが」



 なにこれ、何が美味しいの?という顔をする芳美に最初はそうよねと笑う冬未、隼瀬。で、隼瀬の手作りケーキ、家族間の通称パパケーキを食べながら妹達の祝いの言葉をもらう芳美。下から恵梨、千陽と来て最後は一番歳の近い妹の璃華だ。



「よし姉、20歳の誕生日おめでとう。よし姉はいつも自分でお姉ちゃんらしい事はしとらんて私達に言うばってん、それは違う。恵梨もちーちゃんも、そして私も一番近い妹として、よし姉がずっと凄いお姉ちゃんしてくれとるって分かっとるけん・・・だけんこれからも私達のかっこいいお姉ちゃんでいてください」



「璃華・・・」



 自分からしてもずっと憧れのお姉ちゃんだった陽葵と自らを比較して、あんなにかっこいいお姉ちゃんと対象的に、高校の時に負ったとある怪我でサッカーを諦めざるを得なかった自分はかっこ悪い、妹達だって口では自分の事もお姉ちゃんお姉ちゃんと言って甘えたりするけど、本当は甲子園で完全試合とかやったかっこいい陽葵の方がみんな好きに決まってると勝手に思い込んでいた芳美は今、小さい頃は陽葵にべったりだった璃華が自分の事をかっこいいお姉ちゃんと言ってくれた事が何よりも嬉しくて双眸を崩す。



「ふふ、別にサッカーとかやっとらんだっちゃよし姉はかっこよかよ、ね、ちーちゃん、恵梨」



「「うん!」」



 で、泣いているのは芳美だけでなく、この子供達の涙脆さを遺伝させた張本人達もだ。



「隼瀬、よか子に育てたなあ・・・」「冬未のおかげよ・・・」



 そんな両親を見て、なんか泣きながらしれっとイチャイチャしてんなこいつら、長年相変わらずだなと思う芳美と璃華。で、だんだん時間も深くなってきて、姉妹は千陽と恵梨が寝た後で珍しく2人きりで話す。



「改めてありがとう璃華、お姉ちゃん高校でサッカー辞めにゃんくなってからずっと自分に自信なかったばってん、あんたの言葉でまた取り戻せた」



「まあ私達ん中じゃよし姉が一番ひま姉の事・・・にーにも含めて上の2人ん事大好きだけん、ひま姉と自分ば比べよっとだろなて分かるし」



「あんたもまだ子供くらい思いよったばってんしっかり見てくれとったつね・・・・・・」



「そら大好きな姉ちゃんの事はなんでん分かるたい」



「璃華・・・」



 普通ならそろそろ姉ちゃんうぜえなんて言ってきそうな年頃の妹に、素直にお姉ちゃん大好きと言われて、可愛すぎて愛しすぎてたまらず抱きしめる芳美であった。


















































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